PHOTO YODOBASHI
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“スロウ レンズ”
暗いレンズ特集 Vol.3 : パンケーキ! その1.機材編
暗いレンズ特集も第3回。「暗い」といっても、この現代にそんなに明るくない単焦点レンズは探してみるとないものですね。でも、このあたりから本格的に暗くなっていきたいところ。今回はF2.8と小口径にすることで抜群に小さくなったレンズたち、その名も「パンケーキレンズ」を紹介したいと思います。レンズの鏡胴は一般的に「長い」「短い」でその大きさを表すものですが、ここまで突き詰めると「薄い」となります。だからパンケーキ。早速カメラにマウントして楽しんでみましょう。焦点距離は40〜45mm程度のものが多く、ちょうど標準レンズとなる50mmと広角レンズの入り口となる35mmの中間という、普段使いには持ってこいの存在なのです。
PENTAX HD-DA 40mmF2.8 Limited
何このルックス。何この質感。何このメタルレンズキャップ。カッコエエー!お世辞にも薄いとはいえないPENTAX KPボディにパンケーキレンズ。これが驚くほど似合ってます。カメラの格好よさのほとんどはレンズで決まると言っても過言ではないでしょう。軍艦部に存在感がある一眼レフタイプのボディには、大口径のドカーンとしたレンズが似合うものです。正直パンケーキレンズが格好いいと思えるようになったのは最近のこと。一周まわって解る格好よさ。いや痺れます。と、見た目ばっかりの話でしたが、そうは言ってもレンズは写ってなんぼです。APS-Cセンサーを載せたPENTAX KPで撮れば35mm判換算で60mm相当。標準レンズよりも「シーンを切り撮る」といった感覚の心地よい焦点距離です。その写りはこの薄さから想像できない描写です。開放F2.8からピント面は立体感があり、ボケの描写も自然で好感が持てます。さらに絞り込んだときの解像力はキレッキレで、鳥肌ものです。絞りはF5.6か8くらいにセットし、パンフォーカスで次々とスナップする。ルックス共々本当に気持ちのいいレンズです。(T.T)
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Canon EF40mm F2.8 STM
公園で撮影をしていると小学校3年生くらいと思しき男女4名が「それカメラなの?」「なんかヘ〜ン」「撮って、撮って~」などなど、各自の疑問・欲求を口にしながら寄ってきました。少しばかり話をしてみると、大きいカメラには長いレンズが付いているのが彼らの“普通”なのだとか。一眼レフカメラで撮影しているのを間近に見る機会といえば運動会や発表会だったり、遠足に同行するカメラマンの姿だそうで。なるほど長めのレンズが付いたカメラしか目にしないですよね。もしかすると子供に限らず、カメラに詳しくない大人の人もそんな違和感を覚えるのかもしれません。ただ、一見少々アンバランスに映っていたその組み合わせも、だんだん見慣れてくるとキュートに感じてくるから不思議なものです。威圧感もないですからね。おかげではじめて会った子供たちとの会話のきっかけにもなりましたし(笑)。そしてなんといってもコンパクトな機材で済むというところが最高です。撮影時はもちろんのこと、肩からぶら下げて歩いても軽々。電車での移動の際も邪魔になりませんからね。カメラボディから出っ張るのは2cmちょっと。ねじ込み式のフードを付けてもプラス5mm程度(装着イメージカットはフードを装着した状態)。フルサイズ(EFマウント)向けの純正現行品パンケーキレンズとしては唯一の存在です。重さ130gと軽々ですが、値段の方も気軽に手を出せるところがマル。写りだってなかなかのものですからね、侮れません。ボディのキャップ代わりに買ったという人も、なんだかんだと出番が多いという話もちらほら。買っておいて損は無い。それどころか、これかなり重宝しますよ、ホントに。(KIMURAX)
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FUJIFILM XF27mmF2.8
30年ほど前でしょうか、一眼レフのフラッグシップ機(当時はCanon New F-1、Nikon F3、PENTAX LX、OLYMPUS OM-4あたり)に憧れる少年だった私は、システムカメラの魅力は合体ロボだと固く信じておりました。立派なおじさんとなった今も残念ながら拗らせたまま。小さいことが最大の特長であるパンケーキレンズをカメラにマウントして、必要もないバッテリーグリップを装着し、せっかくの携行性を台無しにします。今でこそバッテリーグリップとその役割は変わりましたが、もうこれって見た目モードラ(=モータードライブ…昔のカメラで連写するのに必要でした)そのもの。プロカメラマンっぽくて痺れるのです。そこには理由や必要性はありません。本来ならば、小さいレンズは小さいカメラと組み合わせることで、そのコンパクトネスは遺憾なく発揮されるわけですが、パンケーキレンズとなると話しは別。できるだけごついボディにマウントして、そのアンバランスさを楽しみたい。肩の力を抜いて使える機材だからこそ、“見た目重視”でいきたいのです。(Naz)
Nikon GN Nikkor 45mm F2.8
不恰好なものに惹かれる。かっこ悪い、ではなく、不恰好。両者は似て非なるもの。ジャガーのEタイプはロードスターよりもクーペボディ。馬ならサラブレッドよりもばんえい馬。スリムなジーンズよりぶっといパイプドステム。王道のレスポールよりも田舎臭いファイアバード。パンケーキと呼ばれるレンズもここに入る。それも、あえて大きなボディにつけた姿が最高だ。なんだこれ?なめとんのか?ちゃんと写るの?こんなんで。
もちろんちゃんと写る。しかし、敢えて言うけれど写りはもう、この際どうでもよろしい。この不恰好なカメラをテーブルの上に置いて、そうだな、ウィスキーやカクテルじゃなくて、ここは焼酎を。しかも芋。安いやつ。でもって演歌、あるいは80年代のポップスなんて流したりして。フットルースのサントラとか。いいねえ。「カメラはあくまで道具ですから」と割り切っている人はエライ。ああ、ワタシもそうなりたかった。でも、「カメラは酒の肴」。これも意外とシアワセ。(NB)
見た目重視のパンケーキレンズ、想像以上に写りも楽しめます。
その昔、各社からパンケーキレンズが発売された時代がありました。それらの多くがカール・ツァイスから生み出された3群4枚というシンプルな構成のテッサー型を踏襲していました。今回ご紹介した4本のパンケーキレンズのうち、3本は現行品。それぞれ、コンパクトな鏡胴に現代の技術で設計された(テッサーとは異なる構成の)レンズを上手に組み込み、「小さいけど写りはそこそこ」から「小さいのに写りもなかなか」へとしっかりと昇華させているように感じました。どのレンズも撮影機材のレギュラーメンバーへ入れたくなる実力ではありましたが、そこはパンケーキレンズ。ボディキャップ代わりにマウントして、買い物や散歩など日常の中へ持ち出してみてはいかがでしょうか。
( 2018.12.28 )
パンケーキレンズまでこだわりのリミテッド仕様で手に入るのがペンタックス。質感と造りのよい金属鏡胴は持っているだけで満足が得られる逸品です。カメラにマウントした姿でご飯3杯はいけますね。
こちらはシルバーのリミテッドレンズ。アルミ削り出しの外装を丁寧にシルバー塗装していますから、手にしたときの温度や重量感、そして手触りが違います。お酒が進みますよ。
小さいながらも、4群6枚の贅沢な構成。それだけに写りも頼もしく、ステッピングモーター採用と現行レンズならではの性能です。しかも撒き餌級にお手頃と買わない理由が見当たりません。
今回はご紹介しませんでしたが、こちらはAPS-Cボディ向けのパンケーキレンズ(フルサイズボディではお使いいただけません)。フルサイズ換算40mm相当の画角となります。
ただ小さく薄いだけではない、写りもかなりのものでした。XFレンズながらも絞りリングまで省略し、78gという驚きの軽さも手に入れています。コンパクトな富士フイルムのボディによく合う1本です。
キットレンズ以外ではF2シリーズとこのパンケーキだけにあるシルバー鏡胴。ボディーカラーに合わせて揃えたいですね。