PHOTO YODOBASHI

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Nikon Z 7, TTArtisan 11mm f/2.8 Fisheye, Photo by KIMURAX

TTArtisan 11mm f/2.8 Fisheye

[ズーム] 広角 | 標準 | 望遠 | 高倍率
[単焦点] 広角 | 標準 | 望遠 | マクロ

今回レビューをお届けするのは、中国のレンズメーカー銘匠光学(めいしょうこうがく)からリリースされている対角魚眼レンズ「TTArtisan 11mm f/2.8 Fisheye」。本稿の執筆時におけるヨドバシ.comでのプライスは39,000円と、かなりお求めやすくなっています。気になる光学系の情報を覗くとED特殊低分散ガラスや高屈折低分散ガラスを組み込んだ7群11枚構成。開放F2.8ながら最大径67mm、全長89mmにまとめられており、魚眼レンズとしてはなかなかのスリム&コンパクトな姿。しかも、鏡胴はもちろん突き出した前玉を守るキャップも金属仕上げという凝り様で、ビルドクオリティも上々ではありませんか。趣味性が有りながら、買い求めやすい。これなら気軽にブンブン振り回せるぞ、と期待したくなります。強烈なデフォルメの効いた画が楽しめる魚眼レンズですからなおさらです。というわけで、活気あふれる東京下町のお祭りの様子を一日追いかけてきましたので、その写りをご覧ください。

( Photography & Text : KIMURAX )

Nikon Z 7, TTArtisan 11mm f/2.8 Fisheye, Photo by KIMURAX

本レンズは対角魚眼レンズなので対角線上のものが約180度の画角で写り込みます。神輿がちょうど十字路を通過しているところですが、その画角の広さがゆえにあたかもV字路に差し掛かっているように感じるのではないでしょうか。バスが停まっている通りは2車線道路ですから、かなりの広い範囲が凝縮されているわけです。視野が広いことから遠近感がより強調されるので、重さ約4トンと言われる千貫神輿を中心に、活気あふれる人々の躍動感や大勢の賑わいが伝わってきます。

Nikon Z 7, TTArtisan 11mm f/2.8 Fisheye, Photo by KIMURAX

神輿行列の最後尾には、宮司さんが馬に乗って町を巡ります。こちらは行列へ合流前の待機中。厳かな出で立ちと、それを取り囲む鉄筋コンクリートという異色の組み合わせが何だか不思議です。日頃写真を撮っていると、主役以外の情報はなるべく整理したくなる癖みたいなものが染みついていますが、魚眼レンズはそんなことは一切お構いなしです(笑)。眼前のものをぐにゅっと歪めて収めてしまう。こういったシチュエーションでは、そのいびつになった周辺情報がまるで時空の歪みを表現しているようにも感じられ、これぞ魚眼マジック。薄っすらと全体に雲がかかった眠たい空でしたが、色再現もいいですね。面積比に関わらず主役がスッと立っています。


Nikon Z 7, TTArtisan 11mm f/2.8 Fisheye, Photo by KIMURAX

人の波が去った道は、ほんのり余韻を残しつつも日常の静けさを取り戻します。しゃがみ込み、絞り開放でフォーカスリングを操ると、指先に伝わる少々重めのねっとりしたトルク感。AFまかせでパチパチやるのは楽ですが、MFでじっくり被写体に向き合うのもいいものです。ああ、写真撮ってるなと。肝心な描写についてですが、ピント面の解像感はしっかり。ボケ味を云々するジャンルのレンズではないでしょうが、雰囲気を壊してしまうような野暮ったさはありません。むしろ画全体としてはよくまとまっています。

Nikon Z 7, TTArtisan 11mm f/2.8 Fisheye, Photo by KIMURAX

境内は浴衣姿で参拝されている方もちらほら。むっとする湿気の多い時期なだけに、涼しげな雰囲気と彩りを添えてくれます。

Nikon Z 7, TTArtisan 11mm f/2.8 Fisheye, Photo by KIMURAX

千貫神輿と共に祀られている獅子頭(この時、神輿は出宮中)。両サイドの提灯の歪曲は大きいものの、黄金に輝く凛々しいその造形が、陰影を伴って立体感豊かに再現されています。鏡面仕上げの眼の艶もなかなかです。


Nikon Z 7, TTArtisan 11mm f/2.8 Fisheye, Photo by KIMURAX

神社の周辺路地には屋台がひしめいています。画角が広い、いや広大過ぎるためかレンズは水平から上方向についつい向けがちです。何せファインダーを覗きながら正面をフレームしてると、いつの間にか自分の靴が写り込んでしまっていることもしばしばですから。そこに気を付けつつ、ひょいと腕を伸ばしてアングルを下げてみるのも一興。被写界深度に収まった水面、金魚、お椀がクリアに描き出されています。

Nikon Z 7, TTArtisan 11mm f/2.8 Fisheye, Photo by KIMURAX

絞り開放から2段絞れば周辺画質はより安定する印象です。それにしてもこの立体感、そして色乗り、なんだかゾクッとしました。


Nikon Z 7, TTArtisan 11mm f/2.8 Fisheye, Photo by KIMURAX

周辺が大きく歪曲するレンズなのに、パッと見で真っすぐ並んでいるようにも見えます。実はコの字といいますか、正確には六角形を半分にした形状に沿って提灯がぶら下がっているのです(下の玉垣を見ればお分かりいただけるかと)。ですから、湾曲に近い状態の場所に並んでいるものをフレームすると、レンズの歪曲で打ち消したかのように写る。だからどうしたって話ですがね。盛大な歪曲を逆手に取って、撮影シーンを探してみるのはいかがでしょうか。

Nikon Z 7, TTArtisan 11mm f/2.8 Fisheye, Photo by KIMURAX

神輿は朝7時に神社を出発し一日かけて町内を巡り、夜の宮入りが近づくと神輿の周りに提灯が灯ります。ちょうど鳥居の正面に戻ってきたところをパチリ。手振れ補正が効かないのでISO 1000に上げての撮影です。絞りは開放ですが、フォーカスした神輿はキリッとシャープに捉えていますね。また周辺には大小様々な点光源が存在しますが、それぞれ形は整っており、嫌な色付きもありません。それなりの場所に行けば、星景撮影にも挑戦できそうな予感のする写りです。


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一度でいいから、手にして欲しい。

明るい時間から夜にかけて、対角魚眼レンズ一本でスナップ撮影をしてきましたが、個人的には望外の楽しさを覚えてしまいました。デフォルメたっぷりの特殊なレンズなだけに、撮影シーンが限られるのでは?と心配したり、身構える方もきっと多くおられるかもしれませんが。今日はこのレンズで行くと決め込んで、ぐぃ~んと広い視界にどっぷり浸かってしまえば何とかなるものだなと感じた次第。“何とかなる”という気持ちにさせてくれたのは、兎にも角にも本レンズの描写性能です。歪曲がテンコ盛りの魚眼ですから、周辺画質に関しては目くじらを立ててはいけないというある種の寛容さが求められるものですが、意外に悪くないではありませんか。むしろ、イイじゃん!と。それを言うなら、ピント面の解像力だってイイ。質感描写もイイ。近接しかも絞り開放からイイ。と挙げはじめると何だか褒め過ぎな感も否めませんが、冒頭でも書いたようにこの写りが3万円台で楽しめてしまうのですよ。魚眼レンズという名前を聞いただけで、なんとなく候補から除外してきたという方も「ちょっと遊んでみるか」という気持ちにさせてくれる写りとお値段だと思います。しかもコンパクトだから、日頃から持ち出すことも億劫にならない。機材は使ってナンボですから、使い倒してみてください。もし、一度も魚眼レンズを手にしたことがないという方は、まず「TTArtisan 11mm f/2.8 Fisheye」を。撮れる世界が間違いなく広がりますので、ぜひ。

( 2024.06.27 )

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お求めやすく、気軽に振り回せる魚眼レンズ。お値段以上の写りとビルドクオリティですから、まずは使ってみてください。今回の作例はニコンZマウント用。

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ソニーEマウント用。

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キヤノンRFマウント用。

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富士フイルムGマウント用。35mmフォーマットモードで対角魚眼の写りに、クロップなしでは円周魚眼のような写りになります。

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