PHOTO YODOBASHI
ヨドバシカメラ公式オンライン写真マガジン
LEICA M10 Monochrom / SHOOTING REPORT
白黒写真しか撮影できないM Monochromが、いよいよM10ベースのアーキテクチャになって登場しました。フィルム時代のM型ライカを彷彿とさせる薄型ボディが心地よく、機能面はM10-Pを踏襲した最新のものになっています。何より注目すべきは、大幅にアップデートした4000万画素のCMOSセンサー。カラーフィルターを排することで得られる「解像度そのままの世界」が本モデルの真骨頂ですから、その画が他に類を見ないものであることは疑いありません。果たしてどれだけ緻密に被写体を描いてくれるのか、どんなトーンで光を表現してくれるのか、素直に楽しみたいと思います。
( Photography : Naz / Text : Serow )
LOOK & FEEL
M10-Pをベースにしたボディで、フィルム時代のM型ライカを知っている方なら馴染みのある厚みになりました。もともとシンプルで控えめを身上としたモデルですが、ボディ自体も徹底的にモノクローム仕様に。トップカバーにLeicaロゴはなく、MONOCHROMの特別な刻印があります。
背面液晶はタッチパネルになり、スワイプやピンチイン、ピンチアウトといった指先の操作で直感的な画像確認が行えるようになりました。これを踏まえて物理ボタンはすっきりと整理され、使い心地は一層スマートに。メニュー類はフォントなどが刷新された最新タイプです。こういったインターフェイスの進化は満足度を高めてくれます。
M10と比較すると、ディテールの違いがよくわかりますね。レッドドットのロゴマークがM10-P同様に省略されています。またレンズ着脱ボタン、シャッターボタンが黒へ、シャッターダイヤルやISO感度ダイヤルの赤字がグレーへ変わっています。
SPEC OVERVIEW
M10 Monochrom | M10 | M Monochrom Typ246 | |
---|---|---|---|
発売日 | 2020年1月25日 | 2017年1月28日 | 2015年5月29日 |
センサーサイズ | フルサイズ 36×24mm | フルサイズ 35.8×23.9mm | |
センサータイプ・画素数 | CMOSセンサー 4089万画素 | CMOSセンサー 2400万画素 | |
映像エンジン | LEICA MAESTRO II | LEICA MAESTRO | |
ISO感度 | 160〜100000 | 100〜50000 | 320〜25000 |
連写速度 | 4.5コマ/秒 | 5コマ/秒 | 3コマ/秒 |
ファインダー倍率 | 0.73倍 | 0.68倍 | |
有効基線長 | 50.6mm (69.31mm × 0.73) | 47.1mm (69.25mm × 0.68) | |
静音シャッター | ○ | - | - |
動画 | - | 720P、1080P/24、25fps | |
背面液晶 | 3インチ 103.68万ドット | 3インチ 92.16万ドット | |
タッチパネル | ○ | - | - |
Wi-Fi | ○ | - | |
防塵防滴 | ○ | - | |
サイズ | 幅139 × 高さ80 × 奥行き38.5mm | 幅138.6 × 高さ80 × 奥行き42mm |
スペック表をご覧いただければわかりますが、基本的にはM10-Pの仕様を受け継ぎ、高解像度センサーを搭載したモデルとなります。一度手にしてしまえば長く使えるのがライカの良いところではあるものの、先代モデルであるM Monochrom (Typ246) から5年経過していることもあって、顕著な進化があります。映像エンジンの刷新、高感度の強化、連射性能の向上。ピント合わせに影響する有効基線長やファインダー倍率の拡大も嬉しいポイントですね。M10で実現したボディサイズ、防塵防滴、Wi-Fiはもちろん、M10-Pより受け継ぐ静音シャッターと背面タッチパネルが撮影フィーリングをより良いものにしてくれました。
PHOTO GALLERY
まずはどれだけ緻密に描いてくれるかワンショット。いやはや、猛烈に写ります。カラーフィルターがないことによる曖昧さの一切ない写りがM Monochromの魅力ですが、解像度と共に単純にその凄みが増していますね。クリックで原寸画像をご覧いただけますので、この情報量をぜひご堪能ください。
撮れた写真を拡大してじっくり眺めていくと、同じ範囲を構成する情報がグンと増え、より濃密なグラデーションで描いてくれていることがわかります。作例画像はどうしても縮小したものになってしまうのですが、階調の豊かさが伝わるでしょうか。
砂の一粒一粒をしっかり認識させてくれる描写。白から黒まで、たくさんのグレーがあるということを改めて感じます。
雨に濡れたテトラポッド、黒々とした表情を生々しく描いてくれました。完全な黒ではない深い色。色彩を持たないぶん、階調を強く認識できるのが白黒写真の面白さですね。
光を繊細に受け止め、濃密なトーンを描いてくれるので、時には「眠い写り」と感じられるかもしれません。しかし、それこそが上質なネガのようなもの。プリントするにあたって、自分好みに仕上げていってもいいのです。
輝度差のあるシーンでも、これだけ描けてしまう懐の深さがあります。そしてこういう写りを手にすると「色がなくてもいいや」なんて思えてくるから不思議なものです。
曇り空にも、たっぷり表情がある。そんな気づきもこのカメラならでは。
ライカらしく、町に戻ってきてスナップを楽しみましょう。M10モノクロームの階調表現ゆえでしょうか、被写体の質感を描き出す力が抜群だと感じます。緻密な描写も含め、中判カメラの雰囲気といっていいかもしれません。
例えばこんな、ありふれた街角の一コマ。なぜだか格好いいでしょう?
高感度にも強くなったのが本機のポイント。感度を上げれば暗いレンズでも夜のスナップができますから、表現はさらに自由になります。ISO 3200なんていうのは常用感度で、クオリティも立体感も損なうことはありません。
こちらはISO 12500です。クリックで原寸画像をご覧いただけますので、ディテールがどのように描かれているか、お確かめください。
この上ない画質で、世界をキャプチャーする喜び
M型ライカの使い心地で気軽に撮った一枚が、開いてみれば中判カメラのようなクオリティで写っている。M10 Monochromの衝撃はそのようなものでした。肉眼を超えるレベルの緻密な描写を残してくれるので「撮った写真を眺める」という撮影後の行為が、純粋に面白くなります。モニタにかじりついて1枚1枚じっくりと確認し、何が写っているか、どう写っているかということにワクワクする。写真を撮る楽しさの原点はこういうことにあったよねと、改めて気付かされてしまうような圧倒的画質なのです。一度手にしてみれば、カラー画像をモノクロ変換するという方法では飽きたらなくなるでしょう。あるいはお手持ちの(カラーで写せる)デジタルカメラが、少し物足りなくなってしまうかもしれません。
ライカという趣味性の高いカメラであり、白黒しか写せないというストイックな1台です。このカメラに食指が動く方は、もしかしたら既に先代モデルをお持ちかもしれませんね。そうであれば買い替えを躊躇する必要は(お財布の問題を別にすれば)ないと思います。これからM10モノクロームに手を出そうという方には・・・新しい世界が待っているとだけお伝えしておきましょう。みなさまのお越しをお待ちしております。
( 2020.03.12 )
ライカのカメラは数年で陳腐化するモノではありません。唯一無二のM10モノクロームなら尚更。例えばお値段を5年で割ってみるとどうでしょう。安い買い物に思えてきませんか?
レンジファインダーらしからぬ写真の追い込みを行うなら、電子ビューファインダーが便利。ビゾフレックスと名付けられているのもニヤリとしますね。
M10モノクロームこそ活きてくる究極の50mm。真価を味わうには、これを手にしないわけにはいきません。
あらゆるシーンをドラマティックに描いてくれる魅惑の大口径。ズミルックスがあれば心が一旦落ち着くはずです。
50mmレンズなら沢山持っているというあなたに、75mmのアポズミクロンをおすすめします。本レビューにもたっぷり作例がありますよ。
まるで広角レンズを3本持ち歩くような、使い勝手のよい1本。意外と盲点になるトリエルマーを、ぜひ選択肢に加えてください。
バッテリーが1本で済むなんていうことはないですよね。2本でも3本でもお好きなだけどうぞ。
ホールディングをさらに良くするサムグリップ。ビゾフレックスと併用できない点はご注意を。