PHOTO YODOBASHI
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山岳写真に憧れて
vol.11 2024年12月・香港のトレイルを歩く・前編
寒い季節でも温暖なところで軽快にハイキングをしたい、海外のトレイルを歩いてみたい...そんな希望があったことから、行き慣れた香港のトレイルを歩いてみることにしました。香港というと、高層ビルが林立した大都会を思い浮かべますが、実はそのビル群のすぐ後ろには山が迫っています。まだ香港がイギリスに統治されていた返還前、総督がハイキング好きだったことから、多くのトレイルが整備され、「香港4大トレイル」と呼ばれる本格的なものもつくられました。今回はその4大トレイルの中から、九龍半島の東端から西端までの100kmを10のセクションに分けたマクリホーストレイル(MacLehose Trail=麥理浩徑)のセクション2〜4を歩いてみることにしました。滞在は週末を使った3日間。トレイルの名前は25代総督のマレー・マクリホースさんからつけられたそう。
day 1 - 羽田空港〜香港国際空港〜旺角〜西貢〜東霸〜西灣
早朝の羽田空港第3ターミナル。始発電車では搭乗に間に合わず、車で向かいました。この時間帯の便だと昼前には香港へ着けるため、2泊3日の限られた行程でも1日目から有効に使えます。テントやシュラフを含め、28Lのザックにカメラを除くすべてを詰め込んでみました。規定となる40×25×20cmのサイズに何とか納まり、重量は4.6kgと7kgの制限も無事クリア。座席の下へ置くと足元は狭くはなりますが、追加の料金もかかりませんでした。東京〜香港のLCCでのチケット代は往復3〜5万円程度(諸税含む)。テント泊なので宿泊費はかかりませんが、持っていた香港ドルに加えて現金2万円を両替しました。他にスマートフォンにインストールしたオクトパスカードのアプリで400香港ドル分(約8,000円)をクレジットカードからチャージしておきます。余ったら次まで取っておきます。
何度となく訪れている香港のいつもの景色。香港国際空港からエアポートエクスプレスで中環(Central)へ行き、雲呑麺でランチをしてからアウトドアショップが軒を連ねる旺角(Mongkok)へ。飛行機の機内へ持ち込みができないガス缶と安価なペグ、トレッキングポールを入手しました。12月上旬の東京は冬の入口。本格的に冷え込み出す前でしたが、香港は昼間の気温が20度を超える暖かさ。まだ「秋が始まったばかり」という感覚。暑がりな筆者はTシャツとショートパンツで十分です。
地下鉄とバスを乗り継ぎ西貢(Sai Kung)へ。ここで水を2L購入。ザックの重さは7kg程になりました。マクリホーストレイルのセクション1はダム湖畔の舗装路を約10km歩くコースのため、今回は省略。セクション1の終わりにある東霸(East Dam)まで緑色のタクシーでワープしました(約30分、150HKD=約3,000円)。西貢半島の東側はユネスコに登録された香港ジオパーク(香港地質公園)。フォトヨドバシの「ニコン特集:Zな日々 - 使い込んでみての感想」の1枚目の六角柱状節理の崖のカットと14枚目(最後)の湖畔のカットはこの場所で撮影したもの。
万宜水庫(High Island Reservoir)と呼ばれるダム湖はハイアイランドいう島と西貢半島の間にあった海峡の両端にダムを建設して造られたもの。この写真は東壩から撮影したものですが、右奥に見えるのが西壩(West Dam)。
マクリホーストレイルのセクション1の終わりとなる東壩から歩き始めます。金曜日の平日ということもあり、人も少なく静かな夕方です。スタートしてすぐ、数百メートル歩いたところでセクション1が階段の途中で唐突に終わり、セクション2が始まります。ここからがトレイルの本番です。
時刻は17時をまわり日没が近づいてきました。ひと山超えて下りた海岸が浪茄灣沙灘(Long Ke Wan Beach)。美しい海岸ですが、海からボートで来るほかは、徒歩でアクセスするほかなく、もったいないほどに静か。ビーチはトレイルを歩く人に向けた無料のキャンプサイトにもなっていました。
ビーチを横断して再び登山道へ。距離にして5.2km、限られた日程を踏まえれば西灣(Sai Wan)まで何とか辿り着きたいところです。途中、西灣山のピークを超えます。たった314mの山とはいえ、海抜0mから登ればそれなりに登り応えがありますね。日没を過ぎ暗闇が迫る中、ヘッドランプの明かりを頼りに歩きました。登山道はコンクリート舗装や平らな石が敷かれたもの、乾いた土(校庭を思い出しました)等、雨の後でなければ歩きやすく舗装路用のスニーカーでも歩けそうなほどよく整備されていました。
日本の高所のような山岳風景とは異なりますが、遠くに海の見える山の風景もいいですね。これまで香港といえば人口密度の高い大都会の風景の中ばかり歩いてきましたが、実は香港も(日本と同様に)国土の半分以上は山間部が占める自然豊かな場所なのです。
西灣に着いたのは20時頃。海岸には無料のキャンプサイトが設定されていましたが、ふかふかの砂地では持参したワンポールテントが設営できないため、少し戻り海の家のようなBBQサイトの端にテントを張らせてもらいました。100HKD(約2,000円)を払いましたが、トイレや飲み物を扱う売店もあり、助かりました。ほとんど徹夜で日本を出てきたこともあり、テントを張り簡単に食事を済ませたら、シュラフに入ってすぐに寝てしまいました。
day 2 - 西灣〜鹹田灣〜赤徑〜北潭凹〜嶂上〜水浪窩
香港では仕事を終えて夜からキャンプへ行く人も多いそうです。朝起きたらテントが増えており、あちこちで朝食が始まっていました。香港のアウトドアショップでもフリーズドライやアルファ化米等のトレイルフードを入手できますが、ほとんどが輸入品のため価格は日本メーカー製のものが概ね2倍。トレイル中の食料は途中で調達できるかもわからなかったため、すべて日本から持参しました。この日は茹でたペンネにフリーズドライのミートソースを混ぜたもの。撤収したら売店で水を購入し2日目のスタートです。
静かな西灣の海岸。数張のテントがありました。白いビーチの端で草を食べる数頭の牛は野生なのでしょうか。この一帯は西貢東郊野公園となっていて、かつては中国との国境緩衝地帯として許可がないと入ることができなかったそうで、手つかずの自然が残っています。現在もジオパークの入口にはゲートが設けられ、東壩までの道路は徒歩を除けばタクシーまたは週末に運行されるバスでしかアクセスできません。
西灣を超え鹹田灣(Ham Tin Wan)へ。海岸から急な斜面を登っては下り、再び海岸へ。いくつもの白いビーチが連なる「香港のトレイルで最も美しい」といわれる風景が続きます。
ビーチを分断する川には、廃材で造られた簡素な橋が架けられていました。渡るのはなかなかスリリング!
鹹田灣の集落には茶屋もあり、水が調達できそうです。赤徑(Hek Keng)を経てセクション2の終わりとなる北潭凹(Pak Tam Au)までは6km、2時間15分程度だそう。集落を抜けると今度は深い森の中へ。アップダウンはさほどありませんが、展望のないくねくねとしたルートが続きます。週末の午前中という時間帯だからなのか、すれ違う人も多くなってきました。子供から年配の人までそれぞれが自分のペースで歩いています。むしろロングトレイルをスルーハイクしているような人はほとんど見かけません。
トレイル上0.5km毎に設置されている「Dustance Post」。このポストからコース名、ポストの番号、位置情報等を得ることができます。見つけやすく設置されているため、どのくらいの距離を歩き、あとどのくらいの距離が残っているのかが把握しやすく心の支えになりました。
ダイナミックな光景が広がる山岳部はもちろんですが、静かな海沿いのトレイルを歩くのも気持ちいいですね。
セクション2のゴール、セクション3のスタートとなる北潭凹へ到着。バスが通る道路と接しているため、ここからスタート・ゴールする人も多いようでとても賑やか。公衆便所やオクトパスカードで支払える自動販売機が設置されているため水分の補給も可能です。正午を迎えたため持参したお菓子で補給します。しっかり休んでからセクション3へ。(後編へつづく)
( Photography & Text : Naz )
今回トレイルを共にしたカメラは「ニコンZ 5」。組み合わせたのはZマウント唯一のパンケーキレンズ「NIKKOR Z 26mm f/2.8」。カメラとレンズを組み合わせた質量は800gとフルサイズミラーレスの中でも軽量級。またコンパクトで携行性が高く、ハードな環境でも安心して使える信頼性の高さもニコンを選んだ理由です。ストラップはクッション性がよいものを選び、肩から提げても腰骨の上にカメラが収まるくらいの短めの長さに調節しました。
写真左の書籍は、香港のトレイルを歩く日本人のバイブルとなる「香港アルプス・ジオパーク メジャートレイル 全ガイド」(香港郊野公園之友会発行)。初版発行は2010年と既に絶版となって久しいですが、古本を探して入手しました。4大トレイルを網羅しセクション毎に詳しく解説されているため、渡航前の計画立案に役立ちました。
( 2025.03.05 )
EVFを搭載したフルサイズミラーレスカメラとしては最軽量クラスのZ5。手頃な価格ながらも安心のニコン、ハードなアクティビティにも最適です。
NIKKOR Zで最小の広角レンズ。薄さ・軽さに加えて写りも造りも良好な1本です。
USBによる本体充電もできるため、軽量化も踏まえて今回は予備のバッテリーを持参しませんでした。何とか3日間保ちましたが、予備があれば安心なのもまた確か。
ハイキング中も含めカメラは常に出しっぱなしでしたら、雨や土埃の混入を防ぐためにフィルターを装着していました。カメラもレンズも精密機器ですから、着けていると安心感が違います。
一般的なアルファ化米の約半分の7分で調理可能なななこめっつ。軽量なため携行性が高く、ほんのり効いた塩味が嬉しい青菜ごはんです。
軽量で食べやすくカロリーも豊富。行動食にオススメです。
メリノウールは保温性がありながらも暑い時は涼しく着られ、速乾性が高く臭いにくい高機能なウェアです。着替えの枚数を少なくできるため軽量化にも繫がります。
ショートパンツは通気性に優れ、熱がこもりにくいため、春〜秋のハイキングに適しています。風通りがよく汗乾きもいいため、汗冷えを予防してくれます。
極上の履き心地と高いクッション性、そして「Vibram Megagrip」による抜群のグリップ力を両立させたトレイルランニングシューズ。もちろんロングトレイルの相棒としても最適です。
テン場でのサンダルが不要になる魔法の靴紐。サロモンのトレッキングシューズ用です。自己責任となりますが他のローカットシューズでも使用可能です。