PHOTO YODOBASHI

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LEICA M11, NOKTON classic 35mm F1.4 II SC VM, Photo by TAK

Voigtlander NOKTON classic 35mm F1.4 II SC VM

あの「8枚玉ズミクロン」と光学系が瓜二つの、NOKTON classic 35mm F1.4(以下「初代」)のII型をご紹介します。主な改善点は、ライブビューでのピント合わせの精度向上です。開放で合焦させた後に絞り込むとピントがズレてしまう現象に対処したとのこと。しかもコーティングは、わざわざ単層(SC)とマルチ(MC)の2種類を用意するというこだわりようです。今時こんなに小回りの効くマニアックなメーカーは、他にありませんから。今回はより「クラシック」な単層コーティング版「SC」をご紹介しますが、これ、実にいいレンズなんです。描写もお値段も、完璧なんですね。

( Photography & Text : TAK )

LEICA M11, NOKTON classic 35mm F1.4 II SC VM, Photo by TAK

ハッキリクッキリとは一線を画す、開放での繊細な写り。近距離のピントにも優しさがあり、ボケも柔らかく仕上がります。この官能的な傾向は初代からしっかりと引き継がれており、MCよりもSCがさらに色濃く出ます。コーティングの主な役割は反射の抑制です。その層が薄いほど「生の」光が届きますが、どの程度抑制するのかで描写の味も変化します。見やすさ重視のメガネでは視認性の向上を目指す一方、写真用レンズでは目指す描写性によってコーティングの中身も異なってきます。単層コーティングの本レンズでは、反射の抑制も文字通り「良い加減」で、このように光が滲むことでふわっと表現されます。これを見にくいと取るか、芸術的と取るか。間違いなく後者が本レンズを選ぶ最大の理由です。

LEICA M11, NOKTON classic 35mm F1.4 II SC VM, Photo by TAK

開放のまま、少し距離をおいてみます。ピントは十分シャープですが相変わらず柔らかさもあり、前後のボケも手伝って少し湿度も感じさせてくれます。このスカッと抜け切らない感じも、最新のレンズにはない味わいですよね。

LEICA M11, NOKTON classic 35mm F1.4 II SC VM, Photo by TAK

その名の通り、光量の少ないところでも積極的に活用したくなるのがNOKTONというレンズです。こちらは朝日が直接当たる前のシーン。直に照らされるのではなく、被写体自体が反射する光主体で描く場面では色が濃く出やすいものですが、そんな時こそ、本レンズが最も輝くように思います。逆に明るいところではフリンジも出たりするのですが、そもそもNOKTONとは暗所での撮影を重視した性格のレンズですから、これでよいのです。お気づきの方もおられると思いますが、樽型の収差が出ます。私は気になりません。そもそもレンジファインダーでは気にしません。ついでに、絞り値を覚えていなくても気にしません。ともかく、このピント周りの柔らかさが絵画的でたまらないですね。じめっとした朝でしたが、その空気感の演出が秀逸です。


LEICA M11, NOKTON classic 35mm F1.4 II SC VM, Photo by TAK

絞れば一気に周辺までシャープに。キャラクターの豹変も、本レンズの魅力です。雲のシリアスな表情もなんとも言えません。こういうレンズを持っていると、曇天も出かけたくなるんですよね。

LEICA M11, NOKTON classic 35mm F1.4 II SC VM, Photo by TAK

F2.8に絞って、ピントをくっきりさせてみました。でもそれ以外には柔らかさもあります。「絞りで被写界深度だけを変える」類のレンズとは別世界の描写です。

LEICA M11, NOKTON classic 35mm F1.4 II SC VM, Photo by TAK

もはや「スペクタクル」レベルのフレア、ゴースト。MCよりSCの方が出ます。流石にやりすぎましたが、どうせならMAXでお見せしたかったので。色んなアングルで出方を探ってみるのも楽しいですし、光の使い方に敏感になるので学びも大きいのです。

LEICA M11, NOKTON classic 35mm F1.4 II SC VM, Photo by TAK

フリンジは消したければソフトで消せる範囲です。初めからフリンジなしをお求めであれば、迷わずAPO-LANTHARをお求めください。


LEICA M11, NOKTON classic 35mm F1.4 II SC VM, Photo by TAK

拡散光が、もっとも美味しいのかなと思います。

LEICA M11, NOKTON classic 35mm F1.4 II SC VM, Photo by TAK

MCだともう少しコントラストが出るでしょう。ただ、レタッチで同じような雰囲気に料理することも可能です。


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膨張と収縮を繰り返すコレクションの主は、こんなレンズかも。

「8枚玉ズミクロン」の神格化された写りについては私も正直よくわかりませんが、光学系が酷似している本レンズの写りから、何となくこんな感じに近かったのかなと想像することはできます。つまり「8枚玉」の設計がいかに優秀であったかも推し量ることができるというわけです。まさに温故知新。それを実行に移したメーカーの心意気と機動力に賛辞を送ります。しかもF2ではなく、F1.4。現代の技術でズミクロンがズミルックスに化けたようなもので、歴史の「IF」、つまり「8枚玉がF1.4だったら?」も楽しむことができます。そしてカビや曇りのない、ヘリコイドのグリースもフレッシュな新品で手に入れることができます。基本的な描写傾向は初代と同じ。像面移動を低減させたことによる変更点はわずかにあるかもしれませんが、「球面収差は前モデル同様あえて残存」と謳っているとおり、肝となるクラシカルな味は健在。多彩な表現を楽しむことができます。ではSCとMC、どちらを選べば良いか。このレンズに興味がおありなら、ある程度のこだわりをお持ちのはず。それを前提に申し上げれば、まずは「classic」の性格を最もストレートに感じられるSCから入るのも面白いでしょう(もちろん、MCの安定感も捨てがたい!)。私は初代のMCを持っていましたが、今はII型のSCです。レンズ遍歴的には純正もそれ以外もかじってきましたが、無二の味を持つ本レンズは今もなお所持していますし、マウントアダプター経由で動画にも使っています。35mmの万能性、F1.4の明るさ、AFレンズではあり得ないサイズ、そして高価過ぎない故の扱いやすさ。そりゃ生き残りますよ。特段高くもないのに割れることなく、なんだかんだでヘビロテになっている皿のように、長く長く愛せる一本。豊かな写真人生が、もれなく付いてきます。

( 2025.07.14 )

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「レンズ探しはこれで終了」と言いつつ、次々と生えてくるような方にも一定の効力が期待できます。

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こちらはクラシックな雰囲気を残しながら、よりニュートラルな色再現を実現したMC版です。

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43mmフィルターをご使用ください。

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赤バッジ付きは既にディスコンに。刻印入りの「P」はやはりカッコいいですよね。

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