PHOTO YODOBASHI

ヨドバシカメラ公式オンライン写真マガジン

LEICA M10-R, Voigtlander APO-LANTHAR 50mm F3.5 VM, Photo by Naz

Voigtlander APO-LANTHAR 50mm F3.5 VM

フォクトレンダーから昨年登場したライカMマウント向け標準レンズ「Voigtlander APO-LANTHAR 50mm F3.5 VM」の実写レビューをお届けします。F1.2やF1.4等の大口径の高性能レンズが賑やかな昨今、F3.5という開放値のレンズの登場は意外にも感じました。しかもこれが高性能レンズに与えられる「APO-LANTHAR」の名を冠しているということですから、気にならないわけがありません。本レンズは鏡胴のタイプが2種類用意され、Type Iは沈胴レンズ風(沈胴はしません)、Type IIはトリプレット・エルマー9cm等の古いレンズを彷彿とさせるスリムな固定鏡胴となっており、それぞれにブラックペイントとシルバーが用意されるほか、Type Iには限定カラーも登場するなど、バリエーション豊富となっています。

VMマウントのAPO-LANTHARとしては、ご存知の通り既にF2モデルが存在しますが、それに比べるとF3.5と開放値を抑えた本製品は全長45.mm、質量175g(ブラックペイント)と大幅な小型・軽量化を実現しています。レンズ構成は6群8枚で1・4・6・8枚目に異常部分分散レンズを採用し、すべて球面で構成されています。昨今の高性能レンズは非球面レンズを多用するものが一般的ですが、本レンズのアプローチは珍しいといでるでしょう。

( Photography & Text : Naz )

”スロウ レンズ 〜 暗いレンズ特集”
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LEICA M10 Monochrom, Voigtlander APO-LANTHAR 50mm F3.5 VM, Photo by Naz

いきなりモノクロの画像となりますが、まずわかりやすい特徴として本レンズの解像力をご覧ください。レンズをマウントしたのはM10 Monochrom。カラーフィルターを廃し、ベイヤー型センサーのデモザイク処理をキャンセルしたカメラです。1ピクセルそれぞれが輝度情報のみを出力するため、一般的な40MPのセンサーより高い解像感が得られますが、原寸画像をご覧いただくと判るとおり、猛烈なまでの解像力に圧倒されました。M11系の60MPの解像力にも十分に応えてくれそうですね。モノクロで撮影すると本レンズがコントラストで見せるレンズであるという性格であることを感じます。シャドウはストンと落ち、カラー以上にハードな印象となるようです(画像のクリックで原寸画像を表示します)。

LEICA M10-R, Voigtlander APO-LANTHAR 50mm F3.5 VM, Photo by Naz

軸上色収差をはじめとする諸収差を徹底的に排除したアポクロマート設計ということで、輝度差のある被写体でも輪郭に色収差はまったく見られません。レンジファインダーで撮影しているだけではわかりませんが、キレのよさはVISOFLEX(EVF)を装着するとよくわかりました。


LEICA M10-R, Voigtlander APO-LANTHAR 50mm F3.5 VM, Photo by Naz

レンジファインダーカメラでの撮影は近景〜中景の撮影に適していると感じますが、本レンズはF3.5と近接でなければボケ量はさほど得られないことから、むしろ中景〜遠景の撮影に向いているようにも感じました。無限遠付近を使う風景写真でもしっかりとピントのキレが感じられ、被写体までの距離感がこれだけ離れていても画として成立させてくれます。なお本レンズは全回転のヘリコイドとなるため、フォーカスリングの回転に合わせて(より前方にある)絞りリングも一緒に回転してしまいます。そのため、カメラを構える前に絞り値を決めておくのが使いこなす最初のポイント。といっても、開放から絞る必要なんてほとんどないようにも感じます(画像のクリックで原寸画像を表示します)。

LEICA M10-R, Voigtlander APO-LANTHAR 50mm F3.5 VM, Photo by Naz

金属板にペンキが塗られたベンチ。座面に敷かれた布の質感や細かい皺までよく再現されています。本レンズの最短撮影距離0.35m(Type Iは0.45m)。M型ライカでの距離計連動範囲は無限遠〜0.7mとなりますが、近接で0.7mを超える際にクリックストップがあり、距離計連動外になったことを指先で感じ取ることができます。連動範囲外での撮影はVISOFLEX(EVF)が必須となりますが、ピントのキレが抜群で外れると誤魔化しがきかないことから、精密にピントを追い込めるEVFの使用は理に適っていると思います。


LEICA M10-R, Voigtlander APO-LANTHAR 50mm F3.5 VM, Photo by Naz

3月初旬の北海道。ローカル列車の先頭から窓越しに見える景色を捉えてみました。鉄道旅に本レンズをメインに携行しましたが、小型・軽量ですから大口径レンズと組み合わせてサブレンズとするのにもいいですね。使える前ボケは量感があり、描写に癖がなく扱いやすいです。

LEICA M10-R, Voigtlander APO-LANTHAR 50mm F3.5 VM, Photo by Naz

北の地では人より多いエゾ鹿に出会いました。海越しに見えるのは利尻富士。色が失われていく光景の中、周辺減光もよい雰囲気を演出してくれました。なお、周辺減光は絞ることで弱まります。

LEICA M10-R, Voigtlander APO-LANTHAR 50mm F3.5 VM, Photo by Naz

ダイヤ改正により廃止となった宗谷本線 抜海駅。いつもは静かな駅ですが、日没が過ぎ闇が迫る中でも最北の無人駅には別れに訪れる鉄道ファンの方がたくさんいました。


LEICA M10-R, Voigtlander APO-LANTHAR 50mm F3.5 VM, Photo by Naz

Mマウントの径よりもスリムな鏡胴は一見違和感を抱いてしまいますが、見慣れてくるとかわいく感じられました。このスリムな出で立ちにより、付属のフードを外した状態ではファインダーの右下が(近接時を除き)ほとんど蹴られないのも扱いやすく感じさせてくれました。フォーカスリングもコロコロと指先で回しやすいです。またレンズの存在感が抑えられているため、被写体となる人物に威圧感を与えにくいため、スナップ撮影やドキュメンタリー撮影にも適しているように感じました。

LEICA M10-R, Voigtlander APO-LANTHAR 50mm F3.5 VM, Photo by Naz

水滴、見えますでしょうか。

  • PHOTO YODOBASHI原寸画像を用意しました。撮影時にはEVF越しでも見えなかった、人物の足元付近のエレベーターの床の凸凹もシルエットとして緻密に描かれています。本レンズとM Monochromとの相性は抜群ですね。
  • PHOTO YODOBASHI開放でも大きなボケ量は期待できないものの、その場の雰囲気をうまく再現してくれました。主要な被写体と背景とをしっかりと分離してくれるピント面の鋭さはピカイチで、雨風に晒されてきたスニーカーのソールや生地の質感を克明に描き出してくれています。

PHOTO YODOBASHI

カミソリのような描写を小口径ならではの軽快さで楽しむ。

いかがでしたでしょうか。普段から様々なレンズを手にしていますが、久しぶりに凄いレンズを手にしたな、という感想が浮かびました。本家ライカにもAPO-SUMMICRON-M 50mm F2 ASPH.という高性能レンズがあり、本レンズより先に登場したAPO-LANTHAR 50mm F2 Aspherical VMではスペックも同じとしていますが、本レンズはフォクトレンダーにしかないスペックとコンセプトとなり、その強烈ともいえる描写性能を手頃な価格で入手しやすく仕立て上げられたレンズとなっています。大口径レンズに憧れるのは当然のこと、最初の1本はそういう王道のレンズを手にすべきだと思いますが、2本目、3本目として手に入れるなら、こういった個性あるレンズもよいのではないでしょうか。一見地味なスペック故、ハナから興味を持たれない方がいるのは仕方がないところではありますが、実際に手にしてみるとレンズマニアの方ならそのカミソリのような描写にニヤけてしまうのは間違いありません。厚みのある塗装が施されたブラックペイントは手触りがよく、所有欲も満たしてくれました。各社ミラーレスマウントではマウント径が大きくなり、レンズの外径も太くなりつつあるだけに、本レンズのスリムさはとても新鮮に感じます。クラシックレンズ風という羊の皮を被った狼のような存在といっていいレンズでしょう。どうぞ、実際に本レンズを手にしていただき、その写りをご堪能ください。

( 2025.04.28 )

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厚みのあるブラックペイント仕様。最も軽量に仕上がっています。

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こちらはシルバー鏡胴。シルバーボディと組み合わせると、見た目はクラシックそのもの。

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沈胴レンズ風のデザインも用意されています。光学性能を重視し実際には沈胴しない仕様です。こちらはマットブラック仕上げ。凝っていますねえ。

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こちらはシルバーとブラックのツートンカラー。

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限定のシルバー×グレーのカラー。ミリタリー風にも見えますね。

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こちらも限定のシルバー×ネイビーのカラーとなります。

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最新で最良のM型ライカ。M11-Pはクラシックなスタイルと最新の性能が両立されたレンジファインダーカメラです。

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本レンズはM型ライカの内蔵距離計との相性もバッチリでしたが、近接はもちろんのこと、より正確なピントを求めるならVISOFLEXがあるとより高い性能を引き出せると思います。

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