PHOTO YODOBASHI
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一日一花
年もおしせまり、来年のお節料理はどうしようか、正月飾りも準備しなければと、そんな時期になりました。ツンとした冷たさに思わず身を縮め、猫背になって下を向いた先にはニホンスイセンが凛と清楚な花を咲かせていました。華やかさは控えめですが、冬の花は静かな佇まいの美しさがあるように思います。
冬を彩る景色のなか、ひときわ鮮やかな赤い実を付け愛らしさを振りまいているのが南天。読みが「難を転ずる」に通じることから縁起物とされ、かつては庭の鬼門の方角に必ずと言っていいほど植えられていた身近な植物です。正月飾りにはもちろん、お節料理に添えたりと新春を迎える準備には欠かせないもの。今回は、この南天をさまざまな器と合わせながら撮影を行いました。
( Photography & Text : TA )
Vol. 2 南天
毎年この時期になると、松や葉牡丹、水仙などと一緒に、南天は少し多めに購入しています。余った南天は、器の上に置いておくのですが、それだけでも部屋の空気が変わるような気がします。ドライになっていく様子も趣深いものです。
さまざまな入れ物に南天をあしらって窓際や玄関に飾る。これも毎年恒例の新春を迎える準備のひとつです。雪をかぶった南天の、白と赤のコントラストをイメージしながら撮影してみました。口のある陶器の花入れは、枝物はもちろん、一輪の花でも格好がつきますね。
口の広い小ぶりの器に合わせると、少し力の抜けた趣に。
撮影状況はこのような感じです。撮影場所であるキッチンは、南側に細長の彩光窓があり、窓の開閉により光のコントロールがある程度できるところが気に入っています。面倒なセットを組む必要もなく、省スペースで後片付けも楽。小さなものを撮るには十分です。背景に利用しているのは白ダンボール紙(大)を黒スプレーでペイントしたもの。お皿の下に敷いているのは「花を飾る - Vol. 1 バラ」でご紹介したプリントとフレームです。ダークなプリントとアクリル板が、画の中に朧げなリフレクションを描いてくれないだろうかと目論んでこのようにしてみたのですが、イメージ通りに仕上がりました。ほのかな映り込みによって画に彩りを添えてくれたような気がします。今回、日本の冬をイメージしながら全体のトーンをまとめようと試みたものの、厳冬という言葉がしっくりくるような、思っていたよりも厳かなイメージになりました。
白っぽい下記の3枚目のカットは太陽の位置が低い朝の時間帯に撮影。窓を開けると被写体に直射が当たるので、それを利用して少しコントラスト強めの演出に。限られた家のスペースでこんなにも遊べるのは、カメラとレンズあってのこと。花好きはもちろんなのですが、カメラとレンズがなければ、こんなに花木にのめり込むことはなかったかもしれません。
今回使用したカメラとレンズ、マウントアダプター。
- LEICA SL Typ601
- Carl Zeiss C Sonnar T* 1.5/50 ZM
- SHOTEN LM-LSL M
この組み合わせ、良いです。マウントアダプターのヘリコイドを目一杯回してレンズを繰り出すと、とろとろの滲みを堪能できます。
この組み合わせなら低照度下でも安心なのですが、レンズを通してセンサーにたっぷりと光を届けた時の写りがこれまた良いのです。
今年はネットで見つけたシンプルで素敵な正月飾りの作り方をお手本に、しめ飾りと門松を作ってみました。どちらも歳神様をお迎えする準備ができていて、神聖な場所であることを意味するもの。水引は吉事があるようにと願いを込めて結ばれ、松には正月を歓迎する意味があるとされています。子供が受験の年も普段通り正月飾りを飾り、紅白歌合戦を少しだけ一緒に見て、質素ながら手作りのお節を食べて過ごしたのを思い出します。
( 2022.12.28 )