PHOTO YODOBASHI
ヨドバシカメラ公式オンライン写真マガジン
- 本稿は、写真用レンズについてより深い理解が得られるよう、その原理や構造を出来る限り易しい言葉で解説することを目的としています。
- 本稿の内容は、株式会社ニコン、および株式会社ニコンイメージングジャパンによる取材協力・監修のもと、すべてフォトヨドバシ編集部が考案したフィクションです。実在の人物が実名で登場しますが、ここでの言動は創作であり、実際の本人と酷似する点があったとしても、偶然の一致に過ぎません。
- 「新宿光学綜合研究所」は、実在しない架空の団体です。
3群5枚目 レンズに込められた設計者の想い
続・やっぱり単焦点が好き
前回に続いて「単焦点レンズ」の話です。前回が単焦点レンズについての概論だとしたら、今回は各論。原田研究員と町田研究員が担当したあっちの大口径レンズや、こっちの小さなレンズの開発秘話。さらに、触れてはならない禁断の(?)「あのレンズの大きさに関する疑惑」についても語ってもらいました。
NIKKOR Z 50mm f/1.2 Sの大きさに関するヒ・ミ・ツ
原田さん、この際ですからハッキリさせておきたいんですけどね。 |
ひいいっ、な、なんですか? ワタシ、また何かやらかしましたか? |
原田さん、NIKKOR Z 50mm f/1.2 Sについて「これでも限界ギリギリに小さくした」と以前おっしゃっていましたけど。 |
言いました。 |
単焦点レンズは、より明るく、明るさの割にはより小さくできる、とおっしゃっていましたけど。 |
言いました。 |
ちょっとこれを見てください。 |
さて、これには何が写っていますか? |
んーと、左がNIKKOR-S Auto 55mm F1.2(1965年)。真ん中がAi Nikkor 50mm F1.2S(1981年)。で、右が私の設計したNIKKOR Z 50mm f/1.2 S(2020年)・・・に見えなくもない。 |
おや、ずいぶん歯切れが悪いですね。小さい2本のレンズはだいぶ昔のレンズですよね。その間、レンズの設計技術は着実に進歩しているはずなのに、逆に大きくなっちゃってるじゃないですか。 |
でも、描写性能は比べものにならないほど違いますよ。 |
でも原田さん、この小さいレンズたちの描写好きなんですよね? |
す、好きです・・・ |
三度のメシより好きなんですよね? |
す、好きです・・・ |
矛盾してるじゃないですか。 |
いや、それは世の中に求められているものと、個人的な嗜好の違いがですね・・・ |
こんなに大きくする必要が、本当にあったんですか? |
それはもちろんです! |
「より明るく、明るさの割にはより小さく」はどこに行ってしまったのでしょうか。 |
確かに、最近の単焦点レンズは大型のものも多いです。「大きい」と「小さい」の二極分化が進んでいる、と言えばいいでしょうか。 |
その「大きい方」の話です。小さくできるはずの単焦点なのに、どうして大きくなるのか。 |
では説明させていただきます。ニコンには他にも大きな単焦点レンズはありますし、おそらくこれからも出てくるでしょう。大きくなる理由はさまざまですが、これは、「NIKKOR Z 50mm f/1.2 Sの場合」の話です。 |
よござんす。 |
- 1群1枚目 設立趣意書
- 2群1枚目 凸に始まり、凸に終わるのであります。- レンズとは、なんじゃらほい
- 2群2枚目 だから「収差」というのです。- とっても収まらない話
- コラム:原田研究員からのメール - 「例のレンズタイプの件」
- 2群3枚目 焦点距離のナゾ- それはいったいどこからどこまでじゃ
- 2群4枚目 エフチの「チ」 - あの数字の並びはいったいどこから来たのか
- 2群5枚目 ガラス作りとコーティング - レンズの要を忘れるべからず
- 2群6枚目 謎の写真用語・説をめぐるアレコレ - あなたは「でっこまひっこま」を知っているか
- 2群7枚目 続・エフチの「チ」 - レンズの開放F値ってどうやって決まるの?
- 3群1枚目 レンズ設計ことはじめ - 設計者の描く理想とは
- 3群2枚目 シミュレータと設計者 - 完成レンズを見通す、見極める
- 3群3枚目 ズーム再考(最高) - そもそもは航空用語だったらしいです
- 3群4枚目 やっぱり単焦点が好き - 「単」とは言え複雑で奥深い
- 3群5枚目 続・やっぱり単焦点が好き - レンズに込められた設計者の想い
- 3群6枚目 「商品企画」というお仕事 - 商品が生まれいづるところ
- 3群7枚目 試作のプロフェッショナルたち (前編) - 設計図と完成品のはざまで
- コラム:原田研究員からのメール - 「交換レンズは3本まで」という法律について
- 3群8枚目 試作のプロフェッショナルたち (後編) - ものづくりの最終工程で行われる試作とは
- 4群1枚目 Zマウントはこうして生まれた - 100年間変えられないことを、考えて、決める
- 4群2枚目 フード首脳会談 - レンズ設計のその果てに
- コラム:原田研究員からのメール - レンズの楽しみ方案内