PHOTO YODOBASHI

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Kodak EKTAR H35, Ultra Max, 1/100, F9.5, ISO 400, Photo by NB

Kodak EKTAR H35

2022年7月に発売されたコダックのフィルムカメラです。割と最近の話だと思っていたら、もう3年も前なんですね。フォーマットはいわゆるハーフサイズ。シャッタースピードは単速(1/100秒)で絞りもF9.5固定。ただでさえ被写界深度が稼げるハーフサイズにこの絞り値なら、もうピントを合わせる必要は無いですね。感度の設定はもちろん使うフィルムに依存。つまりフィルムを入れた後に撮影者が行う操作は、「フィルムを巻き上げる」「レリーズボタンを押す」のみ。それ以外の操作はしたくても出来ません。価格は2025年7月現在、ヨドバシカメラで税込8,850円〜11,920円(機能が追加された「H35N」を含む)。さて、このカメラのシューティングレポートで私は何を書いたらいいのでしょうね。シャドウの粘りがどうだとか、写りのキレがどうしたとか、そういうことじゃないのは明白なんですが。

以下、すべて私事です。共感してもらえる部分が少しでもあれば(特にかつてフィルムで写真を撮っていた世代の方に)、という程度の駄話でございます。

( Photography & Text : NB )

Kodak EKTAR H35, Ultra Max, 1/100, F9.5, ISO 400, Photo by NB

私が写真を始めた当時、デジタルカメラの元祖のようなものは既にあったように記憶していますが、普通に「カメラ」と言えば、まだフィルムのそれのことでした。現像、プリントを自分でやり始めてからはさらにのめり込み、時が巡って周りがみんなデジタルになってもしつこくフィルムで撮り続けておりました。そんな私もいつしか機材はデジタルに置き換わり、最後にフィルムで撮ったのは10年以上前。「いつかまたフィルムで撮りたいなあ」なんて漠然と思っているのですが、最近のフィルムの価格を見るにつけ、なんとなく萎えて今に至る。そういう御仁、多いと思います。

Kodak EKTAR H35, Ultra Max, 1/100, F9.5, ISO 400, Photo by NBそんな中での超久しぶりのフィルム撮影。当然、気分はアガります。とは言え、かつてさんざん撮ってきたのですから、フィルムだからといって身構える必要は無いわけです。ま、フィルムを巻き上げる懐かしい感触を心ゆくまで楽しもうではないか・・・なんて呑気なことを考えていました。その時は。

Kodak EKTAR H35, Ultra Max, 1/100, F9.5, ISO 400, Photo by NBところが、です。撮り始めてすぐに感じたのは、手応えの無さ。つまり、自分の意図通りの写真が撮れたかどうか確信が持てない。何度シャッターを切っても同じ。毎回モヤモヤしたものが残る。

Kodak EKTAR H35, Ultra Max, 1/100, F9.5, ISO 400, Photo by NB要するに、撮ったものをその場でプレイバックすることに慣れきっているのですね。かつてフィルムで撮っていた時は、シャッターを切った瞬間に「よし撮れた!」という手応えがあったのに、今では結果を確認することでしか手応えを(そんなの、もはや「手応え」とは呼べませんが)感じられなくなってしまった。その事実を突きつけられたわけです。

Kodak EKTAR H35, Ultra Max, 1/100, F9.5, ISO 400, Photo by NB撮ったものをすぐに見られるデジタル。当たり前過ぎて今やそういう感覚は皆無ですが、これは便利なことです。便利なものにはすぐに慣れる。今回軽くショックを受けたのは、その「慣れ」が、自分の中に思いのほか頑固にこびりついていたこと。


Kodak EKTAR H35, Ultra Max, 1/100, F9.5, ISO 400, Photo by NB

翻って、デジタルネイティブの若い人たちは(こういう言い方はホントに年寄り臭くてイヤだけど、その通りなんだからしょうがない)、今フィルムカメラを使ってどう感じるのだろうと想像してみます。このカメラを買う人の殆どは、リアルタイムでフィルムを知らない世代の筈。

Kodak EKTAR H35, Ultra Max, 1/100, F9.5, ISO 400, Photo by NB

おそらく、若いみなさんはこんなモヤモヤを感じることは無いのでしょう。まったくの別物と捉えて、それを心の底から楽しんでいるように見えます。

Kodak EKTAR H35, Ultra Max, 1/100, F9.5, ISO 400, Photo by NB

確かに両者はまったくの別物です。だからそういう感覚で撮れれば良いのだけど、でもおじさんって、そこまで器用じゃないのね。だって、どっちもリアルタイムで知ってるんだもの。その代わり、「かつて撮っていたんだから、いつでも “そこ” へ戻れる」という自負がありました。しかし今回、そんなものは木っ端微塵に吹き飛んでしまったわけです。今思えば、しょーもない自負でした。

Kodak EKTAR H35, Ultra Max, 1/100, F9.5, ISO 400, Photo by NB


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「筈」

このカメラのメインの購買層は、リアルタイムでフィルムを知らない世代の人たちでしょう。だからこそ、敢えてここでは、かつてフィルムで写真を撮っていた(そして今は身も心もデジタルに捧げている)みなさまにお勧めしたいのです。

フィルムで撮っていた頃を思い出してみましょう。「上手く撮れている筈」というだけで満たされましたよね。その「筈」を拠りどころとして、現像やプリントまでの時間をワクワクしながら過ごしましたよね。「筈」がその通りになることもあれば、「筈だったのに・・」ということもありました。いずれにせよ、すべての結果を甘んじて受け入れました。「筈」って、そういうものです。

ところが、いつしか世の中が「筈」という曖昧さを許容できなくなりました。今やどんなことでも、瞬時に、正確な答えを見つけられる。「筈」の居場所は、都合の悪い質問をされた時の返事以外にはもう無くなってしまいました。写真も同じ。撮った瞬間に答えは明らか。でもそれを世知辛いとか、フィルム時代はよかったというのではありません。

今回、手応えの無さに我ながら驚いたわけですが(もちろんカメラのせいではなく、自分の問題)、撮影が楽しくなかったかというと・・・これがめちゃめちゃ楽しかったんですよ。それは、あの懐かしい「筈」を満喫できたこと。「果報は寝て待て」という諺がありますが、そんなこと言われるまでもなく、そうする他ないのです。液晶の隅々まで確認しなくても、写真なんてもっと鷹揚に構えて撮りゃいいんだよなと、改めてそういう気持ちになれた。いや、ならざるを得ないというか。上手く言えませんが、シャッターを切るたびに自分がリセットされてゆく感覚がありました。これが楽しくない筈がありません。

ライカとか、ローライフレックスとか、素晴らしいフィルムカメラはたくさんあります。でも、そういうのはみんな売っちゃったじゃないですか。それよりも、何の操作も必要ないこういうプリミティブなカメラこそ、今の自分にとって理想のフィルムカメラのような気がしませんか? 今さらフィルムに戻るのは不可能だし、別にそうしたいわけでもない。でもこのカメラ、いろいろ考え過ぎちゃった時のために1台常備しておくと、やんわり、じんわりと効き目があるようです。

注)
  • 作例画像は、ヨドバシカメラのDPEサービスにてスキャンされたデータをそのまま使用しています(PY編集部での加工は掲載に必要な切り抜きのみ)。
  • フィルムスリーブの状態で掲載しているカットは、フィルム部分を後から付け加えた演出です。

( 2025.07.01 )

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まずはベーシックモデルの「H35」から。全5色ありますが、ここでは「サンド」をスペースの都合で割愛。

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そして機能が追加された「H35N」。こちらは改良されたコーティングレンズ、三脚穴、バルブ機能、内蔵スターフィルター機能が加わっています。

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「H35N」は全7色。こちらも「光沢オレンジ」をスペースの都合で割愛。

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こちらはBTS(防弾少年団)とLINE FRIENDSのコラボレーションにより誕生したキャラクターブランドBT21とKODAK(コダック)EKTAR H35Nのコラボ商品。

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