PHOTO YODOBASHI
ヨドバシカメラ公式オンライン写真マガジン
Insta360 X5 / SHOOTING REPORT
Insta360 X5は、全方位を撮影できる「360度カメラ」の最新モデルです。180度を超える視界をもった魚眼レンズおよびセンサーをカメラの前後両面に装備し、それぞれが捉えた映像をソフトで合成することで、前後上下左右を一度に捉えた映像を得ることができます。Xシリーズも随分と進化してきましたが、X5最大の特徴は大型「1/1.28インチセンサー」と、プロ・イメージング・チップ2基を含む「AIトリプルチップ」を新搭載したこと。画質が先代からさらに向上しています。また、ウインドガードを内蔵し風切り音対策も万全。その他様々な改良が施されています。まずはサンプル動画からご覧ください。
( Photography & Text : TAK )
Insta360のブランドスローガンは「Think Bold.」。細かい事を気にせず、自由に遊ぶのがこの手のカメラの真骨頂ですよね。そしてこんなサンプルより、はるかに大胆な映像が撮れるポテンシャルを持ったカメラであることは間違いなく、使い切れないほど多彩な機能が備わっています。やはり画質の向上が著しいですね。センサー周りの刷新により暗所に強くなったのはもちろん、明所でも階調に深みがあります。解像度も11Kソースからのスーパーサンプリングを経ての8K。編集次第で低下するのは止む無しとしても、極端にズームしない限り全く不足はなく、カテゴリー史上最も説得力を持った映像が得られます。
風切り音の抑制も素晴らしい。前面レンズ下、マイク前面に設けられた六角形のウインドガードの効果は絶大です。通常は「モフモフ」等の風防で対策するところですが、こちらは外観もスッキリ、取り扱いも楽ちんです。手ブレ補正も強力ですね。超広角でぶれにくいこともありますが、それにしても効きます。唯一、自撮り棒経由で自転車に装着し時は独特の揺れが認められましたが、人体の手ブレとは違った自撮り棒のしなりに起因するものでしょう。そして、編集時のワークフロー。これがとってもスムーズです。ソフトウェアがよく出来ていて、パソコンでもスマートフォンでも簡単に編集できます。現場ではアングルさえ気にせずとにかく撮って、後で全てを編集していく感じですね。
興味深かったのはサンプルの途中でもお見せした、2つの魚眼レンズが捉えた素の画像です。これを元に、歪曲、倍率、アングルなどを変えながら映像を作る仕組みだと思うのですが、地理の授業で習った地図投影法を懐かしく思い出しました。立体を平面上に写し出すことは一筋縄ではいきません。形状、面積、距離、方位など全てを同時かつ正確に表すことは不可能。有名なメルカトルをはじめモルワイデ、心射など多くの図法がありますが、どれも一長一短で目的に応じて使い分けられています。立体をいかに平面に表現するかに腐心する、、、どこかで聞いたような話だなと思ったら、レンズ設計にも共通する話なんですよね。360度カメラは「色物」と捉えられがちなジャンルかもしれませんが、カメラの原理を最も分かりやすく教えてくれる意味では、超正統派のカメラでもあります。
パソコン用の専用ソフト「Insta360 Studio」の編集画面です。主な作業内容は「リフレーム」。360度のデータの中から、どの範囲をどのように見せるかを選ぶ作業です。マニュアルを読まずとも試行錯誤していけば、すぐに操作できます。フレームを変化させたいタイミングを決めたら、まずキーフレームを打ちます。そして画角や形状など、どのようにリフレームするかを決めます。中央下のパネル内で黄色くハイライトされた、丸いレンズのようなアイコンは「クリスタルボール」、球体の中にいるような映像にリフレームしてくれます。そこから右へ「小惑星」(小さな惑星に立っているような映像)、「メガビュー」「超広角」「デワープ」「リニア」(この4つは画角と歪みの程度が違う)と、見せ方をワンタッチで変えることができます。さらにその下の数字で表された項目では、パン、チルト、ロール、FOV(Field of View:視野)、歪曲を細かく定めます。キーフレームの間は自然に繋がるように映像を変化させてくれますし、変化の緩急も自在にコントロール可能。ともかく、このリフレーミング作業が地図投影法を想起させ、実に楽しいですね。通常の機材では得られない境地から、まるで神でもあるかの如く、世界を選んでいくのですから。
スマートフォンのアプリ画面です。左から順に映像ができるまでの主なキャプチャ画面を並べています。パソコンはじっくり映像を作り込むのに向いているのに対して、こちらはより気軽に編集できるのが特徴です。特にAI処理が素晴らしい。「AIフレーム」はAIが分析してリフレームしてくれる機能で、3番目のキャプチャ画面がその結果です。「推奨」に加えて「代替案」も用意してくれますよ。4番目の画面は「AI編集」ではリフレームだけでなく、カット割り、トランジション、音楽など、つまり完成品レベルまで仕上げてくれちゃいます。もちろん手動でも編集出来ますが小さなタッチスクリーンでは操作も辛かったりしますから、スマートフォンでは思い切って人工知能先生に一任し、何が出てくるのかワクワクするくらいが正解かなと思います。「今こんな所にいるよ!」などとシェアする時にも、チャチャッと編集できる方が助かりますよね。
電池の容量が先代からアップし、よく持つ印象です。いつもの癖で、隙を見てはモバイルバッテリーで充電していたのですが、そんな事をせずとも1日くらいは撮り切れたでしょう。電池室にはmicroSDカードスロットもあります。
USB-C端子。操作パーツも少なく、簡単に操作できます。レンズ剥き出しなので取り扱いには注意したいところですが、そもそも強度が高く、しかも交換も可能。オプションでレンズガードやカバーも用意されています。
360度ワールドは、今が一番楽しい。
まずは頭を空っぽにして、とにかく撮ってみる。そして発見を楽しみながら、見せたい世界を選んで作っていく、そんなカメラです。厳密にはカメラの側面、つまり2つのレンズが捉えた映像の合わせ目、つまり合成時の「縫い目」になる面を正面に持ってこない方が、画質面でもより安心ではあります(縫い目の部分はゆらゆらと見えることも)。ただ、基本的にアングルという概念は一旦忘れて、とにかく録画ボタンを押してみる。これに尽きます。特に面白いのは、後方など撮影時の視界になかったものまで写っていること。そんな超越的なデータを元に、見たいように編集できるのがこのカメラ最大の強みです。鳥とか馬はこんな視界なのでしょうか。鳥の眼も出っ張っていて視野が広そうですが、両眼の間の部位は眼球に比べるとかなり大きいので、死角はあります。だからこそ、常に首を振って全方位を捉えようとしているのでしょう。鳥に比べると死角だらけの人間ですが、我々にはInsta360 X5があります。この、今まで使ったことのない脳の部位が刺激されるような、不思議な感覚。パワースーツが人間の動きをアシストしてくれるように、視覚能力がちょっと拡張されたような気もして、刺激的です。拡張と言えば、114cmまで伸びる自撮り棒もご用意されることをお勧めします。直径がカメラの厚みと同じで「写り込まない」仕組みになっています。厳密には写っているはずですが、180度の範囲外に写っていて合成時にうまいこと消されるからくりかと思われます。ビューンと伸ばせば俯瞰構図も自在。自転車などに取り付ければ随走車からの視点も得られます。撮影の際は周囲に危険が及ばぬよう、細心の注意をお忘れなく。
このジャンルが初登場した頃の移動通信システムは、3Gから4Gに移行しているような段階でした。パソコンや端末等の能力も動画編集にはまだ力不足で、4K映像をシェアすることにもためらいを感じたものです。周辺環境もカメラ並みにアップデートされ、全ての足並みが揃った2025年、360度撮影はかつてないほどに快適になっています。まさに今が、Insta360 X5で楽しむ最大のチャンスです。どんなに高価な交換レンズでも、このユニークな世界は写せないのです。何だか難しそうで手を出してこなかった方、あっけないほどに簡単ですので、是非新しい世界に飛び込んできてください。工事や検査の現場など、通常のカメラが入り込めないようなシーンでもきっと重宝するでしょう。
( 2025.06.25 )
初めての方にこそお勧めしたい、ちょっとした全知全能の視点。味わってみませんか。
カメラ本体に自撮り棒、レンズガード、予備バッテリーなどの必須アイテムがポーチに入ってこのお値段。実は一番のオススメです。
交換用のレンズと交換用の道具がセットになっています。レンズを傷付けてしまっても、自分で交換できるのは心強いですね。
カメラの冷却とスクリーンの保護を両立させた、画期的アイテム。割と大きめのスクリーンなので、是非とも揃えておきたいところです。
マルチコートガラスを採用することで、標準レンズガードよりも更に鮮明な画質を実現します。
単体でも15メートルまで潜れるX5ですが、さらに潜りたい方は是非こちらを。もちろん、レンズにはその姿が写らないようになっています。
USBカバーまで交換用を用意するあたり、アフターケアも手厚いですね。
雨や水しぶきの中でも充電ケーブルが使用可能。防水ではありませんが、給電しながらバイク撮影といったシーンで活躍してくれます。
便利な専用クイックリリースマウント。自撮り棒側に装着しておけば、カメラにさっと取り付け可能です。
まずは自撮り棒だけあればいいよという方は、こちらをどうぞ。