PHOTO YODOBASHI
ヨドバシカメラ公式オンライン写真マガジン
天空の景色に魅せられて
真夏と真冬、北海道・旭岳の景色
ロープウェイを降りてしばらく歩くと、そこは天空の回廊。
ハイマツ植生帯を超えると、雪渓がお出迎え。ここは一体何処だろう。
冬の間に厚く降り積もった雪が解けて山に息吹を生み、地下に染み渡った命の水は麓を潤し、やがて海へ。
真夏に雪の上を黙々と歩く。
冬の間は、雪がすべてのものを埋め尽くして頂までそれが連なる。
冬季の旭岳は、厳めしく、美しい。
写真の記載の通り7月のカット。雪のない期間が年間で3ヶ月程度しかないからこそ、撮るのが面白い場所。
こちらも7月のカット。山の天気は変わりやすく一気に張り出した雲の中では季節感を失う。
雪のない時期には近づけない噴気口もすぐ側まで近寄ることができる。なかなかお目にかかれないシチュエーション。
自ずと然なり、ただ抱かれるのみ
1年を通じて4度、旭岳に登ってみました。登ってみたといっても山頂を目指すわけではありません。ロープウェイで一気に標高1600mへ。ここは北緯43度、もうその時点で普段の生活からはかけ離れた景色が広がります。そもそも北海道は冬が長く、さらに標高が上がればなかなか体験し得ないロケーションに身を置くことになります。ファインダーを覗く者にとって目に見えて新鮮な光景を見ることは、写真の本質を思えば当たり前の話ですがこの上ない喜びなのです。そして、ともかく美しく、面白い。高緯度かつ高い標高は、どこかスコットランドやニュージーランドに似た景色を見せてくれます。また山の上は天候が変わりやすく、いろんな表情を見せてくれます。
山が遠くに見えるペンションのリビングで今年は残雪が多いとは聞いていました。しかし真夏の7月半ばに、実際に雪渓を歩くわけです。麓は気温30度近く、山の上もそうさほど変わりはないでしょう。ほんのりと冷気が立ち昇る硬く絞まった雪は小刻みに足を滑らせ、体力を削ぎ、頬に汗を伝わせます。自分の鼓動が木霊する以外は、かすかに遠くから噴気音が聞こえてくるのみ。そこで見る景色、感じる景色。つくづく生の経験の前には、見るもの聞くもの、太刀打ちできないものだなと感じます。
「自然」とは、ある場所へ訪ねていくような感覚があるかもしれません。そう、まるで観光地に出向くように。いや違うなと。そもそも人も街も国も自然の上に在るわけで、半径20m程度の日常感覚から勝手に「自然」なんて区分けてるんだなと。ここは一体何処なんだ。運動不足が祟って上がる息に棒のような脚、そしてぐうの音も出ないような圧倒的でひたすら大きな景色に包まれると、まさに手偏をつけて我々は抱かれているのだなと思わされるわけです。この感覚はなんとも言い表しようのない満ち足りた心持ちにさせてくれます。だからこそ山頂を目指すわけでもないのに4度も訪れたのだろうと思います。
こんな景色を見せられると、さすがに山登りそのものにはさほど興味のなかった我々もなんとなく道具を買い揃えたり、本腰になってくるものです。そのあたりの顛末を記事にまとめています。よかったらぜひご覧ください。
2021年夏・旭岳ハイクこぼれ話
「なんてことでしょう」案外使い回せる登山道具たち。揃うとその気になる、物から入るグータラ編集部員の珍道中。
2020年冬・旭岳ハイクこぼれ話「素人バックカントリー列伝」
スノーシューから始まった雪山撮影散策のツール探し。経験ゼロでバックカントリースキーに興味!? 板買っちゃった。。。
( 2021.08.18 )
今回のロケで連れて行ったカメラたちはこちら
映像も写真もコレ1台でOK。編集部Kの愛機。
まさにこの組み合わせで出かけました。すごく気に入ってるレンズです。F2.8通しのほうも持っていますが、コンパクトで文句のつけようのない写り。山ロケにはうってつけ!
Z IIの愛機がこちら。いまも十分な戦闘力!EOS R5を狙うものの、度重なる新規ローンと物欲の前に連敗中。
子供の運動会用にと手に入れたレンズも、いつの間にかフレームに収まるのも嫌がりだして、編集部で酷使され続ける逸品。(※EOS Rでご使用いただくにはEF→RFのマウントアダプターが必要です)