PHOTO YODOBASHI
ヨドバシカメラ公式オンライン写真マガジン
FUJIFILM GFX100S × GF110mmF2 R LM WR / GF32-64mmF4 R LM WR
蒼のさいはて
1億画素という、途方もないスペックを持ったカメラを手にして、いったい自分はどこへ行くのか。自然と頭に浮かんだのは、「さいはて」でした。しかし四方を海に囲まれた日本は、どこもかしこも最果てだらけ。さて、どの最果てへ向かうべきか。無数にある最果ての中から、理想の最果てを探し当てられたかどうか、それは分かりません。しかし最果てには最果てにふさわしい大自然があり、 同時に最果てにも人間の営みがある、という当たり前のことを確認して、私は満足しました。
かつて、大判写真にハマりました。素早く、颯爽と撮るスナップ写真に比べると、大判写真はどうしようもなく鈍重です。装備が大掛かりな上、やることがたくさんあります。時間がかかります。そしてほんのちょっと手順を間違えただけで、すべてが水泡に帰すこともあります。限りなくシンプルな構造のカメラに、安全装置などないのです。注意力も理解力も欠如している人間にとって、それは常に綱渡りの「写真術」でしたが、うまく行った時に得られる満足は文字通り、筆舌に尽くし難いものでした。
富士フイルムのGFX100Sは、私にとってはまさに大判カメラでした。 それは1億画素のセンサーが生み出す高精細でダイナミックレンジの 広い画が、かつてのシノゴやバイテンに通ずるという意味が、まずありま す。4 : 3というアスペクト比が大判を想起させるという理由もあります。 しかしそれだけではありません。被写体に向かう時の緊張感。手順と呼べるようなものは何ひとつ無いにも関わらず、「ここでミスるわけには行かないぞ」と自分にいい聞かせるあの感じ。そういう体験をさせてくれるカメラは、GFXの他にはちょっと見当たらないと思うのです。
( Photography & Text : NB )
特集 35mmオーバーの世界 - 富士フイルム編
( 2022.05.31 )