PHOTO YODOBASHI
ヨドバシカメラ公式オンライン写真マガジン
Voigtlander ULTRON 27mm F2
[ズーム] 広角 | 標準 | 望遠 | 高倍率
[単焦点] 広角 | 標準 | 望遠 | マクロ
富士フイルムXマウント用に専用設計された「Voigtlander ULTRON 27mm F2」をご紹介します。レンズの全長はマウント部からわずか約2.35cm、質量は120gと、とにかく薄くて軽いパンケーキレンズになります。一般的には「長い」「短い」でレンズの大きさを表しますが、ここまで突き詰められると「薄い」となります。だからパンケーキ。フルサイズ換算で40mm相当の画角となり、50mmよりは画に緊張感を作りません。そのため少しカジュアルに撮ることができ、しかも緩すぎないフレームでまとめることができます。気の向くままにレンズの先を向けても楽しいでしょうし、開放F値も明るめなのでボケを活かした撮影も楽しめそうです。鏡胴のカラーはシルバーとブラックの2種類。コンパクトなボディとの相性は特に良さそうです。
( Photography & Text : TA )
まず良いなと感じたのがピント面の立体的な描写と透明感。全体を見渡しても雑味を感じさせず、扱いやすい印象を持ちました。
被写体的には少し絞った方が画のまとまりとしては良いものですが、特徴の出やすい開放で。シーンを問わず、少し湿り気をおびたような描写で艶がのる印象です。キッチリ写りますが硬調一辺倒にはならないあたり、写りのバランスの良さを感じます。画角やF値等から想定される撮影用途において相応しい写りのように思います。
ファインダーを覗いていても気になるような歪みはなく、悪目立ちするようなフリンジ等も見られません。従って気楽に振り回すことができます。またAPS-CのF2ですからピント合わせも楽です。テンポ良くシャッターを切っていける爽快なレンズです。
本レンズはフルサイズ換算で40mmF2.8相当となり、輪郭やディティールを残しながら立体感のある画を作りやすいです。ラフに撮っても概ね良い感じの写真に仕立ててくれます。そういった成功体験が積み上がっていくのは嬉しいもので、撮影が楽しくなります。
至近距離でもピントに芯があって文句なしの写りです。像の分離が良く、見せたい部分を浮き立たせてくれました。最短撮影距離は25cmで取り回しも良いです。テーブルフォトも座ったままいけますし、物の形も素直に写りやすい。飯撮りや物撮りも上手くこなしてくれそうですね。
繰り返しになってしまいますが、輪郭やディティールを残しながら立体感のある画を作りやすいので空間や奥行の表現にも長けています。日常的な距離感で、身近な人を捉るのもうまいレンズだろうなと感じます。
量感のあるボケ味です。またトーンを丁寧に拾い上げてくれるのでコントラストにも気品があります。突き抜けたものは感じませんが、普段使いに理想的な写り、そんな印象です。
主役のない集合体、こういった被写体をラフに撮っても40mm相当の画角だと案外まとまります。これが50mm相当なら切り取るか、1歩2歩引いて撮影していたと思います。カジュアルさがあって、しかも緩すぎないフレームでまとまりやすいこの画角もまた、日々の記録には好都合です。それにしてもなかなかパワフルな画で尚且つ繊細さも感じます。写りだけを見ていると小さなレンズであることをすっかり忘れてしまいます。
ボディキャップ代わりだけじゃない、実践的な描写力。
今回マウントさせたカメラがXシリーズの中では大型のX-H2ということで、ボディキャップさながらなバランスと相成りました。ルックス的には、薄くてソリッドなレンジファインダースタイルのカメラが良く似合いそうです。間違いなく格好良いでしょうし、小型軽量で写りも良い撮影機材の一丁あがりです。本題に戻しましょう。とにかく魅力的なレンズでした。扱いやすい画角に安定した写り。表現力もあります。ラフに撮っても、概ね良い感じの写真に仕立ててくれるので撮影が楽しくなります。「撮るのが楽しい」「持ち歩きたくなる」そう思わせてくれるレンズでした。操作性においては、薄い鏡胴に絞りリングとフォーカスリングがひしめいているので少々慣れは必要かもしれません。ですが、フォーカスリングには指当てが装備されていますし、ピント合わせもシビアではありませんので、馴染んでしまえばテンポの良い撮影が可能です。また距離目盛りなど、表記ひとつとっても質が高くモノとしての魅力があります。小型軽量はマスト、しかも写りに妥協したくないという方に先ずお試しいただきたいレンズではありますが、カジュアルに扱える標準付近のレンズをお探しの方、マニュアルレンズで撮影に浸りたい方、ルックス重視の方にも満足いただける1本ではないかと思います。ぜひ一度、お試しください。
( 2024.10.17 )
普段使いしたい1本。品質が高くモノとしての魅力にも溢れています。こちらはシルバー。
こちらはブラック。