PHOTO YODOBASHI
ヨドバシカメラ公式オンライン写真マガジン
今回は疑問というより相談なので〈番外編〉です。これまでに、「ぼかし方」や「格好いい写真を撮るコツ」などダブルズームキットレンズを使って一緒に考えてきました。ところが、第2回の後にコロナ第七波が始まり、なかなか撮影に出られない日々が続いた佐藤さん。仕方なく夜な夜なフォトヨドバシのレビュー記事を眺めていると、沸々と単焦点レンズが気になり始めたようです。
(文:Z II)
質問者は、日頃から趣味のバイクでお付き合いのある佐藤剛史さん。30歳独身。BMWモトラッドさいたまシティ店の営業マン。趣味は食べ歩きとバイクツーリング。自分のバイクや車をとにかく美しく撮りたいと思い、最近FUJIFILM X-S10ダブルズームキットを購入。
今回の質問
単焦点レンズを買うなら、どれがいいですか?
さてさて、佐藤さんがダブルズームキットを購入してから約4ヶ月、この企画が始まってからまだ3回目にして単焦点レンズの購入に踏み切るのは少し早い気もしたのですが、自ら高いハードルを課すことはよい傾向だと思います。とはいえキットズームレンズの次のステップとして最初にすすめる一本は難しいものです。いわゆる標準域の35〜50mmくらいを選ぶのが無難なのでしょうが、佐藤さんの求めているものを明確に把握しないことには気軽にすすめるわけにいきません。というわけで今回は、単焦点レンズ選びを一緒に考え、納得するレンズの購入が果たせたのかどうか?というお話です。これから単焦点レンズを買おうかなと考えている方の参考になれば幸いです。
趣味の道具はワクワクするものを
フォトヨドバシを毎日のように見ているのですが、いいなぁと思う写真は単焦点レンズで撮っていることが多く、明るい単焦点レンズが気になってしょうがないのですよ。私に合うのはどういうものでしょうか?
そうですね、佐藤さんがお使いのカメラFUJIFILM X-S10はAPS-Cセンサーですから、いわゆる標準レンズの焦点距離は35mm前後、50mm以上は中望遠から望遠レンズになります。まず焦点距離を決めて、それから必要とする写りや描写の特長、そして大事な予算を勘案したうえで、どのレンズメーカーの製品にするかを決めていきましょうか。
なかなか焦点距離も決められないんですよね。いろんな被写体に使えて便利なのは標準域の35mmなのでしょうけど、私はほとんど車とバイクしか撮らないので少しワイド過ぎるような気がするのですよ。かといって長いレンズだと被写体からかなり離れないと画角に収まらず使い勝手が悪いのかな?と、あれこれ考えてしまいます。
素晴らしいですね、まだカメラを始めて数ヶ月でそこまで考えているなんて。前回お話ししたように車やバイクを景色の中に佇むように撮るなら35mmもよいのですが、主役をドンとカッコよく撮りたいのであれば50〜90mmあたりが合うのではないでしょうか。
なるほど、そうすると50mm、56mm、80mm、90mmに絞られますね。XFレンズの56mmにはさらにAPDフィルターというボケ味をさらに柔らかくするタイプもあって、それも気になります。ボケ命ですから。でも初めてだし予算的に純正にこだわらない手もありかな?とか、もうほんとアタマがぐるぐる同じところを回っています。
お〜、かなり勉強していますね、感心感心。個人的には50mmか56mmがよいかなと思います。35mm判換算でおおよそ75〜85mm相当になるので、クルマやバイクの他に人物のポートレートにも最適ですし、バイクの部分アップに重宝します。問題はF値ですね。F値が小さくなればなるほど使用するガラスの種類や量が増えることでレンズ自体が大きくなり、設計コストもかさむことから高価になりがちです。ですからここから先は佐藤さんの懐事情と、そのレンズを持っている自分を想像してワクワクするかどうかですね。
なるほど、そういうことなんですね。F1.2とかF1.0が段違いに値段が高いから気になっていたのです。だんだん私の視界が晴れてきました。ワクワクかぁ〜。
気持ちが熱いうちに買う
買っちゃいました!“XF56mm F1.2 R”です。やはりAPDのタイプも気になりましたが、懐との相談でこちらに決めました。
ずいぶん思い切りましたね!
ホント相当悩みましたよ。フォトヨドバシさんの作例を穴が開くほど読み返し、いざ決めたら1分1秒でも早く手にしたくなりまして。そんな時、ヨドバシドットコムで在庫があったヨドバシカメラアキバ店に直接乗り込み、速攻で買っちゃいましたよ。配送すら待っていられませんでしたから!
瞬間湯沸かし器級の気持ちの昂りですね。
最近ネットでポチッとが多い中、実際に店舗で見て触って買えるというのは、なんともいいものですね。あれもこれも欲しくなって楽し過ぎました。
ほんと、そうなんですよ。しかも店員さんの知識がハンパなく、熱い想いが伝わってくるのでつい買いたくなりますよね。ところで新しいレンズの感想はどうだったんですか?
それがですね、ファインダーを覗いた瞬間に私が思い描いていた景色がそこにあったんですよ。「おお、これだ!」と胸が熱くなりました。なんでもっと早く買わなかったんだろうと、他の趣味に莫大なお金を使っていた自分に腹が立つほどです。
それはよかったです。よい買い物をしましたね。
見てくださいよコレ!早速、私が撮った写真を店のホームページのトップ画に使用しました。
佐藤さんがレンズを購入した翌朝に撮った写真です。ピント面のキレ、シルバーのギラっとした様子や黒の締まりもよく、このBMW R18の雰囲気に合っています。確かにこの写りはキットズームでは得られないでしょう。
いや〜、目が覚めた気分です。こうなったらF1.0の世界も気になります。
え!もう次のレンズですか?ちょっと落ち着きましょう。とりあえず、まずはこのレンズを使って一緒に撮りに出掛けましょう。いいレンズを買ったことですし、今度は「光を読む」ことを意識してみてください。さらに写真の奥深さを感じられるはずですよ。
光を読む?まったく意味がわかりませんが、ぜひ行きましょう!
( 2022.09.08 )
ズームレンズしか知らないなんてもったいないです。世界が広がる一本。
記事中に登場したAPDタイプ。アポタイゼーションフィルター搭載したボケの質をさらに向上させた特別仕様になっています。
XFレンズで一番明るいレンズです。F1.0の魔力を体感したい方はどうぞ。
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