PHOTO YODOBASHI
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中野区立中野本郷小学校
PY: この、路地の行き止まりに正門がある、という佇まいは今見るといい感じですね。
510: 転校してきた時は、なんて狭い学校なんだと思ったね。校庭も土じゃなくて、アスファルトのようなものだったし。なんだか東京っぽいなと思った。
PY: 私も神奈川の奥地からの転校生でしたから、同じことを感じました。ここは都内の小学校としてもかなりコンパクトな方だと思いますよ。
510: ここにね、私が撮った当時の写真があるんだけど。
PY: おお、校舎の半分だけまだ木造ですね!
510: NBさんの時にはもう・・・
PY: はい、もう今の状態でした。へええ、こんなだったんですね。これもフジペットで?
510: そう。ところでこの小学校の出身者には有名人はいないの? 岩城滉一さん以外に。
PY: 相撲の藤島部屋が中野新橋にできて、当時まだ小学生だった若・貴兄弟が通っていました。私はもう卒業した後でしたが、「すごく体が大きい兄弟がいる」って、妹が話していたのを覚えています。
510: ちいさな小学校に、後の大横綱が同時に二人。中野すごいね(笑)。
鍋屋横丁商店街
都内に現存する古い商店街としては有名な部類ではないでしょうか。愛称は「なべよこ」。そもそもは現在の杉並区堀ノ内にある妙法寺への参拝道として発展し、名前の由来は青梅街道からの曲がり角にあった「鍋屋」という茶店。江戸初期の話です。510少年が暮らしていた頃はたくさんの商店が軒を連ね、とても賑わっていましたが、さて、今はどうなっているでしょうか。
510: ああ、ここはだいぶ雰囲気が変わったなあ。
PY: ですね。
510: 寂れたというのではなくて、きれいになってる。
PY: 小さな店がズラーっと並んでいましたけど、それが軒並みマンションになっちゃってるんですね。
510: そのマンションの1階部分が引き続き商店になっている作りが多いね。
PY: マンションを建設する時に、歩道部分を拡幅したんですね。すごく開放的で、おしゃれ感すらある。ないか(笑)。
510: でも、マンションが建っていないところは、昔のままだったり。
PY: 新しいところと、昔のままのところが交互に出てくる感じですね。
510: 昔のまま営業している店が結構あるように見えるけど?
PY: あのケーキ屋さんは昔からありました。あの文具店も。さっきのテーラーも。
510: よく覚えてるね。
PY: ぜんぶかつての同級生の家です。みんな元気かなあ。
510: 新しく作り替えても、ちゃんと商店街として機能させ続けようと、とても努力されていることが分かるよね。
PY: 510さん、なべよこにはどんな思い出が?
510: 母親が僕に服を買ってきてくれたんですよ。いわゆるジャンパーを。
PY: はい。
510: それが安っぽくて、ダサい柄でね。一発で「それ、なべよこで買ったでしょ?」ってバレちゃうみたいな。
PY: イメージつきます(笑)。
510: せっかく買ってくれたものだから仕方なく着るんだけど、家を出た途端、すぐに裏返してた。恥ずかしくて。で、帰りに家の玄関の前でまた表に戻して。
PY: 思春期ですねえ。
510: 一度、表に戻すのを忘れて家に帰っちゃってね。母親に「アンタ、それどうしたの?」って。
PY: (笑)それで、どうしたんですか?
510:「え?何?・・・あれっ!」って、下手なオトボケをした筈です。
「ときのん」で反省会
その後、ゆるゆるとJR中野駅まで歩き、中野区立四季の森公園、中野ブロードウェイを散策したのち、中野の有名な写真機居酒屋ときのん(正しくは「tokinon 50/1,4」という屋号のお店です)で反省会。そういえば510さんは昨日もこちらに来ていたとのことで、二日連続のときのん詣でとなったようですが。
510: 二日連続ぐらいなら時々ありますよ。僕のレコードは2015年で、1年間に31回来ました。
PY: ホントですか? すごいですね。ご自宅、船橋ですよね?(笑)
510: ご覧の通り小さな店だけどね、だからこそなんだろうな、居心地がいいんだよね。しかも酔っ払っても電車一本だから安心。ときどき寝過ごして遠くまで行っちゃうけどね。年に31回はすごいでしょ? 週に1~2回ペース。カツサンドがここの名物なんだけど、それだけ続くとさすがにね。そんな時に店主が気を利かせて作ってくれた焼きうどんが、涙が出るほど旨かった。
PY: テーブル席は大きめのが一つだけですから、否が応でも相席になりますね。
510: でもここに来るのはみんな写真好き、カメラ好きだからね、共通の話題しかない(笑)。自然に盛り上がる。
PY: ここで写真展もされているんですね。
510: 肩肘張らない感じがいいでしょう? 額装なんてしませんよ。ぜんぶプリントを直接テープで留めてるだけ。
PY: すべての壁面にびっしりと。っていうか、天井まで(笑)。
510: あとはもう、床しか残ってないね(笑)。
PY: さっき寄った四季の森公園、私は初めて行きましたが、いいところですね。市民の憩いの場という感じが。あの広大な場所は、かつて何があったところでしたっけ?
510: 警察大学校です。さらに遡ると、徳川綱吉の生類憐れみの令によって開設された「中野犬小屋」の一部だったそうです。
PY: あれで一部。すごいですねぇ御犬様。ブロードウェイも、実はじっくりと回ったのは今日が初めてでした。
510: 濃いよね。
PY: ホントに、お好きな人なら一日中楽しめますね。オタク系の外人もいっぱいいました。そうかと思えば、ぽつんぽつんと、普通の会社や歯医者さんが入っていたり。
510: まさにカオス。
PY: さて、懐かしの中野を歩いてみましたが、どうでしたか?
510: まず、「あんまり変わってない」というのが嬉しかったなあ。もちろん、時間が経っていろんなものが新しく作り替えられているんだけど、そこに息づくものは変わってないという感じがした。それが収穫。
PY: お住まいがあった場所を、じっと眺めている後ろ姿が印象的でした。
510: かつて自分が暮らした場所って、今でもあるわけでしょ。
PY: いろいろ変わっても「場所」は無くならないですからね。
510: 場所はあるんだから、行こうと思えばいつでも行ける筈なんだけど、なかなかそういう機会ってないよね。日々の忙しさにかまけてしまって。建物が残っているならまだしも、残っていなければなおさら。
PY: まさに私がそうです。
510: でも、こうやって実際に思い出の場所を訪ねてみると、建物は残っていなくても、いろいろと感じるものがあったなあ。その土地が持っている力とか、土地が醸す雰囲気みたいなものって、ウワモノに依らないんだろうね。それにじっと眺めていると、かつての家が浮かび上がってきて、やがて子供たちが走り回り始めて、おや? あの子は僕じゃないか? みたいな(笑)。この歳になったからこそ、そんな風に感じられるようになったのかもしれないけど。
PY: おすすめですか?
510: みんなもやった方がいいですよ、かつての自分に会いにいく旅(笑)。