PHOTO YODOBASHI
ヨドバシカメラ公式オンライン写真マガジン
スマートフォンを使って食べ物を撮る、という本企画。続きましてのお題は「グラスに入った飲み物」です。前回と違うのは、お題の対象が広いということ。要するに液体ならなんでもよいので「被写体選び」もポイントになると思います。編集部の中には無類のバイク好きもいてエンジンオイルなどを撮って来かねませんので、飲み物という縛りにしてみました。もちろんカレーもダメです(笑)。さて今回も編集部員それぞれの個性が出て大変興味深い作品となっています。
( Text by Z II )
お題「グラスに入った飲み物」
#1 - iPhone XS
奇をてらわない素直な作品です。変に傾けることもなくまっすぐに構え、背景を白にしたことで真水であることがよく伝わります。氷のツヤが出るように光の方向も計算されていますね。ちょっとしたことの積み重ねで、たとえスマホで撮るにしてもクオリティが上がることがわかります。この写真の主役は何かと聞かれれば誰もが「グラスに入った水」または「水の入ったグラス」であると言うでしょう。
#2 - Huawei P10
こちらも真水。ファーウェイの話題の画質もさることながら、ポイントはグラスを少し上目から覗き込むアングルと大胆な切り取り方です。見せたいものだけを画面に入れることで何を撮りたいのかが強調されますね。余計なものは画面に入れないということと不純物が混入していない純水であることとが掛かっているのかな?というのは私の考えすぎか。こちらも主役は「グラス」「水」「氷」ですね。
#3 - iPhone 7 Plus
これは独特、グラスを写していません。ぐっと寄れるのはスマホの強みでもあり、その中でストローとミントをバランスよく写しこむあたりがうまい構成です。これだけ切り取ると何を撮ったものなのかわかりにくくなるものですが、アイスティーだと想像がつくのはどういうわけか。主役は「色」という感じがしますね。何はともあれアイスティーに飛び込んじゃいたいくらいの気持ちが画面いっぱいに溢れています。そういう気持ちで撮ることも大事じゃないでしょうか。
#4 - iPhone XS
こちらも同様に大胆に寄って切り取ったものですが、映えるを通り越してもはやアート作品になりました。写したものはコーヒーなのですが、主役は「泡」でしょう。宇宙なのか生命なのか闇なのか、そんな壮大なものを感じさせる一枚になりましたが、メシ撮り道場の趣旨からは逸脱しておりますね。何を撮ったのかがわからないと伝わりません。
#5 - ASUS ZenFone5
こちらもお題通りに撮影されたものですが、写し方によって主役が変わってくるのが面白いですね。この写真なら「グラスについた結露」に目が行くでしょう。
其の一で「被写体を置く場所の光を意識」的なことを言いましたが、撮影者は直射日光の入る窓際を選んだのでしょう。はっきりとグラスの影が写り、コントラストが強くインパクトのある写真になりました。ただし写真のようにハイライトがぶっ飛んでしまい、質感を表現できないこともあります。直射光は非常にパワーのある光ですので扱いが難しく、意図的でなければ避けたほうがよいかもしれません。例えば向かいのビルに反射した光が入る窓際を選ぶとか、北側の窓から入る光でも十分使えます。#1の写真と比べてみれば、影の具合で光の違いは歴然ですね。大変良い例になったのではないでしょうか。
#6 - iPhone SE
こちらの作品は「ビールの泡」が主役。特に左右の余白を均等に切り取っていることに注目したいですね。このようにスマートフォンで写すには、スマートフォンのレンズがどこにあるかを意識していなければいけません。そうしてグラスの上のふちの高さの位置にレンズを持ってきて、左右均等になるように構えるわけです。このように撮影したことで、泡の立ち上がりのカーブから頂点までがくっきりと浮かび上がる写真となりました。光の選び方も良いですね。柔らかい光で泡の質感がよく出ています。
このあと口をタコのようにして飲み、鼻の頭に泡がつくところまで絵が浮かびますね。
#7 - iPhone 7 Plus
これは私、Z IIの作です。iPhone 7 PLUSのポートレートモードで撮っています。暗いせいか自動で感度が上がってしまい少々ざらついた描写になっていますが、これはこれでよい雰囲気だと思います。
ポイントはパースがつかないように構えたこと。グラスを真ん中にドンと配置して、グラスの縁のあたりの高さにカメラを構えて、水平垂直を意識して撮っています。また、左側と後ろから照明が差し込むような場所にグラスを置きました。グラスの立体感とビールの色をきれいに出したかったからですね。背景が暗いことで被写体が引き立っているのも良いと思います。ただ惜しいですが次点です。
#8 - iPhone 6
今回のベストメシ撮りッサーはこちらの作品です。非常に計算された光と構図にアングル。メシ撮りに対する並々ならぬ熱量を感じますね。
ポイントは主役である「ドライマティーニ」の見せ方。カクテルグラスの脚を見せつつ画面に余計なものは何一つ入れず、切り取り方が絶妙です。コースターの色とオリーブの色、液面に写る照明がクールです。まさに静かな大人の夜を感じさせます。
真剣に楽しむ。
どうせ遊びだからと半端な気持ちで臨むことなかれ。「真剣にやれよ!仕事じゃねぇんだぞ!」というタモリさんの名言があります。今回のテーマでは、その言葉どおり真剣に遊ぶ気持ちが写真からにじみ出ていた作品に軍配が上がりました。とはいえ少しテクニック的な話をするなら、まず主役は何なのか、グラスなのか泡なのか中身なのか、それを飲んでいる時間なのか、そういったことをはっきりさせてからカメラを構えてみましょう。そして水平を意識するか、少し上めから覗き込むか、画面を少し傾けるかなど、いろいろ試してみて自分が伝えたいことが伝わりそうな写真が撮れたらオッケーだと思います。答えは自分の中にありますので好きに撮ってみるのがよいでしょう。
この「真剣に遊ぶ」はスマホだろうと一眼レフだろうと共通することなのだと思います。遊ぶ時にも本気で、ということがいい写真につながるのかもしれません。
主役は何なのかハッキリさせよう。
( 2019.01.07 )
安くて頑丈なグラスの大定番。1ダースぐらいあると助かります。
ピカルディよりモダンなプリズム。光の通し具合が変わって楽しいです。
お水でいい。年齢を重ねてそう思うようになりました。
実はビールも取り扱いがございます。ヨドバシ・ドット・コムを便利にご活用ください!