PHOTO YODOBASHI
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山岳写真に憧れて
vol.12 2024年12月・香港のトレイルを歩く・後編
2024年12月上旬に訪れた香港。初めての海外トレイル。ナショナル・ジオグラフィック誌の「世界のベストハイキングコース 夢のトレイル ベスト20」にも選ばれた、美しいトレイルをカメラを手に3日間歩きました。こちらはその後編です。2日目の昼、マクリホーストレイルのセクション3のスタートから始まります。※前編は下記リンクよりご覧いただけます。
標高100m程の北潭凹(Pak Tam Au)をスタートして、いきなりの階段。そこから一気に標高を上げていきます。黙々と登りますが、かなりキツい。そのかわり、振り返れば素晴らしい風景が広がり写真撮影も捗ります。湿度があるためやや霞んではいますが、天候にも恵まれ最高の気分です。
嶂上(Cheung Sheung)。山深い森の中に芝生の広場が現れました。日陰で牛が休んでいます。ここでキャンプしたら気持ちよさそうです(近くにも無料のキャンプサイトがありました)。「許林士多」という茶屋で豆腐花という甘い豆腐のスイーツと缶コーラをいただきます。どちらも最高に美味!
沖縄より南にある香港といっても12月は日が短く、昼を過ぎればあっという間に太陽は傾き、森の中は涼しく感じられるようになってきました。
標高399mの鶏公山(Kai Kung Shan)を経て、セクション3の終わり水浪窩(Shui Long Wo)へ。ここもセクション2と3の接点である北潭凹と同様に車の往来があり、トイレや自販機が設置されBBQスペースにもなっています。自販機の水が売り切れていたため、ピーチティーで補給。17時を過ぎ、陽射しは山の向こう側へ。そろそろ今日の寝床を確保しなくてはなりません。
水浪窩からマクリホーストレイルのセクション4へ入ってすぐにあるキャンプ場「水浪窩營地」で2日目のトレイルを終わりにします。なんとか暗くなる前にテントを設営。日本で「キャンプ場」といえばオートキャンプが一般的ですが、香港では登山用のテントを背負って公共交通機関と徒歩でアクセスというスタイルが一般的なようです。利用は無料で、日本のキャンプ場のように水場やトイレはありませんが、ごみ箱は設置されていました。夜もお酒を飲んで遅くまで...という人も少なく、これだけテントが密集していても静かでした。ちなみにこの日も食事を済ましたらすぐにシュラフに入って就寝。夜は気温がひと桁付近まで冷え込み、軽量な夏用シュラフでは、持参したウェアを全部着ても明け方は寒く感じるほどでした。
day 3 - 水浪窩〜馬鞍山〜昂平〜北港古道〜九龍公園〜帰国
最終日となる3日目です。フライトは夜のため、空港へ向かわなくてはならない夕方まで時間に余裕はありましたが、キリがないので「歩くのは昼まで」と決め、セクション4の続きへ歩みを進めます。坂道を上がり、道路から分岐して平坦なトレイルをしばらく歩くと上りが始まりました。
長く続く急な登山道を休憩を挟みながら登り続けます。木々の間から見えてきた馬鞍山(Ma On Shan)が次第に大きくなってきます。稜線まではキャンプ場から400m以上の高低差です。
眼下に建築中の高層マンションが見えてきました。日本にはない景色です。
標高702mの馬鞍山へと繋がる稜線へ出ました。ここから山頂までは150m程ですが、トレイルのルート外となるため先を急ぎます。またいつか訪れた時に登ってみたいですね。
木々が低くなり次第に景色が開けてきました。
稜線の左には西貢(Sai Kung)、右には沙田(Sha Tin)の街並みが眼下に広がります。今回歩いたトレイルのハイライトといっていいでしょう。「天空回廊」と呼ばれるこの場所、自身の脚で登らないと辿り着けない場所だけに、絶景を前に喜びもひとしお。少々重くとも「カメラを持ってきてよかった」と改めて思うのでした。
ドローンを飛ばす香港のハイカー。禁止されていることの多い日本ではほとんど見かけませんが、香港ではよく見かけます。
反対からはトレイルランニングの人も登ってきました。香港の人々はアウトドアのアクティビティが本当に好きですね! 今回のトレイル、低地では南国らしさを感じる植生でしたが、高所になるにつれ椿のような花がそこら中に咲いていました。
稜線に近い、明るい森の中のトレイルをゆるゆると下っていきます。
再び視界が開けたそこは昂平(Ngong Ping)の高原。これまた絶景のロケーションです。ここへは以前、ハイキング好きな香港人の友人に連れられキャンプにきたことがありますが、自身で歩いてきたトレイルの延長として訪ねてみるとまた違う喜びがありますね。この場を知らなかったら「香港のトレイルを歩いてみたい」などと思いつくこともなかったでしょうから、よいキッカケになった気がします。今回の旅ではタイミングが合わず、この場所でキャンプはできませんでしたが、いつかまた別の機会に。
昼が近づいてきたこともあり、張られているテントは少ないものの、週末の晩〜朝はきっと賑やかだったでしょう。風の抜ける場所ですので、強風の場合はすぐ近くにある木々に囲まれたキャンプサイトの方が安全だと思います。
そろそろタイムリミットです。地図を頼りに、公共交通機関へアクセスしやすいルートで下山しなくてはなりません。ちょうどバス停にアクセスしやすい道がありました。竹林の急な斜面を下る北港古道(Pak Kong Ancient Trail)を下ります。サムネイルの写真はその入口。1日目に「M19」のディスタンスポストをスタートし、3日目には「M85」まで66本クリアし、100kmあるマクリホーストレイルの1/3、約35kmを歩きました。スマートフォンの万歩計によれば、3日間で66.9km歩き、94,927歩との記録。最後まで怪我もなく膝も痛まず歩け、ホッとしました。
北港古道のトレイルの入口。ここから先のバス停まで住宅街の舗装路を歩きます。バスに乗り、香港国際空港へアクセスしやすい香港中心部へ。
ひとつ問題となるのが、お風呂。日本のようにいたるところに温泉があるわけでもなく、銭湯文化もありません。男性向けの高級サウナ施設は街へ出るといくつかありますが、マッサージとセットというのが普通なため、入浴だけだと350HKD(約7,000円)程します。何かないかと香港の友人に訊いてみたところ、「市民プールの更衣室ならシャワーが浴びられる」とよいヒントをいただきました。バスと地下鉄を乗り継ぎ、尖沙咀(Tsim Sha Tsui)にある九龍公園のプールへ向かいます。料金わずか19HKD(約400円)、更衣室にはコインロッカーもちゃんとあり、シャワーは熱いお湯が出ます。汗を流してサッパリ。食事を摂り夕方まで散策してから空港へ向かい、日付けが変わる頃に帰国しました。
初めての海外トレイルでしたが、トラブルもほぼなく楽しく終わることができました。晴天率が高く、穏やかな気候の時期だったため、軽量な装備で楽しむことができたのもよかったです。日本の秋に近い気候となる冬期の香港はハイキングにベストのシーズンといえるかもしれません。虫もほとんどいませんしね。一方で夏期は気温も湿度も高く、水分補給が追いつかなくなるため、遥かにハードなトレイルとなりますのでくれぐれもご注意を。また渡航中の天気が悪天となりそうな場合は、ホテルを手配したり、観光に予定を変更するなど、状況に応じて柔軟に計画を変更することも必要だと思います。
( Photography & Text : Naz )
香港のトレイルに便利なスマートフォンアプリ(iOS版)
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Octopus for Tourists
香港の交通系ICカード「オクトパスカード」のアプリ版。日本向けスマートフォンの多くに採用されているFelicaを採用しているため、アプリのインストールでバスや地下鉄、フェリー等の公共交通機関のほか、コンビニエンスストアや自動販売機での買い物にも重宝します。残高へのチャージはVISAやMASTERのクレジットカードから可能。アプリは英語または中国語に対応し、香港渡航前でもチャージ可能です。
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Hiking Trail HK
香港のトレイルを網羅した地図アプリ。正確な位置情報により、モバイルネットワークが圏外のエリアでも安心してトレイルを楽しめます。標高やディスタンスポスト等の情報も詳しく、ルート設定も行えます。こちらも英語または中国語に対応し、日本語には対応していませんが、簡単な操作は問題なく行えると思います。
( 2025.03.05 )
EVFを搭載したフルサイズミラーレスカメラとしては最軽量クラスのZ5。手頃な価格ながらも安心のニコン、ハードなアクティビティにも最適です。
NIKKOR Zで最小の広角レンズ。薄さ・軽さに加えて写りも造りも良好な1本です。
定番のチタン製軽量クッカー。1人前の湯沸かしや簡単な調理ならこれで十分。110サイズのガス缶も収納可能です。
耐風性があり軽量で信頼性の高いガスバーナー。イグナイターも内蔵しているため、ライターがなくても着火可能です(高所での使用時など着火しない場合を想定し別途ライターやマッチの持参を推奨します)。
飛行機を利用するトレッキングでは、分割してのザックに収納可能な全長まで短かくできる折りたたみ式のトレッキングポールがおすすめです。なおトレッキングポールは機内持ち込み不可となり、預け入れ荷物となりますのでご注意ください。
今回持っていったシュラフです。500gと軽量な夏用シュラフのため、香港といえども使用温度の下限に近づきますので、服装で調節してください。
※こちらは石井スポーツの店頭でご購入いただけます。
水場のないキャンプ場では歯磨き後に口をすすぐ水の確保も難しいもの。1回分ずつ小分けになったマウスウオッシュを日数分持参しました。
晴天だったこともありますが、12月でも香港は露出した肌が焼けしました。サングラスと同様に日焼け止めもお忘れなく。