PHOTO YODOBASHI

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SIRUI 50mm F1.8 Anamorphic 1.33X

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「アナモルフィックレンズ」は映画館で見る横長のシネマスコープサイズの画像を得ることができるレンズ。その仕組みは、被写体をいったん天地方向に伸ばして撮影し、鑑賞時に同じ割合で左右方向に伸ばす(「デスクイーズ」といいます)ことでワイドな画像にするというもの。

FUJIFILM X-T5, SIRUI 24mm F2.8 Anamorphic 1.33X, Photo by A.Inden

左のカットは撮影したままの状態。被写体が天地方向に引き伸ばされて、細長くデフォルメされています。当然、ファインダーではこの状態で見えています。右のカットは左のカットを左右方向にデスクイーズしたもの。シネマスコープサイズの画像になると同時に、被写体も自然な形になりました。多くの画像処理ソフトにはデスクイーズ機能が備わっています。また、撮影時にデスクイーズ状態が確認できるカメラもあります。

「なんでそんな面倒くさいことを?」と思われるかもしれませんね。画素数も十分にある現代のデジタルカメラなら、上下をクロップすれば同じことが出来るわけですから。実はこれ、1950年代に実用化されたムービー撮影の技術。手持ちのカメラや映写機を買い換えることなく、レンズを付け替えるだけでワイドな映像が得られることから、当時はもてはやされたようです。それがなぜ今なのか? その答えは、この独特な写りはクロップでは決して得られないものだから。この超アナログな技術を敢えてデジタルで楽しむ、そこが面白いわけです。むしろデジタルになったからこそ、再び脚光を浴びた技術とも言えます(このアナモルフィックレンズを使って、実際に映画を撮った記事も併せてご覧ください)。

というわけで生まれも育ちも映画畑のレンズですが、これを静止画で使ったらどうなるんだろう? というのが今回のレビューの隠れたテーマです。この大きなアスペクトレシオを自分はどう使いこなすのか、何を感じるのか。いわば自分を題材とした「実験」です。

( Photography & Text : A.Inden )

FUJIFILM X-T5, SIRUI 24mm F2.8 Anamorphic 1.33X, Photo by A.Inden

今回のタイトルは「SIRUI 50mm F1.8 Anamorphic 1.33X」ですが、同時に「SIRUI 24mm F2.8 Anamorphic 1.33X」「SIRUI 75mm F1.8 Anamorphic 1.33X」も使用しており、内容的には3本合わせてのレビューです。アナモルフィックレンズはいくつかのメーカーから発売されていますが、その中でもSIRUIは手に届きやすい価格で写りは本格的。そしてラインアップが充実しているので、初めて手にするにはオススメです。

アナモルフィックレンズの一番の特徴はアスペクトレシオの大きさですが、その描写もなかなかのクセを持っています。一番印象的なのは、太陽、ヘッドライトのような強い光源に対して発生するブルーの水平フレア。このフレアはレンズの構造によるものですが、スパッとカッコよく入るので、意図的に使いたいですね。

FUJIFILM X-T5, SIRUI 75mm F1.8 Anamorphic 1.33X, Photo by A.Inden

次に独特なのがボケ味。アナモルフィックレンズのボケは、構造上楕円形になります。そのボケが、作例のような、なんともいえない不思議な描写を演出します。ボケマニアとしては、この写りのためだけに手に入れたくなりました。

FUJIFILM X-T5, SIRUI 75mm F1.8 Anamorphic 1.33X, Photo by A.Inden

カメラを上に振ると樽型の歪曲収差がでます。ワイドで撮った感があって、これはこれでありではと思いました。

FUJIFILM X-T5, SIRUI 50mm F1.8 Anamorphic 1.33X, Photo by A.Inden


FUJIFILM X-T5, SIRUI 50mm F1.8 Anamorphic 1.33X, Photo by A.Inden

いつもと違う画像サイズのカメラを持つと、狙う被写体だけでなく撮るリズムまでもガラッと変わるようでした。スクエアな比率で撮るときは、音楽が聞こえるような写真を。35mmフルサイズで撮るときはリアルなスナップ。そしてシネマスコープサイズでは映画の1シーンを自然に意識してしまうのです。

FUJIFILM X-T5, SIRUI 50mm F1.8 Anamorphic 1.33X, Photo by A.Inden

FUJIFILM X-T5, SIRUI 50mm F1.8 Anamorphic 1.33X, Photo by A.Inden


FUJIFILM X-T5, SIRUI 24mm 50mm Anamorphic 1.33X, Photo by A.Inden

カメラを縦位置に構えると、あの特徴的なフレアは垂直に現れます。EVFで確認しながら画面からはみ出すよう派手に入れて撮影。太陽だけというシンプルな構図ですが、フレアを積極的に使うことで面白い画を作ることができます。

FUJIFILM X-T5, SIRUI 50mm 24mm Anamorphic 1.33X, Photo by A.Inden

縦位置の写真を2枚並べると真四角写真に。大きなアスペクトレシオを持つシネマスコープが、一転して縦も横もない世界になってしまうという妙。そもそもこれを縦位置で撮るというのが新鮮ですが、さらに組写真と考えると、脳みそのいつもとは違う部分が刺激されます。


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画像サイズだけでなく、描写も魅力たっぷり

ユニークな仕組みでシネマスコープサイズを得ることができるアナモルフィックレンズ。このレンズを手に取ってみたら、自然と映画の1シーンのような写真を撮りたくなりました。映画館で見慣れた画像サイズがそう思わせるのかもしれませんね。しばらく使っていると、新たな魅力に気づきました。それは少しレトロな雰囲気を醸し出している描写。レンズで画像を変形させるというアナログな手法が、描写にも影響を与えているのでしょうか。作例で見ていただいたような、ブルーの水平フレア、楕円形のボケが見せる、このレンズでしか得られない写りに引き込まれました。半世紀以上前のシステムがまだ現役で愛されているのは、この魅力ある描写に他ならないでしょう。動画を撮影するというイメージが強いレンズだとは思いますが、インパクトあるワイドな画像とこのレンズでしか味わえない写りは、静止画でもその魅力を発揮すると確信しました。リーズナブルな価格のSIRUIの「アナモルフィックレンズ」を最高の相棒にしてください。

( 2025.04.16 )

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今回使用したXマウントはリーズナブルな価格。日常シーンを狙うなら50mm。

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風景は最広角の24mmがお勧め。

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ボケ味を楽しむなら75mm。独自のボケの虜になります。

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