No Camera, No Travel. 旅とカメラと
Vol.1 上海(上)
フライトを予約したときから旅のはじまり。
「あ〜、どこか旅に出掛けたいな〜」。
日常に追われ、ふと現実逃避したいとき。何気にお気に入りに登録してあった航空会社の「キャンペーン!」の文字。ちょっと息抜きにと覗いてみると、お得チケット情報が満載。「へ〜、この時期だとこんな安く行けるんだ」。でもそんな何ヶ月も先の予定なんて立つわけないよな〜と思いながらも、いやいやこういうものは先ずポチッちゃおう。先の予定なんてこれから作り上げて行くものなんだ!なんて言い聞かせ、想像力豊かに日程を決め、ゆっくりとマウスを動かし、ポチリ!!この瞬間から旅のはじまりです。旅先は上海。もう飛び立つ日に向け、仕事なんて人一倍頑張ってしまいます。フォトグラファーのスキルはいかに日常仕事をすり抜け、ロケ日程を確保できるかだったりします(笑)。
「No Camera, No Travel. 旅とカメラと」では、私がこれまで海外の撮影旅行で訪れた街のスナップや、そのエピソードを紹介しつつ、海外での写真の楽しみ方、ちょっとしたテクニックなどを綴っていきたいと思います。第一回目は2012年6月に訪ねた上海です。初夏の上海は中々の暑さでした。
( 写真 / 文 : T.Takahshi )
二度目の上海ならふれあい街歩き。
フライトが決まれば次ぎに旅の計画です。なんといっても旅の楽しみはこの計画段階から始まります。一度目の訪問なら観光名所にお決まりのポイントを訪れるのもいいでしょう。でも二度目の旅ならぐっとディープに街歩きが楽しいですね。私のお気に入りの番組にNHK「世界ふれあい街歩き」があります。この番組は毎回一つの都市に訪れ、ただただ街を歩き、路地裏や市場などで、行き交う人や生活する人々とふれあいながら、その街の暮らしを垣間見る事が出来ます。なんとも行き当たりばったりな旅番組ですが、この街歩きが見ていて楽しそうで、こういった感じでのんびりとカメラを肩に掛け、街歩きできればいいなと思っています。
近年高層ビルも建ち並び都市化が進む上海も、一歩路地に入れば昔ながらの生活を感じられる世界に踏み込むことが出来ます。やはりそういった街を散策してこそ旅の楽しみかなと思います。しかし、短い渡航期間で歩きたい街並みに出会えるかというと中々難しいもので、先ずはインターネットを駆使してロケハンです。
デスクトップロケハンに欠かせないのがGoogle Mapsやストリートビューです。中国国内のストリートビューはGoogle Mapsにありませんが、現在では百度(バイドゥ)が同様のサービスを提供してくれています。このほか一般の方の旅行記やYouTubeに見る旅動画も参考になりますね。ありがたいことに少し調べるだけでもわんさと情報が手に入ります。雰囲気のある上海の街角が沢山出てきました。先ずは街歩きの起点となるホテルを予約します。ロケーションなどから今回は旧フランス租界にあるホテルにしました。大人二人で3泊、日本円にして2万円ほどですが驚くほど高級なホテルでした。そしてさらに生活感を感じる街並みを探します。出てきました、「四牌楼路」「光啓南路」などなど…。街の中心部からも歩いて行けるところです。気になる箇所はじゃんじゃんグーグルマップに★印を付けていきましょう。出発当日まで時間があればネットを調べ行きたいポイントを徹底的に★印を付けて行きます。なんならもうお腹いっぱい、絶対回りきれないよってくらい地図を★印で埋め尽くしていきます。
次なる楽しみは機材選び。
散策ポイントも決まれば次は大事な玉手箱「カメラ選び」です。上海という街歩きにはやはり大柄な機材は控えたいですね。特に路地裏や朝夕の市場などに立ち寄る時には、なるべく生活の邪魔にならないようにしたいものです。カメラを構えるのもさり気なく意識されることなく歩きたい。今回のボディはLeica M9-PとFUJIFILM X-Pro1と決めました。なんか似たタイプのカメラを二台という感じですが、Leica M9-Pは純粋にレンジファインダー。これは私の心情として外せないものです(笑)。そしてFUJIFILM X-Pro1はブライトフレームで切り撮る楽しさに加えテーブルショットなどにも使えます。実は似ているようで似ていない、いいコンビネーションなのです。そしてそのレンズ選びです。ここが一番悩みどころ。街並みを広くダイナミックに捉えたいし、ちょっと望遠気味で人々の表情なんかも納めたい。「男は黙って35mm一本!」と言いたいところですが、海外ともなれば気軽に出掛けられる旅でもありません。防湿庫の中から連れていきたいレンズを机の上に並べては悩み出します。レンズなんて我が子と一緒です。本来ならみんな連れていったやりたいところですがそうも行きません。出しては片付けて、また出して…。この悩みは旅行前日まで続きます。大変ですね。いや〜、楽しい(笑)。
そして今回、めでたく連れていってもらえる事となったのがこの子たち。
LEICA M9-Pには、Voigtlander SUPER WIDE-HELIAR 15mm F4.5 Aspherical、LEICA SUMMILUX 35mm ASPH.、LEICA SUMMILUX 50mm ASPH.。FUJIFILM X-Pro1には、FUJINON XF35mmF1.4 R、FUJINON XF18mmF2 R。
結構連れていくね〜と思われそうですが、これでも絞った方です(笑)。実際持ってなければ持ってない中で撮るのが写真の楽しみでもあるのですが、旅に連れていきたい子供たちも選びきれないと言うのが実情です。もうカメラバックもギッシリですね。さてさて、実はこの段階で旅にはまだ出掛けていません。これからですよ。最初に書きましたが、フライト決めたときから旅は始まっています。そして、旅先に降り立った時がクライマックスのはじまりです。もうぐったりですか?ま、そう言わず最後までお付き合いください。
降り立ったその時からタイムトリップ。
どれだけビルが建ち並ぼうがそこは上海。一歩路地を入ればそこにはどこか懐かしくも異国情緒溢れる街並みが目に飛び込んできます。もはや映画の世界です。早速カメラを片手に出掛けましょう。私の場合、外出先や屋外でのレンズ交換はしません。M9-Pに一本。X-Pro1に一本と言う感じで、それぞれ異なった画角のレンズを付け、一台は手に、一台はショルダーバックにというスタイルで歩きます。そしていいシーンに出会えば立ち止まってシャッターを落とします。ちょっと画角を変えたい時には、もう一台のカメラを取りだしてシャッターを落とす。なんか楽しいリズムでしょ。まさに至福の時です。
そして、歩きながら何か旨そうな匂いがすれば覗き込んで戴いたり、疲れたら店先に置いてある椅子に腰掛けて休んだりと、その土地の生活に馴染み込みます。観光地でない生活感溢れる街中には客引きや物売りはいません。もう街の住人です。
上海の楽しみは「食」も欠かせませんね。日本で食べ慣れている上海中華も現地の食堂なんかで頂くとまた特別です。もちろん箸を付ける前に一枚。テーブルショットはやはりX-Pro1ですね。ファインダーはEVFに切り替えて、レンズはXF35mm F1.4RでもXF18mm F2 Rでもどちらも行けます。FUJIFILMのオートホワイトバランスがまた良好で、上海の食堂など難しい店内照明もほどよい雰囲気を残しながら整えてくれます。料理の色味もいいですね。
どこを切り撮っても楽しいドラマが繰り広げられている上海の街角。カメラを片付ける暇なんてありません。やはり海外での撮影の魅力は、日本では味わうことの出来ない世界に出会えることです。文化、生活、空気…。歩いているだけで、その土地で育まれてきた歴史をも感じることが出来ます。日頃見慣れた風景にシャッターも湿りがちだったカメラも息を吹き返したかのように動き出すことになるでしょう。もちろん、その国その国によって文化、風習の違いもあります。大切なマナーを忘れず撮影の旅を楽しみたいですね。さてさて、次回の上海編は水郷の町に訪れます。
( 2016.10.06 )