PHOTO YODOBASHI
ヨドバシカメラ公式オンライン写真マガジン
料理の写真を撮ったことはありますか? スマートフォンが普及して、撮った写真をすぐにSNSにアップできるようになりました。思わず誰かにシェアをしたくなる、最もポピュラーな被写体といえば「料理」ではないかと思います。とびきり美味しいものだとか、ほれぼれするような盛り付けだとか、旅先で出会った名物料理だとか、感動があれば写真に収めたくなるのが人情でしょう。しかし、その感動をうまく写し取れた時もあれば、うまく撮れなかった時もあるのではないでしょうか。カメラの使い方に慣れている人でも「スマートフォンで写真を撮る」というのは結構難しいものです。
本企画は「スマートフォンを使って、どうやったら食べ物を映えるように撮れるか」を追求してみようというものです。題して「PYメシ撮り道場」。PY編集部員にお題を与えて好きなように撮ってきてもらい、その結果を見ながら検証していきます。使っていいのは携帯電話に内蔵されたカメラだけ。アプリなどで補正したり、切り抜くのは自由です。
( Text by Z II )
お題「ミラノサンドA」
道場1回目のお題は、ドトールコーヒーの定番メニューである「ミラノサンドA」にしました。全国各地に店舗があり、誰もが目にしやすいメニューだと思ったからです。しかし食べることに特別感もないので、あまり写真に撮ろうとか、SNSにアップしようと思われないのではないでしょうか。それゆえに皆、頭を捻ることになると思います。映えるように撮ろうと思うなら、ただ置いて撮れば良いというものではない。さてどんな写真が集まったのか、さっそく見てみましょう。
#1 - ASUS ZenFone5
少々古いタイプのスマートフォンで撮ったせいか質感の描写はもう一つ。それに迷いが晴れぬうちにシャッターを切ってしまった感じを受けます。
#2 - iPhone X
形状、質感、厚み、内容食材全てをそつなく撮し込んでいます。ミラノサンドAらしさの象徴であるビーフパストラミと生ハムのボリューム感がいいですね。背景のトイレ待ちのお客をあえて入れるというのは偶然かこだわりか。
#3 - iPhone 6
さりげなさの中に、いろんなテクニックが散りばめられています。まず光の選び方ですが、あえて窓際に席を取ったことがわかります。窓からの柔らかな自然光が少し堅めのパンの歯ごたえまで感じさせる描写につながっています。ビーフと生ハム、シャキシャキのレタスの質感もよく出ていて、素晴らしく映える一枚です。
#4 - iPhone 7 Plus
一つのお題に対して色んな切り口があるものです。ミラノサンドAをこういう見せ方で表現したのは面白い。同じように撮った被写体が並んでくると、さらに面白いかもしれないですね。
#5 - iPhone 8 Plus
一方ここからは、少々方向性が逸れてしまった方達を紹介します。もちろん写真の表現は無限ですので、決して間違いではありません。しかしお題はミラノサンドAを映えるように撮る。想像の斜め上をいくといえばよいでしょうか。題名は解体新書。
#6 - iPhone SE
こちらは、ある意味最優秀作品です。店内最深部と思われる、どんと暗く落ち込んだ壁にすぅっと浮かび上がったのは喫茶店で見かけそうな男性客のシルエット。それとは対照的に明るく陽気なミラノサンドAが秀逸。しかし「ステキに美味しそう」からは逸脱している。
#7 - iPhone 7 Plus
こちらは奇をてらいすぎた失敗例。私の作品です。がぶりとかぶりついている画をイメージして娘を連れて行ったのですが、レタスが苦手でハムだけ抜いて食べるというひどいシーン。もちろんこの後ハム無しのミラノサンドはZ IIが美味しく食べました。
※子どもを使うのは反則だ!と批判が殺到したため、以後禁止ということになりました。
奇をてらわず素直な気持ちで。
実は今回の「ミラノサンドA」は、なかば試験的に編集部員にお題を出したものなのですが、意外というか予想通りというか、ちょっと面白かったのでそのまま載せてしまいました。今回の最優秀作品は#4。食材への感謝と調理をした人へのリスペクトを感じます。そういう気持ちが撮影技術と融合して良い写真につながるのかもしれないですね。この写真で参考にしたいことは、光を意識するということ。お店に入ったらまず良い光の席を探し、その席に座るところから撮影が始まっているということです。今日から試せますね。
というわけで結果「ステキに美味しそう」から少々ズレてしまって「面白く遊んじゃおう」に走ってしまう人も出て来ましたが(もちろんそれも面白いのですが)、そこはPY編集部員ですので、真剣にがっぷりと「ステキに美味しそう」または「真似したい」というような写真を目指して、次回から精進していきたいと思います。
被写体を置く場所の、光を意識しよう。
( 2018.12.26 )
パンをカットするなら専用のナイフがおすすめ。ざっくりとした斜めのカットが、ミラノサンドを完成させます。
スマートフォンで撮影するときに、まず試してほしいのはレンズの曇りを取ること。クリーニングクロスは常備しておきましょう。