No Camera, No Travel. 旅とカメラと
Vol.1 上海(下)
ちょっと足を伸ばして水路の街へ
上海トリップも後編です。この旅の日程は3泊4日。ショートトリップと言えども上海の街中散策だけでは勿体ないですね。ぎっしり盛り込んでいきます。
スピード感溢れる街歩きをじっくり堪能した翌日は、ゆったりと郊外の水郷を目指しました。上海周辺の蘇州・無錫には多くの水郷があることでも有名です。中でも足を運びやすい「朱家角(ジュージャージャオ)」へ1DAYトリップ。もちろんそこまでのルートも事前に調べておきます。車のチャーターやツアーもいいですが、ここはやはりふれあい街歩き、路線バスを選びました。朝一番のバスを目指すべく早くにホテルを出てバス停に向かいます。バスにゆられて郊外に進むにつれ混沌とした上海とは別の街並みが現れてきます。長閑な田園風景がどこか懐かしい風景でもあり心を癒してくれます。そして「朱家角」に到着しバス停を後にし街中に入れば、そこはまたなんともゆったりとした時間が流れまた違った国に訪れたようです。
( 写真 / 文 : T.Takahshi )
ところ変われば箸も進みます。いやっ、シャッターも進みます。この「朱家角」への1DAYトリップには荷物を抑えLEICA M-9PとFUJIFILM X-Pro1の2台のボディに、レンズはそれぞれ1本と決めました。M9-PにはSUPER WIDE-HELIAR 15mm F4.5 Aspherical。X-Pro1にはXF35mm F1.4 Rと言う組み合わせ。他のレンズ達はホテルで留守番です。X-Pro1にXF35mm F1.4Rは35mmフルサイズ換算でほぼ標準域。F値も1.4と明るくほぼ万能と言えます。最近ではXF35mm F2 R WRというコンパクトでさらに防塵防滴仕様のレンズも出ていて、とにかくレンズは1本となれば、標準域を選ぶ人も多いでしょう。それと組み合わせた水路も呑み込む超広角の15mmは、とてもいいコンビネーションで撮り歩くことが出来ました。機材がコンパクトだと小さなカメラバックのみの軽装で歩けます。やや湿度の高い日でしたが、長閑な街並みを風に吹かれながらのフォトスケッチも緩やかに運びます。小さな街ですので特に下調べもしませんでした。気の向くまま歩き、疲れたら涼しいエアコンの効いた食堂に入り、名物の「ちまき」や「豚の角煮」を頬張りながら青島ビール。く〜溜まらない旅ですね。
朱家角(ジュージャージャオ)
朱家角へは人民広場から少し歩いたところにある普安路のバス停から出ている高速バス「沪朱高速専線」が便利です。運賃は片道12元。朱家角まで約50分です。始発は6:00、最終は21:00で、その間に1時間3本のペースで運行していますが、遅れることもしばしば。週末はこのバス停に長蛇の列ができるため、タクシー(約200元程度かかります)や、ガイドさんのいるツアーに参加するのもいいかもしれません。朱家角に着いたら帰りのバス時間もチェックしましょう。私は間違えて各駅停車に乗ってしまい、えらい時間がかかりました。ま、それも旅のエピソードですね。
朱家角は宋の時代に市場が形成され、明の万暦年間に鎮(都市よりも人口の少ない区域)となり商業が盛んだった場所。淀山湖のほとりにある古い水郷であり、大小の水路が交差したその景観から“上海のベニス”と称されることもあるほど。漕港河とその支流に囲まれた約47平方km程の小さな村ですが、1991年には政府から上海歴史名鎮に指定され、9つの古い街と36ヶ所の橋を含め、たくさんの古い建築物が当時の姿をそのまま残しています。観光地として以前から人気のある場所ですが、映画などの撮影にも多く利用され、レトロで中国らしい雰囲気を味わうことができる静かな街です。
(※画像のクリックで大きな画像を表示します)
あらためて、この上海では2台のブライトフレームを持つカメラで旅をしました。こういったストリートを次々と切り撮っていくのには、ある意味曖昧なブライトフレームでのフレーミングが合いますね。一眼レフやEVFの100%の視野率ファインダーは、きっちりと追い込んで撮影していくのにはいいのですが、その分フレーミングに気を取られやすいもの。さっとファインダーを覗き瞬間、瞬間で次々シャッターを落としていくと写真にも動きが出てきます。甘いフレーミングにもなるでしょう。それがライブ感というものです。撮ったとき分からなくても戻って開いた絵からはそれが伝わってきます。撮影も肩の力を抜いてリラックスして行きましょう。その分写真だけに集中するのではなく旅も楽しめるというものですね。
最後はゆったりカメラを置いて…。
朱家角から戻って早くも最後の夜です。3泊4日なんて本当にあっという間ですね。と言っても、フライトを決めたときから数えれば、もう何ヶ月も楽しんだことになります。いや〜もう腹一杯、満漢全席です。(食べてませんけど…)。最後はゆっくりとカメラを置いて街を散策するのもいいでしょう。これだけ楽しめたんですからね。な〜んてことは言いません。
そう、カメラ置いて歩いたときに限ってビッグな出会いがあるかも知れません。もちろんそんな出会いはないかも知れませんが、なければないで最後の散策を楽しめばいいだけですね。「No Camera, No Travel」です。時間の許す限り上海を歩きつくしましょう。
外灘は最後の朝も霞んでいました。これが上海らしい景色でもあります。現在と過去が入り混じった魅力溢れる街、上海。街行く人々はわりとぶっきらぼうな印象で、旅行者に愛想ふることはありませんが笑顔で「ニーハオ」と声をかければ笑顔で応えてくれます。笑顔は万国共通ですね。治安に関しても特段悪いわけではありませんが、カメラを提げているわけですから、しっかり注意して歩きたいところです。国が変われば習慣や風習も違います。大事なのはどこへ行ってもその国の文化に寄り添いふれあう気持ちです。そうすればきっと楽しいふれあい街歩きになります。
今回の旅行記、いかがでしたでしょうか。上海に限らずお気に入りのカメラを持って旅に出たくなっていただければ嬉しい限りです。私も記事を書きながらまた上海に足を運びたくなりました。移り変わりの速い上海。今度行くときはまた違った上海に出会える事でしょう。
( 2017.04.24 )