PHOTO YODOBASHI
ヨドバシカメラ公式オンライン写真マガジン
こう撮った!
Vol.5 天の川
星空を写真に収めようと何度かチャレンジしましたが、うまくいった試しはなく「才能ないな」と撮影を諦めていましたが、機材のレビューで星景写真向きのレンズに出会い本腰を入れて撮影してみることに。狙うはまだ肉眼でも見たことがない「天の川」。撮りたい被写体を見つけ自分のイメージ通りの写真に仕上げていく様子を紹介するコラムの第五回目は「天の川」撮影です。
( Photography & Text : A.Inden )
事前準備
図1:「今日の星空」
まずは被写体探しから。「天の川」は条件が良ければ一年中見ることができますが、場所、季節、時間帯によって現れる位置が変わります。「天の川」の正確な位置を知る方法はいつくかありますが、今回は国立天文台のホームページ「今日の星空」を使用しました。方法は場所、日時、そして「天の川あり」を選択すると正確な位置を確認することができます。図1の赤い線で囲まれたところが「天の川」です。広範囲にわたっているのがわかります。
図2:「光害マップ」
次に撮影に適した条件ですが、現れる方角が暗く湿気が少ないことです。簡単そうな条件ですが、明るさを視覚化した「光害マップ(図2)」を見ると関東圏内には星を観察するのに適した場所(緑から黒にかけて)は少ないことがわかります。「天の川」が現れる方角ができるだけ暗く、車で行きやすいことを考慮し箱根の東南方向が開けている場所を選択。海の上は湿気があり最高の条件ではありませんが、暗さを優先しました。あとは月明かりの影響を受けない新月を選び撮影準備は完了です。
撮影本番
左が撮影準備の様子です。「天の川」は肉眼では見えにくかったのでiOS アプリ「サン・サーベイヤー」の「天の川」が確認できる機能を使い位置を把握(写真左:iPad miniに表示)。右が実際の「サン・サーベイヤー」の画像。雲のように見えているのが「天の川」です。アプリを参考にしてカメラの方向を決め、まずは試し撮り。カメラの液晶モニターで再生し写っていることを確認後、細部を詰めていよいよ本番撮影です。
試し撮り(左の画像)を参考に撮影で工夫したことは、① 構図は下の山の形を目安にして、天の川の一番明るい部分が中心にくるように。② 湿気がありコントラストが低く感じたのでカメラ(SIGMA fp L)の「トーンコントロール」を使いコントラストを高めに設定し星の白さが際立つように。③ 光害の影響を受け少しアンバー気味なので、色調はブルー、マゼンダを加える。トーン、色調はRAWで撮影して現像で修正することも可能ですが、今回はカメラの機能を使いました。撮影して初めてわかったことが、星はピントが合わせづらいということ。AFは迷ったためNG。MFに変え撮影距離を無限大に合わせてもピントはこない。結果、MFでピント位置の拡大機能を使いピントを合わせました。ピント合わせのコツは、いろいろ試したところ、一つの星にピントを合わせようとせず、拡大画面の中に多くの星が見えるところにピント位置をおくことだと思いました。
*三脚の事。今回使ったタイプの三脚はパン棒が邪魔になり真上に向ける撮影には向かないのですが、今回は応急処置として三脚の足の長さを後ろだけ短くすることで対応しました。安定が悪くなり転倒する場合もあるので、カメラを上に向けることができる雲台で撮影することをお勧めします。
初めて写真にする喜び。
人生初の「天の川」、なんとか写真に収めることができました。星空撮影のベテランの方から見るとまだまだだとは思いますが、初心者としては大満足。新しい被写体に挑戦して初めて写真にする喜びはひとしおですね。これからはこのノウハウを活かし奇麗な星空を撮影できそうです。撮影を通じてもう一つ出会った素晴らしいことは、満天の星空の美しかったこと。見てるいだけで幸せになれる感覚を久々に味わいました。みなさんも機会を作り、ゆっくりと星空に包まれてみてはいかがでしょうか。
撮影場所
神奈川県足柄下郡湯河原町宮上
東南方向に海が見える高台。駐車スペースがあり車のすぐそばで撮影することができます。場所はほぼ真っ暗なので撮影は気をつけて行ってください。
( 2023.08.28 )
最高の星空撮影のために製品化された開放値F1.4を誇るレンズ。
6100万画素の解像力で小さな星まで捉えることができます。
3方向をギヤで調整する雲台。微妙なセッティングが可能です。
三脚に付けられるスマホ&タブレットホルダー。