PHOTO YODOBASHI
ヨドバシカメラ公式オンライン写真マガジン
LEICA VARIO-ELMARIT-SL f2.8/70-200mm ASPH.
ライカSLシステム対応となるF2.8通しの望遠ズームをご紹介します。望遠域では使用頻度の高い70-200mmをカバーしながら、大口径F2.8の明るさでより高速なシャッター速度を選択することができます。また、一般的な望遠ズームよりもはるかに大きくぼかすことで、ある程度の距離からでも被写体を浮かび上がらせ、表現に深みを与えることもできます。本レンズは球面レンズ3枚を含む15群20枚による贅沢なレンズ構成で、ズーム全域で高い描写性能を実現。インナーズーム、インナーフォーカスの採用により焦点距離やピント位置に関わりなく全長が不変で、扱いやすくなっているのも特長です。高い防塵防滴性能はもちろん、オール金属製とすることで組立精度を向上させ、使用環境を問わず光学性能を盤石にしているあたりにもライカらしいこだわりが伺えます。ルックスも往年のRマウントを彷彿とさせる雰囲気で、そそりますよね。気になる写りはいかに。ご覧ください。
( Photography & Text : TAK )
まずは望遠200mm端開放から見ていきましょう。背景までかなり離れていたことを差し引いても、とろけるような美しいボケです。対するピント面はシャープに立ち上がり、アウトフォーカスからスッと浮き出てくるので立体感があります。このボケ味と切れ味のバランスが絶妙で、まさに「ザ・望遠大三元」の写りです。玉ボケの形状が周辺に向かうにつれて変化していく様は、「隅々まで真円」でも驚かなくなった昨今にあって逆に安心感を覚えます。手ブレ補正も強力で、1/30秒でもセーフでした。
お次は広角端70mm開放、最短撮影距離0.65m付近です。焦点距離が短くなる分ボケ量は減りますが、うるさくなりがちな背景もうまく料理してくれました。特にちょっと滲んだような感じが味わい深く、個人的にかなり好みです。ピントは相変わらずシャープ。赤の描き方も良好ですね。
前ボケも良い塩梅です。焦点距離は189mmを示しております。その場を動かずに一瞬で構図を変え微調整できる利便性もズームならでは。もちろん絞りはF2.8のままなので、作画に集中できます。
圧縮効果とボケをどう共演させるか。その選択肢を本レンズは与えてくれます。開ければピント面を浮き立たせることができ、絞れば背景までフォーカスが行き渡り圧縮効果を全面に押し出すことができます。いずれを選ぶにしても、このキレ味がなければ成立しません。
山にピントを合わせましたが、遠距離の描画も開放から文句なしです。しかもこれだけの距離にもかかわらず、手前の林はぼけています。ピント抽出力に秀でたレンズですね。
逆光でもノープロブレム。フリンジはもはや皆無で周辺減光もよく抑えられています。光線状態に気を遣う必要がないレンズは頼り甲斐があります。
ほんの少し絞って手前の花のみを被写界深度に収めました。やはり雑多な背景のボケ方が素晴らしく、つい遊びたくなります。肉眼では見えない油絵のような世界が一瞬で写真にできるなんて、どう考えても楽しいじゃないですか。
ライカで流し撮り?いけます。レンズ本体に手ブレ補正機能の操作パーツはありませんが、効き方はスマートで動き物にも対応することができます。70-200mmは余計なものを排除しやすい焦点域ですが、70mmだとそこそこ望遠が効いていながらもある程度の広さも保つことができます。この応用力が広く支持される要因の一つなのでしょう。実際これ一本で撮り切れてしまうものだなあと改めて感じた次第です。まあ本レンズの場合は振り回す体力が必要ですが。
ゴツく見えて、いい眼をしてます。抱えた瓶に漂う色気も素晴らしい。
「やっぱりライカ」な望遠大三元。
描写については予想通り、シーンを問わず全域で素晴らしい性能を発揮してくれました。SL3の高画素と広いダイナミックレンジをしっかりと使い切れるキレと階調性を併せ持っています。高いAF性能、手ブレ補正も撮影を力強くサポートしてくれるでしょう。約1540gという重量は昨今のミラーレス用としては「軽量!」と断ずることはできないものの、オール金属製と聞いて納得しました。これ、色んなところで効いてきます。ボディを含めたデザインの統一感やソリッドな感触はもちろん、長い鏡胴がしなる気配すらないのです。びくともしない道具というのは、確実に気分を上げてくれます。SL3のボディ自体も鈍器のように(褒め言葉)ズッシリガッシリしているので、意外にバランスが良く安心感すらありました。常用する道具ですから、信頼感があるに越したことはありません。ちなみにフードまで金属製で指で弾くとキンキンと良いモノ感溢れる音が。もちろん実際に非常に良いモノで、あらゆる面で「やっぱりライカ、こうじゃなくちゃね」と納得させてくれるレンズでした。広角、標準、望遠の定番焦点域をカバーする「大三元」はこれにて全線開通。SLレンズは単焦点もすばらしいのですが、このズームレンズも決して引けを取りません。レンズ交換式カメラの万能性を極めるならやはり大三元は揃えておきたいもの。広角、標準はもちろん、望遠の本レンズを加えておけばほとんどのシーンに対応できるでしょう。
( 2024.10.25 )
身構えていると夢のようなお値段。正夢です。
82mm径をご使用ください。
今回使用したカメラボディです。6000万画素とMAESTRO IVが織りなすミラーレスライカの画作り、惚れ惚れします。
こっちもびっくり。向こうもびっくり。居場所を教えてあげましょう。