PHOTO YODOBASHI
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山岳写真に憧れて
vol.10 2024年10月・月山編
10月連休の山形旅行。紅葉が見頃だろうと期待して、日本百名山である月山へ行ってきました。どんな山なのかまでは知らなくても、「月山」という名前と「がっさん」という読みは知っているという方も多いのではないかと思います。月山は山形県の中央部に位置する独立峰で、古くから山岳信仰の聖地として知られ「祖先の霊が鎮まる山」とも言われています。羽黒山(414m)、月山(1,984m)、湯殿山(1,504m)と3つの山を合わせて「出羽三山」と呼ばれ、主峰である月山の山頂につくられた月山神社本宮は推古天皇元年(593年)に開山。明治維新後の近代社格制度では東北地方で唯一の旧官幣大社として、広く信仰を集めているそう。
日付けが変わる前に都心を出発。東北自動車道〜山形自動車道経由で姥沢駐車場へ着いたのは夜明け前の4時半。半分ぐらい埋まった枠に車を駐め、リフトが営業開始となる8時まで仮眠します。なんと目が覚めたら満車となっていました。リフトに乗った場合のコースタイムは往復で5時間程度。ハードなコースではないようなので装備も軽め。小さめのザックには防寒具と昼食のおにぎり、行動食のお菓子等を入れ、カメラを手にしていざ出発です。駐車場の至近にある月山スキー場は、その豊富な積雪量から4月上旬〜7月末まで営業する夏スキー専門の珍しいスキー場。冬季はリフトの営業運転をしていませんが、スノーモービルやクロスカントリースキーなども楽しめるそうです。
( Photography & Text : Naz )
駐車場から歩いて10分。急坂を登り、リフトに乗ります。東京に比べれば気温は低くなりますが、この日は風も弱く穏やか。抜けるような青空の下でのんびりリフトに揺られ標高を稼ぎます。
リフトを降りたところは標高1,505m。森林限界を超え素晴らしい眺望にテンションが上がります。晴天の予報、いい風景を写真に撮れそうなことから、中判デジタルの「Hasselblad X2D 100C」を持参しました。レンズは軽量・コンパクトな広角レンズ「XCD 4/45P」を選択。普段使っている35mmフルサイズと異なり縦横比3:4のやや縦に長いフレームです。
歩き始めて15分ほどで姥ヶ岳の山頂(=うばがたけ、1,670m)へ。その奥にそびえるのが月山の頂。この場所から標高差にして300m程度ですが、思いのほか高く感じます。
前半は緩やかなアップダウンの続く気持ちのよいルートが続きます。100MPの原寸画像を用意してみました。登山道の賑やかさがよくわかります(画像のクリックで表示します:89.3MB)。
姥沢コースは歩きやすく眺望が素晴らしいものの、直線的なルートとなるため見える景色はだいたい同じ。写真的には少々変化に乏しく、同じ山容を捉えたフレームとなりがちです。見方を変えれば常にシャッターチャンスがある、といえるのかもしれません。
やはり人気の山。紅葉のベストタイミングということもあり、斜度が一気にキツくなる最後の斜面では渋滞もチラホラ。譲り合いながらゆっくりと歩みを進めます。
山頂の手前は平らな地形となっていて、池や建物が点在しています。山頂の湯殿山神社本宮に参拝しましたが、開山期間は7月1日〜9月15日とのことで、既に閉山していました。
標高2,000m近い高所。ひんやりとした風が吹き、空と雲が近く感じます。大きな岩に腰を下ろし、持参したおにぎりを頬張ります。
多くの人が同じ時間から登り始めているため、下山のタイミングもだいたい同じ。登山道を下る人が一気に増えます。写真奥の稜線沿いのルートで登り、左側の斜面にあるルートで下山しました。
秋の陽射しに浮かび上がる山肌と陰影が美しく、何度となく足を止めシャッターを切ります。この日は遠くが霞んでいましたが、庄内平野の向こうに日本海や秋田県境の鳥海山も望むことができました。
持参した単焦点レンズ(XCD 4/45P)はフルサイズ換算36mm相当。同じ画角だけだと似た画になりがちです。普段は単焦点レンズを好んで使っていますが、レンズ交換せずに多彩な画角を選択できるズームレンズの偉大さを登山の度に痛感します。それでも敢えて単焦点レンズを選ぶメリットがあるとすれば、小さく軽く安いこと。そしてフレーミングで悩まないことでしょうか。こちらも原寸サイズをどうぞ(画像のクリックで表示します:74MB)。中判デジタルの圧倒的な情報量、撮影した本人も「ここまで写るのか」と驚きました。
紅葉もさることながら、光線状態を含め目にする光景はその時だけ。まさに一期一会です。
フレーム内に人物を入れてみると、スナップ的な山岳写真になる気がします。風景的な山岳写真もいいですが、こういうのも個人的にはよいなあと。
蛭ヶ岳の巻き道伝いにリフト乗り場へ戻りました。湿地帯のため歩きやすく整備された木道が続きます。リフトを降りて駐車場へ戻ればゴール。のんびり休憩多めで片道3時間、往復6時間の山行となりました。秋深まる季節ということもあり、朝から登っても下山は夕方近く。平坦に近い登山道を長く歩くため、500mに満たない獲得標高からイメージするよりも時間がかかります。月山へアクセスするルートは今回の姥沢ルートのほか、西側からの湯殿山ルート、北側8合目駐車場からのルートなど複数あるそう。
普段のソロハイクは黙々と歩きがちですが、素晴らしい眺望の中、妻と2人時には励まし合い、会話を楽しみながらのハイキングは楽しいものでした。後で知りましたが、2024年秋のリフト営業は(連休最終日の)10月14日(月)まで。リフトを使って登れる最後の週末だったわけですから、混んでいたのも当然ですね。機会があれば、今度は開山期間中に登ってみたいです。
( Photography & Text : Naz )
( 2025.01.23 )
33×44mmセンサーを搭載した中判デジタルですからそれなりのボディサイズとなりますが、少し大きいフルサイズミラーレスカメラや一眼レフと同等サイズまでダウンサイジングされているため、ハンドリングは意外といいです。1億画素の画はもちろん圧倒的。
X2Dと同じ100MPのセンサーを搭載しながら、ハッセルブラッドらしいウエストレベルのトラディショナルなスタイルで撮影ができる907X。X2Dと比べてもコンパクトなボディサイズです。またデジタルバックとしてVシステムのボディにも装着可能。
記事で使用したXCD 4/45Pは販売終了となりましたが、軽量・コンパクトで近い画角のレンズはこちら。フルサイズ換算30mm相当、AFも高速となりました。
XCDレンズ最軽量の広角レンズ。軽量かつコンパクト、価格も手頃な1本です。