PHOTO YODOBASHI
ヨドバシカメラ公式オンライン写真マガジン
FUJIFILM XF16-55mmF2.8 R LM WR II
[ズーム] 広角 | 標準 | 望遠 | 高倍率
[単焦点] 広角 | 標準 | 望遠 | マクロ
富士フィルムのXマウント向けF2.8通しの標準ズームとなる「FUJIFILM XF16-55mmF2.8 R LM WR II」が登場しました。モデル名の通りこちらはII型となり、I型と比べ大幅なダウンサイジングを実現しながら、画質の向上も実現した意欲作となります。まずその大きさですが、I型が最大径:83.3mm × 全長106mmに対し、II型は最大径:78.3mm × 全長:95mmと短く、そして細くなりました。数字だけ見ると11mm短縮された全長に目が行きますが、実際に手にした時に違いを大きく感じるのは5mm細くなった最大径。手のひらから感じるスリムさは明らかにひとまわり以上、同じスペックの大口径レンズを手にしているとは思えない程です。加えて重量もI型の655gからII型は410gと37%も軽量に。メーカーサイトによれば体積も38%減とのこと。
元々Xマウントのカメラは、APS-Cサイズのセンサーを活かし、フルサイズセンサーのカメラと比べてコンパクトなサイズ・重量となっていますが、その割にI型のレンズはやや大柄に感じるものでした。「画質優先だから仕方がないよね」とは思いつつ、本音では「もう少し軽快だといいのに」と感じていた方も多いでしょう。II型となる本製品は、Xマウントのカメラボディとのバランスがよいサイズ感にまでぎゅっと凝縮したような印象。今回撮影に使用したX-T5にマウントしてみると、ボディとの重量バランスが大きく向上しています。その重量は961g、一般的なフルサイズセンサーの上級機にF2.8通しの標準ズームレンズを組み合わせた約2/3の重量となるわけで、実際に1日ロケに出てみると、その違いが数字以上のものであると感じられるでしょう。さて、大きさ・重さの話はこれくらいにして、作例をご覧ください。
( Photography & Text : Naz )
標準ズームというものは使用頻度が高いレンズだけに性能も欲張りたくなるものです。一般的なF2.8通しの標準ズームレンズが24-70mm(ズーム比約2.92倍)に対し、本レンズは35mmフルサイズ換算24-84mm相当(ズーム比約3.5倍)と約20%もテレ側が延長されています。
中望遠域を多用するポートレートの撮影ではもちろんのこと、風景やスナップ等様々な撮影シーンでその恩恵にあずかることができるでしょう。こちらのカットは望遠端から少し引いて40mm(フルサイズ換算60mm相当)で撮影したもの。同じ撮影位置でもワイド端までズームリングを回せば、サムネイルのように全く異なるワイドな画角が手に入ります。
フジノンレンズらしい開放から端正かつ精緻な描写です。ベンチのパンチングホールや床の石材等を緻密かつ正確に描き、ガラス窓やハイライトとなる桟の存在感も忠実に再現してくれています。メリハリのある写りは、コントラストがある条件を気持ちよく写し取ってくれました。
上級機であるX-T5やX-H2で採用されている40MPのAPS-Cセンサーは、多くのフルサイズセンサーの高画素機で採用されている60MPと比べ40%以上密度が高いものとなっていますが、そのセンサーが持つ高い解像力にも十分に応えてくれる性能を感じました。ピントのキレも素晴らしく、EVF越しでもそれが十分に認識できるほど。画像のクリックで原寸画像をご覧いただけますが、中心部と遜色のない周辺部の画質をご確認ください。
デジタルカメラには難しいオーバー気味の条件ですが、ハイエストライトの海面や空からディープシャドウとなる堤防の影や人物まで余すことなく描いてくれました。これは広いダイナミックレンジと良好なトーン再現を実現するためのレンズとセンサーのマッチングがよいということ。冬の硬い陽射しや澄んだ空気感も上手に表現してくれました。
薄暗くフラットな光で捉えた硬質な被写体です。ガラス窓、鉄製の桟や手すり、ペンキが塗られた壁面、それぞれの質感も手に取るようにわかります。特にオートバイのタイヤのゴムやマフラーの塗装、ライトのレンズ、丸いタンク、メタリックなホイールとスポーク等々、ガラス越しで情報が曖昧になりそうなところですが、このように画として成立できるのはレンズとしての本質的な性能が高いからだと言えるでしょう。
最短撮影距離はズーム全域で0.3m。I型は0.6m(マクロ時で広角時:0.3m ~ 望遠時:0.4m)でしたから大幅に短縮されています。ボケ量についてはAPS-Cセンサーとなるため、フルサイズセンサーのF4相当とわずかに小さくなりますが、テレ端・最短撮影距離での被写界深度は開放で5mm程度と十分に浅く、不足するような条件はほとんどないでしょう。ピントのピークが明確で絞り値以上に浅く感じます。またピント付近は緻密に描くのに対し、アウトフォーカスとなった部分はややあっさりとした描写に感じられます。しっとりとした写りが美しいですね。
シフォンケーキではなく、敢えて添えられたミントにピントを置いてみました。立体感があり、写り込むそれぞれの距離が正確に再現されています。ズームレンズですから、自在にフレームを追い込めるため、身体を前後させることなく望み通りに構図を組み立てられました。開放で撮影しましたが、ケーキを写すには実際には1~2段絞って被写界深度を深くするのがよさそうです。
絞りはI型の9枚からIIは11枚の円形絞りへと向上しています。美しいボケ玉は年輪のような模様が見えない美しいもの。サムネイルはF5.6まで絞ったものですが、ボケ玉はきれいな円形を維持しています。
X-T5のボディと合わせても約1kgと軽量かつコンパクトですから、最上級のシステムを持っているとは思えない軽快さで様々なフィールドへ持ち出すことができます。ボディと同様に防塵防滴・耐寒性能も高いため、登山のように軽さとタフさ求められるアクティビティでも大活躍してくれそうです。
Xシステムに最適化、軽快で頼もしいオールラウンダー。
多くの方が常用レンズとされる標準ズームレンズは、明るさだけでなく様々なスペックが要求される設計の難しいレンズ。Xシリーズでは高い画質を実現するため、I型はやや大柄といえるサイズ感でした。今回登場したII型では、同等以上の画質と多くのスペックの向上を実現しながら、大幅なダウンサイジングも実現し、Xシステムのカメラボディとのバランスも良好なものになりました。写りにおいても高性能な単焦点レンズと比べても遜色がなく、しかも画角の自由度の高さを考えると、最早「手にしない理由が思いつかない」と外堀を埋められた感すら抱いてしまうものでありました。レンズ構成は11群16枚。I型もそのサイズ通りに贅沢な構成でしたが、小型・軽量化されたII型も非球面レンズ4枚、EDレンズ3枚、スーパーEDレンズ1枚と、最高の写りを実現する為の拘りが詰まっているようです。また使い勝手に於いても、AFは静粛かつ高速に動作し動体にも強い印象でした。絞りリングには大型のロックスイッチが設けられ、レッドバッジの横には絞りのデクリックスイッチも備わるなど、動画撮影にも十分な配慮がされています。「XF16-55mmF2.8 R LM WR II」は、Xシリーズのハイエンドレンズとして期待を上回る総合力を実現し、シリーズ全体を底上げしてくれる頼もしい1本になっている言えるでしょう。
- 他のカットでわかる通り、歪曲収差は良好に補正されているが、画角によっては気になることもありました。このカットは18mm付近で撮影。ただこの程度の歪みならば後処理でどうにでもなりますね。
- 唯一の弱点は逆光性能。ゴーストはよく出現しました。敢えて派手に出た状態で撮影しましたが、少し角度を変えるだけでも変化しますから、本レンズを使いこなせる方ならいくらでも対処できるかと。
- 開放時の周辺減光は空のような濃淡が出やすい被写体で目立つことがあるものの、数段絞れば解消します。富士フイルムらしい濃厚な色再現も見事。
( 2025.01.17 )
同スペックのI型からの買い替えさえも躊躇は不要なレンズ性能でした。値は張りますが「買ってよかった!」と心の底から思える1本です。
純正フィルターはスーパーEBCコーティング!