PHOTO YODOBASHI

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Leica M10-R, Voigtlander COLOR-SKOPAR 35mm F3.5 Aspherical VM, Photo by Naz

Voigtlander COLOR-SKOPAR 35mm F3.5 Aspherical VM

趣味性の高いレンズを数多く輩出するフォクトレンダーから面白い製品が登場しました。ライカ往年の広角レンズ、Elmar 3.5cm F3.5をモチーフにしたであろう「Voigtlander COLOR-SKOPAR 35mm F3.5 Aspherical VM」です。焦点距離と絞り値を同じとしながらも、最新の光学系を採用したコンセプトの1本。全長はわずか14mmという、パンケーキならぬレンズキャップのような薄い鏡胴に、両面非球面レンズを1枚、異常部分分散ガラスを3枚採用する4群6枚の凝った構成となっています。鏡胴は総金属製ながらも質量はわずか99g、付属のフードと薄枠フィルターを加えても131gととても軽量です。フルサイズとしてはコンパクトなM型ライカとの相性は抜群で、撮影感覚はまさに軽快そのもの。少し前にフォトヨドバシで紹介した「Voigtlander APO-LANTHAR 50mm F3.5 VM」と同様に、本レンズも「F値を抑えた高性能レンズ」といえるでしょう。それでは実写レビューをご覧ください。

( Photography & Text : Naz )

”スロウ レンズ 〜 暗いレンズ特集”
明るいレンズに存在理由があるのと同様に、暗いレンズにも存在理由があります。あまり目立つことのないレンズ達でありますが、個性あふれるレンズが揃っていいます。そんな暗いレンズを様々な角度からフォトヨドバシで特集しました。こちらも合わせてご覧ください。


Leica M10-R, Voigtlander COLOR-SKOPAR 35mm F3.5 Aspherical VM, Photo by Naz

カッチリと写るレンズですが、西日で光る壁面がハイライトとなり、その部分にはいくらかの柔らかさを感じます。とはいえフレアの発生はよく抑えられていて、影となる幹の肌まで明瞭に描かれているあたり、逆光には強いのだろうと想像します。

Leica M10-R, Voigtlander COLOR-SKOPAR 35mm F3.5 Aspherical VM, Photo by Naz

2段絞りましたが、背景までの距離が離れていることもあり、被写体をいい感じに浮かび上がらせてくれました。大きなボケを活かすような写真表現とは異なりますが、周囲の様子を取り込みながらも撮り手が何を見ていたのかが明確に分かる写りです。空気感をも写し込むようなストリートスナップやドキュメンタリーの撮影によさそうです。周辺減光もよい塩梅です。

Leica M10-R, Voigtlander COLOR-SKOPAR 35mm F3.5 Aspherical VM, Photo by Naz

最短撮影距離はM型ライカの距離計連動範囲に合わせた0.7m。Elmar 3.5cmの1.0mより寄れるのも嬉しいところです。この0.3mの違いは近接に制約のあるレンジファインダーカメラではかなり大きいでしょう。

Leica M10-R, Voigtlander COLOR-SKOPAR 35mm F3.5 Aspherical VM, Photo by Naz

湾岸に新しくできた公園の森を歩きました。湿度を感じた午後、そんな雰囲気も写し取れているでしょうか。鬱蒼とした緑だけではなく、乾いた土の道もしっかりと描き込まれています。


Leica M10-R, Voigtlander COLOR-SKOPAR 35mm F3.5 Aspherical VM, Photo by Naz

ヌケがよい描写です。開放でも被写界深度は深くなりますが、それでもこの距離にある被写体(椅子)のピントにキレを感じます。フレーム内の前後関係をわかりやすく再現してくれていますね。

Leica M10-R, Voigtlander COLOR-SKOPAR 35mm F3.5 Aspherical VM, Photo by Naz

カッチリとした硬質な描写ということもあり、ガラスや金属等の描写は抜群によい印象です。

Leica M10-R, Voigtlander COLOR-SKOPAR 35mm F3.5 Aspherical VM, Photo by Naz

地方の町をあてもなく歩き、眼前に現れた光景をさっと切り取る。そんな使い方が存在感を主張しすぎない本レンズには似合っているように感じました。

Leica M10-R, Voigtlander COLOR-SKOPAR 35mm F3.5 Aspherical VM, Photo by Naz

Leica M10-R, Voigtlander COLOR-SKOPAR 35mm F3.5 Aspherical VM, Photo by Naz

重厚感あるシャドウがいいですね。そこを基調とした露出をベースに雰囲気ある光景に組み立てるのが、本レンズを使いこなす上でよいように感じました。


  • Leica M10-R, Voigtlander COLOR-SKOPAR 35mm F3.5 Aspherical VM, Photo by Nazボケ量は大きくありませんが、自然な立体感を演出していると思います。左側のアウトフォーカスとなった葉のボケに少しザワついた印象を感じますが、解像力の高いレンズながらも巧みに処理されているように感じます。
  • Leica M10-R, Voigtlander COLOR-SKOPAR 35mm F3.5 Aspherical VM, Photo by Naz写り込んだ空と電線との間にフリンジが出ています。APOレンズではありませんので、この程度は仕方がないところでしょう。後処理で消してあげるだけで画がだいぶすっきりすると思います。

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往年の名レンズを彷彿とさせるスタイルで最新の写りを愉しむ。

長い歴史を持つライカMマウントには個性あるレンズが数多くありますが、その中でも最もコンパクトなElmar 3.5cm F3.5をモチーフとした(であろう)ということは、必然的にレンズを構成するスペースが限られることになります。このサイズは3群4枚のテッサー型だから実現できたもので、デジタル時代の高度な要求に応える光学性能を有しながら、光学補正もないM型で同等のサイズを実現するということは並大抵のことではなかったと想像します。それでも使い込んでみると、現代レンズらしさを持った無理のない写りであるように感じました。つまりそれは扱いやすい写りということになります。

外観については、Mマウントならもスクリューマウント時代のレンズを彷彿とさせるマウント基部の仕上げに加え、無限遠にはロック機構ももちろん備わり、ヘリコイドは全回転式。フォーカス操作に連動して絞りリングも一緒に回転するので、フォーカス操作の前に絞り値を決める必要があります。ちょっとしたお作法により往年のレンズを操作しているような気分も十分に味わえます。一方で従来の全回転式レンズではフォーカスの繰り出しに合わせてヘリコイドの溝が露出してしまいますが、本レンズでは埃等の混入がないようカバーされ、フード装着時はElmar 3.5cmのようにフードの中に指を突っ込んで絞りの操作をする必要がなく、フードを回すことで絞り値の変更が可能になるなど、使い勝手の部分で現代レンズらしいギミックも備わっています。何より専用の薄型フィルターや2種類のレンズキャップまで付属してしまう特別感は、これまでのフォクトレンダーのレンズの中でもピカイチのこだわりようです。1930年代に生まれたElmar 3.5cmのクラシックな外観と2020年代の最新の写りを存分にお愉しみください。約100年の時を経たそれぞれのレンズを撮り比べてみるのもいいですね。

  • PHOTO YODOBASHIこの「薄さ」は他のレンズでは得られない価値。コンパクトなM型ライカにこそ相応しい組み合わせであり、よく馴染むデザインであるといえます。フードを外せば指1本分ほどしかない全長は「長さ」ではなく「薄さ」といった方が相応しいほど。
  • PHOTO YODOBASHI豊富な付属品たち。左からわずか1.1mm厚の特殊薄枠の保護フィルター、FOOKH風デザインの金属製フード、フード装着時用のレンズキャップ、アルミ切削加工の被せ式レンズキャップ。
    ※本レンズに付属のフードは、Elmar 3.5cm用のFOOKHと互換性はありません。

( 2025.06.19 )

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ブラックボディとの相性がいいブラックペイントは厚みを感じる塗りとなっています。フードもブラックペイントです。

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オリジナルに似た雰囲気のシルバーを筆者は選択。こちらはブラック・シルバーどちらのM型ボディとも相性がいいです。

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現行のM型ライカのベーシックなボディとなるM11-P。クラシックな赤バッジのない外観となります。

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こちらはシルバーボディ。よりクラシカルな雰囲気で、オールドレンズとの相性も抜群です。

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M11-Pをベースとし、カラーフィルターを廃したモノクロ専用機。カラーフィルターを廃することでベイヤー配列の補完処理を回避できるため、より解像力の高い画像を手にすることができます。

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背面のディスプレイを廃し、フィルムライクな撮影スタイルを再現可能なM11-D。こちらはブラッククロームではなく、ブラックペイントとなるマニアックなボディです。

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