PHOTO YODOBASHI
ヨドバシカメラ公式オンライン写真マガジン
“スロウ レンズ”
暗いレンズ特集 Vol.4 : パンケーキ! その2.撮影編
第4回の暗いレンズ特集も前回に続きパンケーキレンズをご紹介します。焦点距離にすると40〜45mmあたりのレンズたちです。APS-Cボディにマウントするペンタックスを除けば、広角(35mm)から標準(50mm)の間となるポジション。35mmレンズと50mmレンズの画角の違いは大きいながらも、その間を取るのは「刻みすぎ」ということなのか、そこに属するレンズというのがマイナーな存在であるのはご存知の通り。この世に星の数ほどありそうな35mmや50mmのレンズに比べると、40〜45mmあたりのレンズは数えるほどしかありません。
でも「間を取る」というのは、両方のいいとこ取りができちゃうという可能性も秘めてもいます。カメラにレンズ1本だけをマウントして持ち出すようなとき、(どんなレンズを選ぶかは人それぞれだとは思いますが)世の中に多いであろう35mm派と50mm派の間で、広すぎず狭すぎずの絶妙なポジションから涼しい顔をしてこちらを見ているアイツをこの際使ってみようではありませんか!
smc PENTAX-DA 40mmF2.8 XS
「オレオやろ!」私がこのレンズを初めて見た時の第一声です。スーパーで買って来ましたよ。久しぶりに食べましたが美味しいですね。相変わらず牛乳が合う。撮影に使用したお菓子はスタッフで有り難くいただきました。レンズの話をします。他のペンタックスとは毛色が違うし、「なんだかカッコいいぞ」と思ったら、あのマーク・ニューソン氏によるデザインなのですね。確かに外周がギザギザになった彼の食器にも共通するデザインです。しかしウソみたいな薄さですね。それなのにAFが出来るんですよ!いやこれは楽しそうだ。(TAK)
APS-Cセンサー用のレンズということで、35ミリ判換算で61mm相当の画角になります。ボーッと眺めるよりも、狙いがはっきりしたショットに良さそうです。こちらの被写体は建築用のカバーですが、順光で見たらつまらなかったのに、ふと振り返って見たら妙にカッコよかったので、歩きながら高速シャッターでサッと撮りました。感動、衝動をストレートに収めやすい画角だと思います。
あまり撮影ポジションを変えられない時にどれほど入るかを試してみましたが、狭すぎるということもなく実際使いやすく感じました。
画角を生かし、 必要な要素を狙いすまして入れ込んでみます。ニューヨーク市警さながらのピックアップトラックが、京都の四条河原町にいて、観光客がそれを珍しそうに見て、右手背後にはミッキーマウス。なかなかシュールなスナップが出来上がりました。ちなみに私はかなり前から大阪府警をOSPDと勝手に呼んでいますが、全く普及しません。
観光客は面白い被写体です。国や言葉は違っても、同じ人間なんだなと。
レンズ構成自体は「smc PENTAX-DA 40mmF2.8 Limited」と同じようにも見えるのですが、硝材やコーティングが違うのか、中央はシャープで周辺が甘くなる傾向ですね。解像度も決してシャープすぎるわけではなくなんとなく優しい感じで、ボケもナチュラルで好感が持てます。このあたり、玄人向きだと思います。オールドレンズのような味わい。ヒネリの効いたルックス。薄型軽量。ペンタキシアンであることが嬉しくなる一枚?一本?です。
» smc PENTAX-DA 40mmF2.8 XSの実写レビューはこちらからご覧いただけます
Canon EF40mm F2.8 STM
マウントすると一眼レフボディと一体化、いや同化してしまうほどの「EF40mm F2.8 STM」。撮影時の軽快さはこの上なく、移動だってラクラク。気の向くままに歩みを進めながら、いいなぁと思ったシーンを切り取っていくには最高の相棒です。肝心な写りの方はご覧のとおり。めちゃめちゃコンパクトで、プライスだって超リーズナブル…だから写りはそれなりでしょ、という発想を簡単に覆してくれる頼もしい1本なのであります。最短撮影距離0.3mを活用してテントウムシを撮影しましたが、やや高輝度な背景にも関わらず自然なボケを見せてくれるではりませんか。最短付近で開放して撮れば、多少の粗が出てきても不思議ではありませんが、どうやら見当たりませんね。やってくれますパンケーキレンズ!いつでも気軽に持ち出せる機材はヘビロテ必至です。(KIMURAX)
» Canon EF40mm F2.8 STMの実写レビューはこちらからご覧いただけます
FUJIFILM XF27mmF2.8
魅力的かつ高性能な単焦点レンズを熱く・厚くラインナップしているXFレンズ。こちらの「XF27mmF2.8」はフルサイズ換算45mm相当となる画角を持ったレンズとなり、「XF18mmF2 R」から絞りリングを省略したような極端に全長の短いスタイルは、まさしくパンケーキサイズといえますね。本レンズも画角や開放F値は従来のパンケーキレンズらしいスペックに揃えていますが、本レンズは(パンケーキレンズで多数採用されている)3群4枚のテッサー型のレンズ構成ではなく、ミラーレスカメラの短いフランジバックに最適化された、5群7枚というより贅沢で凝った構成を採用。それ故に本レンズは他のXFレンズと変わらぬ高性能なものに仕上がっています。(Naz)
開放がF2.8と口径は小さいですから、1点にフォーカスして背景を大きく溶かすようなカットは撮影できません。しかし、ワーキングディスタンスを詰められるなら、周囲の雰囲気をうまく採り入れながら被写体を引き立てるには十分なボケ量はあると思います。立体感のある写りはなかなかのレベルで、前ボケも美しいですね。背景の壁面は、ピント面から溶けるほどの距離が空いていなかったことから、少しだけ賑やかではありますが、硬く感じさせないよううまくコントロールされています。
ハイキーで撮影しましたが、柔らかさを感じるトーンの再現が素晴らしく、上品さを感じる描写に繫がっています。
重量感のある金属の鎖と、背景に写るその影と。
敢えて開放で撮ってみましたが、逆光も問題ありませんね。そして実にシャープです。XFレンズで最薄となる全長23mmのたいへんコンパクトなサイズ。しかも重量78gと最軽量でもあるそうです。そこへこれだけ使えるレンズを押し込んでますから、実はかなり欲張った製品なんですね。人気の高い“F2シリーズ”と比べても高めのプライスとなっていることから、なかなか手を出しにくいレンズだと思われていた方もいるでしょう。でも、ご覧の通り心配はいりません。誇張のないナチュラルな視覚を切り取れる「結構使える画角」のレンズをどうぞたっぷりと楽しんでみてください。
余談となりますが、こちらのレンズ、純正フードがオプションを含めありません。全長を短くするためにレンズの最前面も通常のレンズほど奥まった位置にありませんから、前玉を傷をつけぬよう、取り扱いには多少の注意が必要です。私はサードパーティー製のドーム型フードを流用していますが、富士フイルムさま、どうかかっこいい専用フードをお願いします!
Carl Zeiss Tessar T* 45mm F2.8
18mmと薄く、重さも90gしかないまるでボディーキャップのような可愛いレンズ。T*と付くレンズとしては破格の安さで「取り敢えず買ってカメラにつけておくか」という感じで気楽に購入したことを思いだします。あまりにも薄くヘリコイドを回すのも一苦労のレンズでしたが、実際の写りはその外観から受けるイメージとは違い、通称「鷹の眼レンズ」と呼ばれるだけあってシャープで切れ味の良い描写でした。デジタルになって使用機会はなかったのですが久々に使ってみました。キヤノンのボディーには薄いマウントアダプターでつけることができるので、EOS-1D Xのグリップより薄く、ボディーキャップのような雰囲気は健在。ツァイスらしいキレの良い写りは、1982年発売と37年前もに登場したレンズとは思えないです。テッサータイプのレンズに美しいボケ味は期待できないと思っていましたが、三角コーンの写真をみるとなかなかいけてると思いませんか。ただし一点注意が。絞り値によってピント位置が微妙に変わります。絞って撮られる方は絞り込みの機能を使ってピントを確認することを忘れないようにしてください。(A.Inden)
間を取るは、時においしく居心地もいい。
前回から2回にわたりご紹介しましたパンケーキレンズ。手に入れたら35mmも50mmもいらなくなるなんてことはたぶんありません。むしろ40〜45mmレンズを手に入れるのは、35mmと50mmレンズを手に入れ、存分に使い込んでからの方が楽しさをしっかりと味わえるでしょう。そういう意味ではこの画角のレンズはマニア向けであり、玄人向きであるのかもしれません。これ1本で35mmレンズのような被写体周辺を含めた雰囲気を感じさせるカットも撮れますし、50mmレンズのような被写体を見つめるようにまっすぐ捉えることもできます。しかも、これがパンケーキレンズだと薄くて小さいのです。一時は様々なメーカーから発売されていたパンケーキレンズ。探してみたら、お持ちのカメラにマウントできるものがあるかもしれません。それでも「そんな中途半端な画角を使う機会なんて…」と思われる方は、お持ちの標準ズームレンズを40〜45mm付近に固定して撮影してみてください。きっと「間を取った画角」の楽しさが味わえると思います。その先にはぜひ!
( 2019.01.11 )
いくらパンケーキレンズといっても、ここまで薄いと冗談のようですね。とはいえ、この見た目からは想像つかない本格的な写り、ペンタックスユーザーならば楽しまなければなりません。
ステッピングモーターでAF早い、お値段安い、写りも上等と実に優等生なレンズです。カメラから大きなレンズを外してボディキャップをつけるとき、かわりにこのレンズをマウントしてみると新しい世界が開けるかもしれません。
富士フイルムが作った本気パンケーキ。使い込んでたら手放せなくなりました。
米国RRS製アルミ削り出しのL字プレートです。縦位置・動画撮影用のカメラ側面の部分を外すことで、X-T2のコンパクトさを保ちながら、グリップのしやすさを確保します。またカメラの重心が下がるので安定させやすいです。
ヤシカ・コンタックスマウントをEOSボディで使うためのマウントアダプターです。レンズが何本かある方は、レンズ本数分揃えておくとレンズ交換が捗ります。
変わらぬ味が嬉しいスタンダードのオレオもどうぞ。