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LEICA M10 Monochrom, LIGHT LENS LAB M 35mm F2, Photo by Naz

LIGHT LENS LAB M 35mm F2

ライトレンズラボの初代ズミクロン35mm F2を復刻した「LIGHT LENS LAB M 35mm F2」を紹介します。1958年に発売された初代ズミクロン35mm F2(Summicron 35mm F2 第1世代)は、ライカMマウントの35mmレンズで初めてF2の大口径を実現した歴史的なレンズ。「八枚玉」とも呼ばれ、ライカのクラシックレンズでも特に人気がある1本です。11年で約20,000本生産されましたが、発売から70年前後経過しているため、中古市場ではコンディションのよい個体が100万円にも迫るプライスとなるなど、気軽に入手できるレンズではなくなっています。今回紹介する復刻レンズは、そういった希少なレンズが持つ魅力ある写りを多くの人に楽しんでもらうべく、現代の製造技術や精度をもって生み出されたもの。「周八枚」という愛称は、中国の投資家である周さんという方が始めたプロジェクトの八枚玉であることから、そう呼ばれているのだそう。

本レンズはオリジナルの八枚玉と同じ6群8枚の構成で、鏡胴デザインを含めてオリジナルを忠実に再現。材質はオリジナルのアルミ製から真鍮製とすることで程よい重量感と高い質感を両立させています。基本はシルバーとブラックペイントの2色展開ですが、その他にもチタン製やサファリ塗装、ビンテージ風仕上げ等の限定モデルや独自デザインの沈胴式など単なる復刻を超え、多彩なバリエーションで我々ユーザーを楽しませてくれています。

( Photography & Text : Naz )

LEICA M10, LIGHT LENS LAB M 35mm F2, Photo by Naz

このレビューでは、レンズの特徴が最もよく出る開放のカットを多く並べてみましたので、まずは絞ったカットからご覧いただきましょう。開放から2段絞ってF4。まさに精緻といった描写で、かっちりと写りますが、線が太らず、硬くならずに描いてくれます。クラッシックなライカの35mmレンズでは八枚玉のほかに、球面ズミルックス(Summilux 35mm F1.4 第1~2世代)も人気のある1本ですが、絞りによる描写の変化はズミクロンの方が安定感がありますね。もちろんその性格は本レンズでも同様です。

LEICA M10, LIGHT LENS LAB M 35mm F2, Photo by Naz

このカットでは現像時にシャドウ部を大きく落としてみました。撮影に使用したカメラ(M10)のセンサーや映像エンジンとの相性もあるかと思いますが、コダクロームを連想させる落ち着いた渋めの発色がツボにハマったように感じました。M10-Rでも撮影しましたが、特にM10との組み合わせが素晴らしかったです。

LEICA M10, LIGHT LENS LAB M 35mm F2, Photo by Naz

ビルの間に差し込む斜光。シャドウ部も簡単には潰れず、黒の中に存在感を残してくれています。豊かにトーンを連ねてくれますので、モノクロ撮影に向いたレンズだといえるでしょう。オリジナルが設計された当時はモノクロ全盛の時代ですから、それも当然ですね。

LEICA M10-R, LIGHT LENS LAB M 35mm F2, Photo by Naz

開放は軟調な写りですが、シャドウの深みと緻密な描写、大きめの周辺減光により、F2よりももっと明るいレンズで撮られた写真のようにも感じさせます。前ボケは少し雑かと思ってしまう素っ気なさも意外とよいです。


LEICA M10, LIGHT LENS LAB M 35mm F2, Photo by Naz

薄暗い光の中、T シャツの質感や厚みを感じる車の塗装、そして背景の濡れた路面、日没後の薄くなる空のグラデーションなどそれぞれを見事に描き分けてくれました。情緒的な雰囲気の表現が巧いレンズだなと感じます。

LEICA M10, LIGHT LENS LAB M 35mm F2, Photo by Naz

35mmの画角は主観的になりすぎず、その場の雰囲気を取りこみつつ主題を引き立たせてくれる絶妙な画角。コンパクトで目立ちにくい大きさであることも合わせ、ライカ使いのスナップシューターに長い間愛されてきた画角であることも頷けます。F2の大口径は、夜間や室内など微光量下でも扱いやすく、高感度耐性が強いデジタルカメラでは明るさで困ることはほとんどないでしょう。

LEICA M10-R, LIGHT LENS LAB M 35mm F2, Photo by Naz赤く光る看板の文字が飛ばないよう暗めの露出にしたこともありますが、背景のタイルは彩度を抑えた渋めの発色となり、色気を感じる「赤」を見せてくれました。

LEICA M10, LIGHT LENS LAB M 35mm F2, Photo by Nazオリジナルを再現したシングルコーティングの影響か、フレアっぽい写りとなることから、ピーカンの陽射しの下といった明るい条件は得意ではないと言ってしまってもいいでしょう。開放付近では球面収差による滲みも出やすく、ある程度抑えつつ撮るには画面内の黒が占める割り合いを多くするのもひとつの方法かと。要するに薄闇や室内・夜間の撮影がとにかく楽しいレンズということになります。

LEICA M10, LIGHT LENS LAB M 35mm F2, Photo by Naz

空気感まで再現した独特な描写は、現代のレンズでは得ることができない世界観を持っていますね。好みはあるでしょうが、この写りに惚れる人が多いことに改めて納得させられました。周辺部の点光源にはコマ収差も見られますし、現代的な光学性能のモノサシに当てはめれば、より優れた光学性能のレンズは数多くあるでしょう。でも本レンズで撮られた写真を見ていると、そんな子細なことはどうでもいいとさえ思えてきます。


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希少レンズの写りを存分に楽しめる、復刻レンズという選択肢。

歴代のズミクロン35mm F2はどれも人気のあるレンズばかりですが、その中でも八枚玉は気品すら感じる端正な写りにより、他のレンズとは一線を画した存在であるといえます。遠い昔の製品ですから、その写りを楽しむには中古市場で流通している限られたものの中からコンディションのよい1本を探し当てなくてはなりません。労力に加え財力も求められますから、それが容易いものでないことは希少なクラシックなレンズを手にしたことがある方ならおわかりいただけるでしょう。長い間それは当たり前のことでしたが、復刻レンズの登場により我々には新たな選択肢が与えられました。

復刻レンズの開発は当然本家が優位であるものだと思います。詳細はわかりませんが、サードパーティーであるライトレンズラボが当時の資料やコンディションのよい個体から、レンズ1枚1枚の曲率や硝材等を解析し最新の機器や技術を用いて再現することはかなり骨の折れることだったと思います。その努力の甲斐あって写りの素晴らしさは期待以上のものを持っていました。工芸品かと見間違う美しい外観や滑らかなフォーカシング、パチンとはまる無限遠ロック等の再現もお見事です。とはいえ復刻レンズというものは、オリジナルからみれば亜流であるのは確かなこと。存在そのものに賛否もあるでしょう。ただ本レンズ以外にも本家ライカからはSummilux-M 35mm f/1.4やNoctilux-M 50mm f/1.2Summaron-M 28mm f/5.6等魅力的な復刻レンズが次々と登場しています。希少なオリジナルに拘るのもよし、気兼ねなく扱える復刻版で(オリジナルの時代性に思いを馳せながら)撮ることに没頭してみるのもよし、我々に与えられた楽しみ方は色々、そして自由なのです。

( 2024.12.04 )

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最もスタンダードなのがシルバー鏡胴。ブラッククロームのボディでも、シルバークロームのボディでもよく合います。

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オリジナルは天文学的価格となるブラックペイントも、復刻モデルなら気軽に手に入れられますね。使い込むに従い真鍮の地が顔を出します。

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ビンテージ仕上げが施されたブラックペイント。こちらは同様の加工がされたUVフィルターとフードが付属するセットとなります。

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こちらは、同じレンズを沈胴式の鏡胴に納めたタイプ。フォーカスリングを回すと絞りリングも回る回転ヘリコイドとなりますが、アダプターを外すとスクリューマウントになるため、バルナックライカでもお使いいただけます。

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IROOAタイプのフード。こちらはシルバー。ラッパ部と基部とが分割可能なため、シルバーの基部とブラックペイントのラッパ部を組み合わせれば、オリジナルのIROOAに肉薄します。

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ブラックペイントフード。総金属製でレンズ同様に高い質感の塗装が施されています。

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光学ファインダーも復刻されています。SLBOOタイプ。バルナックライカやM3でお使いください。

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こちらはSLBOOタイプのブラックペイントカラー。

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本レンズにはIROOAのようなクラシックなデザインのフードが似合いますが、他のE39のレンズ向けにスリット型の12504タイプのフードも用意されています。

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E39 UVフィルターもブラックペイントがございます(シルバータイプも選べます)。

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