PHOTO YODOBASHI
ヨドバシカメラ公式オンライン写真マガジン
Gion Overdrive
7月1日より1ヶ月間続く京都祇園祭。いつもどこかで何かをやっているイメージがあります。祇園祭は平安時代から続く八坂神社の祭りですが、氏子でもない上に歴史もよく知らない傍観者の私でも何だかそわそわしてしまって、気がついたらカメラを持って出かけてしまうのです。ひとつの祭りにはそれぞれ由来や伝統があり、見るべきものも多いのですが、それでも「こんなにクソ暑い中、自分は何をやっているんだろう」と自問することもあるのです。
一体何が自分を掻き立てるのか。おそらく、その場にいるだけで心が躍ってしまうような祭りの空気が、そうさせるのだろうと思います。松明の熱気、雅やかなお囃子や力強い掛け声、精根振り絞って神輿を担ぎ腫れ上がった肩。当事者のギアが変わり、普段とは別人になっているのが伝わってきて、それが羨ましくも思えてくる。自ずと見物人のテンションも上がり、カメラを持った人間はシャッターを押し続けるのです。
「暑い夏、フランス人はバカンスに出かけ街を空けるが、京都人は街自体を別世界に変える」というようなことを言った文化人類学者がいますが、祭りとは別世界を演出することで自身をリセットする、ひとつの知恵なのかもしれません。どさくさ紛れに持論を加えさせていただくと、この暑さこそが障壁となり、それをえいやと乗り越えることで軽いトランス状態を引き起こしているのでは?もし涼しかったらこの祭りにここまでの勢いがあっただろうか?とも思えてくるのです。撮り終えると疲れがどっと押し寄せ、その度にもうこれでいいやと思うのですが、きっと来年もまた、あの空気に誘われて足が向かうのでしょう。
( Photography & Text : TAK )
( 2017.09.13 )