PHOTO YODOBASHI
ヨドバシカメラ公式オンライン写真マガジン
LEICA SL3 / SHOOTING REPORT vol.1 vol.2
M11、Q3に続いて、ついにSLも6000万画素となりました。ライカSL3にはQ3やQ3 43と同様、ライカとパナソニック協業開発の「L² Technology(エルスクエア・テクノロジー)」をベースとした、最新の画像処理エンジン「MAESTRO IV」が採用されています(M11やSL2などはMAESTRO III)。6000万画素の裏面照射型CMOSセンサーを新搭載しトリプルレゾリューションテクノロジーも取り入れたM11で、ライカはそれまでのレガシーを高い次元で融合させ次のステージに入った、そしてQ3シリーズそしてSL3でさらに熟成させた、そんなところでしょうか。SL2とサイズ的にはほぼ同じですが約70gの軽量化を達成。AFにはシリーズ初となる位相差検出が加わり、被写体認識も可能。モニターもチルト式となりました。いってみれば、「最も今時で器用なレンズ交換式ミラーレスライカ」でしょうか。早速作例を見ながら探って参りましょう。外観等についてはこちらもご覧ください。
( Photography & Text : TAK )
画作りはやはりMAESTRO III以前を搭載した歴代モデルに比べて、よりニュートラルに、ユニバーサルになったな、というのが第一印象です。ただ、さらに見ていくと相当な情報量、特に微妙な濃淡の違いを描く能力に長けていることがわかります。こちらのカットもよくある波紋の写真、、、いやちょっと待てよと。無段階とも言えるようなステップの細かさで、水という透明な被写体をここまで滑らか、かつ立体的に描けることに驚愕します。波紋のとろ〜んとした雰囲気、そこから透けて見えるコイの捉え方、その間の水の存在感にも唸るものがあります。流石はライカ、ただのミラーレスには非ず。そしてAFの進化にも注目です。この手のカットをAFで撮るとピントに何の意図も感じられない写真を量産してしまいがちですが、まさに狙ったところに一発でピントが来ました。位相差検出の恩恵を感じますね。
ダイナミックレンジはM11やQ3と同様最大15ストップとトップクラスの広さを誇ります。もちろんニュートラルといっても、味気ないということでは全くありません。情報量が増えたことで、トーンをあまねく拾い上げているような印象です。パッと見の分かりやすいコントラストというよりは、ライカの文法でプロセスしたリアリスティックな雰囲気は堅持しつつも、明暗をより細かく、よりリニアに再現しているとも言えるでしょうか。1枚目のカットにしても、強烈な反射光のハイライトにさえ優しさがあるのです。あくまでライカイズムを核心に抱きつつ、表現の引き出しを増やし、万能機に求められる資質もしっかりと押さえたカメラ、それがSL3なのだと感じます。
細かな檜皮葺(ひわだぶき)の描き分けに高画素の威力を感じます。5段分のボディ内手ブレ補正や大型の握りやすいグリップはもちろん頼もしい限りですが、この緻密な描写力を存分に発揮させるには手ブレに一層注意する必要があります。
高画素の威力 Part 2。クリックで等倍表示します。パターンの繰り返しではありますが、小さな昆虫なども克明に捉えられています。こういったカットも、ライカの中ではSL3が一番撮り易いでしょうね。順光、オートホワイトバランスですが、美しい緑の再現です。そして手ブレ補正。200mm、1/60秒でこの距離でも、しっかり効いています。
ちょっと変則的ですが、2400万画素の寸法でクロップ現像した画像も。高画素のメリットはクロップ後も十分過ぎるほどの情報量を維持できることにもあります。被写体はノビタキという全長13cmの小鳥。200mmは短すぎる焦点距離でしたが、APS-C程度にクロップして拡大してもスタンダードの画質を余裕でカバーしてくれるので、この鳥が初見だという人に見せても特徴を詳細に説明できます。また、これ以上近づくと飛び去ってしまう距離だったので、クロップ前提で実質近寄れるのは文字通り大きいですね。そしてAFの進化がここでも効いています。ファインダー内での被写体は相当小さかったのですが、何の問題もなく捉えてくれました。手動でAFポイントを選んで撮りましたが、その後被写体認識(動物)に任せて撮っても高い確率でスピーディーに捉えてくれました。ここでAFが迷い出すとその間にいなくなったりするので、嬉しいですね。被写体に合わせてAF枠が変形しながら絞り込まれていくところにも、「L² Technology」の恩恵を感じます。
ピカピカに磨かれた車体の照り、波打った塗装面、窓ガラスやフレームの反射。背景からスッと浮き上がってくるような存在感、半屋内のプラットフォーム独特のちょっと湿度を帯びた空気感の表現。全てにおいて別格です。
咄嗟に構えて撮るシーンに対応できるAFは、やはり頼もしいですね。もちろんMAESTRO IVの卓越した処理能力に拠るところも大です。激しい動き物までトップクラスの追従!とまではいかないのがまあ正直な実感ではありますが、スナップ、風景、スタジオ、コマーシャルなどを確実にこなせる運動神経があり、ストレスを感じることはありませんでした。ライカ社もこのカメラの使われ方を熟知していて、そこに狙いを定めて設計しているのだと思います。
静謐なシーンを静謐なままに、丁寧に拾い上げる描写力。シャッターを切るたびに、高度に組まれた高品質の部品が確実に仕事をしているような、「このカメラちょっと違うぞ」という音が心地よく響きます。短い間でしたが、幸せに支配されたUX(ユーザー体験)でした。
最もマルチでフレンドリーなライカ
数あるメーカーの中でもライカは特に独自路線を貫き、それを歓迎されてきたように思います。レンジファインダーは言うに及ばず、ミラーレスのSLシステムにしても最新機能をいち早く搭載というよりは、本質的に必要とされるものを吟味した上で、ライカの美学でまとめ上げてきたような印象があります。そして今やMシステムに加えてレンズ固定式のQシリーズ、更に大型のセンサーを備えたSシリーズまで、ラインアップはかつてないほどに多様化。そんな現況でミラーレス一眼ライカに求められるものは何か?今一度問い直しての答えが、「今時」の機能を盛り込み一気にモダナイズしたSL3なのでしょう。動画に至っては8Kまでサポートしていますし、間違いなくこれまでで最も多用途に使えるライカです。アイコニックなライカのみならず、使い易いライカが進化していくのもまた喜ばしいことですよね。光る電源ボタン、シンプルなインターフェイス、ぐらつき皆無のチルト式モニターなど、いかにも「ライカ」な見どころ、触りどころも満載。しかも先代より軽量化されているので、アダプター経由でMマウントスナップを愉しむにもベストな選択肢となるでしょう。まあ、ライカの場合重かろうが軽かろうが関係ないですかね(笑)。スペックなど頭で理解していても、いざグリップを握った瞬間「あ、このカメラ好き」となってしまうんですよ。作り込みに寸分の遊びもありません。ボディを爪先で「カツン」と叩いたつもりでも、「コツ」という音にミュートされます。それだけ高密度に凝縮された、マッシブな金属塊なのです。彼の国では駅の金属のゴミ箱さえ何かの精神が宿ったようなデザインで、当たったら怪我しそうなほどに頑丈に作り込んであります。そんな物がそこらじゅうにある国で育まれた職人魂が生み出した、単なる写真機を超えた高級カメラ。それで十分ですよね。道具にも色々ありますが、ライカはやっぱり気持ちがいい。これに尽きます。あとはお心のままにどうぞ。
( 2024.11.05 )
このカメラのアウトプットは、ライカ最新の目で解釈した森羅万象。これ以上何を求めるでしょう。M11の価格と比べるとあ〜ら不思議。
割と食いしん坊な三代目。おかわりは必携です。Q2/Q3シリーズと共用です。
美しい液晶も保護しておきましょう。
グリップも撮影時間もアップ。ボディと同様、シュッとしてます!
ある程度の重量があると、ショルダーよりもリストストラップの方が楽だったり。
メインと予備の2本が一気にチャージできます。
〜秒後ではなく「その時」に、ブレを気にせず撮りたい方へ。
光を制する者は写真を制す。ガイドナンバーは60です。
「SF 60」をオフカメラフラッシュとして使用する時に。
そしてMマウントで好き放題。どっぷり、お楽しみください。