PHOTO YODOBASHI
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Voigtlander ULTRON 21mm F1.8 Aspherical VM
2012年12月発売の本レンズですが、現行モデルとして今なお健在。今回機会があり、改めて撮影する運びとなりました。コシナ・フォクトレンダーのVMマウントレンズには21mmレンズが4本もラインナップされているのですが、本レンズは2020年発売の Nokton 21mm F1.4 に次ぐ大口径。長らく超広角大口径の世界を牽引してきた1本となります。より明るいスペックのレンズが出たからといって御役御免とならないのがレンズの面白いところ。現代のボディに装着して、その写りと使い勝手を確かめてみたいと思います。
( Photography : Naz / Text : Serow )
21mmというのはライカMマウントにおいては伝統的な焦点距離。超広角の入り口として、伸びやかにスナップしていくのが楽しい画角です。開放F1.8という明るさゆえに決して小さなレンズではありませんが、一般的なレンズ交換式カメラと比べれば十分にコンパクトです。
絞り開放で画面中央の幹にピントを置きました。超広角でも背景を大きくボカし、立体感ある表現を見せてくれます。
こちらも開放。白樺の幹にピントを置くと道の先にいる人物の輪郭は溶け、大口径超広角レンズらしい表現が得られました。上部の葉に色収差が出ていますが、よく抑えられていると思います。四隅は少し像が崩れますが超広角としては十分に許容範囲ではないでしょうか。
レンジファインダーらしく都市光景をスナップしてみると、シンプルに「気持ちいい」というのが第一の印象。シャープで緻密な線はもちろん、コントラスト良く、それでいてハイエストライトまで綺麗なトーンで描いてくれます。21mmという焦点距離ながらも極端でなく、自然に見える写りがいいのでしょう。
遠景でもキレは抜群。建築物などを撮影するのがすこぶる楽しいレンズで、複雑な直線を見るとついついシャッターを切りたくなります。画角の広さゆえに、あまりに多くの要素が写り込んでしまわないように整理するというのが使い方のコツでしょうか。すこし樽型の歪曲があるのですが、格子状の被写体でもなければ気にならないレベルだと思います。
積み重ねた歴史もあって、レンジファインダー機を手にすると白黒写真を撮りたくなります。M10 Monochromで撮影しても、そのシャープネスは期待通り。EVF(Visoflex)も使ってみましたが、超広角ゆえにピントの山は掴みづらく、やはり距離計でピントを合わせたほうがテンポ良く撮影できます。一方で距離計の連動しない最短撮影距離ではEVFが頼もしい。併用するのが現代レンジファインダー使いの正しいあり方というものでしょう。
朝から夜まで、シーンを選ばず遊べる1本
開放F1.4の特別なレンズを横目にしても、半段落ちる本レンズが持つ魅力は未だ損なわれていないと改めて感じます。多彩な表現を可能にする明るさを持ちながら、大きさや重さにおいても実用的な範囲内にあり、何より手の出しやすい価格に抑えられている。レンジファインダーというカメラのスタイルを考えるならば、大事にしまっておくのではなく気楽に持ち出してガンガン使い倒してほしい。明るい日中から屋内や夜のスナップまで、風景からポートレートまで、遠景からマクロまで、シーンを選ばず楽しめる1本だと思います。
( 2020.09.10 )
大口径超広角の世界をはじめるのに最適な一本。レンズによって広がる世界をお楽しみください。
被写体にぐっと近寄るためにもプロテクターがあれば安心です。ええやつをどうぞ。