PHOTO YODOBASHI
ヨドバシカメラ公式オンライン写真マガジン
2020年あけましておめでとうございます。皆様どんなお正月をお過ごしになりましたでしょうか。今回のメシ撮り道場は日本の多くの方がお正月に食べるであろう「お雑煮」をお題にして、新年の最初を飾りたいと思います。餅ろん写真に正解はありません。大事なのは撮る際の気持ちや心。本記事によって、たとえスマートフォンのカメラでも伝わり方に違いが出るのだと気づいていただければ幸いです。その小さな工夫は、ちゃんとしたカメラで撮るときにはもっと大きな違いになります。
( Text by Z II )
お題「お雑煮」
#1 - iPhone XS
関東地方のお雑煮ですね。なるほど相当な意気込みや熱い想いが伝わってきます。餅の焼き加減や具の配置に光の使い方、湯気もしっかり出ています。盛り込める要素をふんだんに盛って、一見完璧な写真ですが完璧に綺麗にまとまりすぎて、違和感というか理想に走りすぎたかなという感じを受けます。肩の力が入りすぎましたね。スマートフォンで撮ることの手軽さや日常の一コマのようなほんの少しの雑味も盛り込めるとよいかもしれないですね。
#2 - iPhone 11 Pro Max
東北風のお雑煮です、餅が見えないくらいのもりもりの具沢山が伝わってきます。具の配置や彩りは良いですが、光の感じをもう少し工夫できたのかなと思います。あくまでも主観ですがお雑煮は朝だと思うのですよね。新年の朝という時間帯を匂わせることや背景が少し寂しいかなと思いました。
#3 - iPhone 7 Plus
島根県隠岐地方の、茹でた丸餅に炙った岩海苔を乗せるだけのシンプルなお雑煮。島特産の香り高い岩海苔がお出汁に溶けて餅に絡んでいます。ポイントは透き通った熱々のお出汁、乗せたばかりの炙り岩海苔の表情を見せられるようにアングルと光、撮るタイミングを計算していますね。おわんの数やサイズ違いで家族構成なども見えたり、なぜか包丁の柄が写り込んでいたり台所で慌てて撮ったのが伺えます。
#4 - iPhone SE
こちらは関東風の焼いた角餅に小松菜、里芋。奥に見えるのはなんでしょう? さりげなく背景におせちの重箱が写っていたり、ひょろっと申し訳程度に三ツ葉が乗っていたり所々に意図を感じます。ただ主役のお雑煮は特別なお祝いのハレの食べ物であるので、盛り付けを整えてあげるとよかったのかなと思います。
#5 - Google Pixel 3
こちらも関東風のお雑煮です。透き通ったおすまし系の出汁にいろんな具を見せつつ、背景はお正月らしく赤にしましたね。大変わかりやすい写真ではあるのですが、お雑煮への想いとかクスッとさせる何かを背景に入れてもよいかもしれません。また目が覚めるようなカリッとした写りは、おそらくこのカメラの設定でコントラストやシャープネスが高めなのだと思います。
#6 - iPhone XR
白味噌仕立ての京風の雑煮です。上品ではあるものの、主役である餅の主張が弱いのかなと思いました。例えば、おつゆの量を少なめにするとか、餅を後からそっと載せるなどぽっかりと丸餅が浮かんでたらおもしろい写真だったかもしれないですね。
#7 - iPad Pro
一見、関東風のようですが味噌のおつゆのような、ミックスしたお雑煮ですね。自然光をうまく使った柔く綺麗な写真です。餅の焦げ具合や、つゆにしずみすぎないようにそっと餅を浮かべたところに工夫を感じます。真俯瞰からのアングルも潔いですね。日付を入れるところはアプリを使ったのか昭和のネガカラー時代を匂わせています。
#8 - iPhone XR
関東風のお雑煮。湯気こそないものの日本のお正月という感じの背景が良いですね。おそらくですが、お題が「雑煮」であることから全体的に似た画像が続くはずだから、少し変えてシーンを撮ってみようという意図さえ感じます。きれいにまとまりながら、さりげなさが絶妙ですね。
#9 - iPhone 11 Pro Max
こちらは九州のお雑煮。名産の椎茸や鶏肉のかげに隠れるように丸餅が見えます。朝の柔らかな光と湯気に、余白が良いですね。トリミングの仕方一つで写真が引き立つのが分かります。
#10 - iPhone SE
今回ゲストとして特別に寄稿いただいた510さん。「うっかり食べてしまった」とおっしゃっていましたが、ほぼ間違いなく狙いだろうと推測します。お神酒はシャンパンで、美味しく楽しく祝った元旦を想像させる一枚ですね。
さりげない脇役が、主役を引き立てる
様々な地域のお雑煮が見られてとても面白い回になりました。冒頭でもお伝えした通りスマートフォンのカメラでも、意図や工夫で人に伝わる写真になり得ることが、なんとなくわかっていただけたのではないでしょうか。今回のようなシンプルなお題では「そのものを美しく映えるように撮る」のはもちろんですが、それプラス脇役や背景にも気を使っていくとよいと思います。やり過ぎるとくどくなってしまうので、その塩梅にはご注意を。さりげなく主役を引き立てる工夫ができれば、グッと撮影の幅が広がると思います。
背景や脇役にも気を配ろう。
( 2020.01.16 )
比較的コンパクトな杵と臼のセット。雑煮の主役は餅です。
村の人手が足りないなら、現代的なソリューションもあります。
1升も要らないお家なら、切り餅のマスターピースをどうぞ。
あたりまえは一つじゃない。お雑煮ひとつで文化の多様性に気づくことができます。