PHOTO YODOBASHI
ヨドバシカメラ公式オンライン写真マガジン
TAMRON SP35mm F1.8 Di VC USD Model F012E
[ズーム] 広角 | 標準 | 望遠 | 高倍率
[単焦点] 広角 | 標準 | 望遠 | マクロ
「ボディ一台にレンズ一本で出掛けましょう」となったら、35mmを選ぶ人が多のではないでしょうか。写真は「50mmにはじまり50mmに終わる」とよく言われますが、広角に限定して言えば「35mmにはじまり35mmに終わる」と言えるような広角レンズの王道をいく焦点距離です。その35mmにタムロンから開放F1.8の大口径レンズが登場しました。しかも単焦点です。ボケの美しさが大変魅力的なタムロンの大口径・単焦点となれば期待せずにはいられません。さらには最短撮影距離は0.2m、三段分の手振れ補正機構の搭載など、スペックを見ているだけでさらに期待は高まる一方。またこの新SPシリーズ、デザインが驚くほどスマートでカッコいいです。キヤノンEFマウント・フルサイズに対応しているだけあって、ハイエンド機に装着しても映える仕上がり。ボディに装着して撮る前からワクワクさせてくれます。前置きが長くなりました。せっかくの大口径F1.8の描写を味わうべく、今回の作例は絞り開放が多めです(笑)。とろけるようなボケ味をじっくりとご堪能下さいませ。
( Photography & Text : T.Takahashi )
金沢、ひがし茶屋街にある料亭です。絞りを開放にするとシャープさとやさしさが両立されるようで、しっとりとした佇まいをそっくりそのまま写し込んでいます。朱の壁のトーンが実に見事ですね。灯りがつくるグラデーションをより一層気品あるものに仕立てています。
ピント面のシャープさと背景のボケ味の対比、いかがでしょうか。決して強烈すぎることのない、それでいてしっかりと被写体を捉えるピントピークに対して、なだらかに柔らかくボケていく背景が、より一層被写体を引き立てています。また被写体の質感、床面のテカり具合やシャドウ部への階調など、どこを見ても満足できる描写です。
雨がよく似合う金沢の街並み。いわゆる空気感とでも言いましょうか、こういった情景をきちんと捉えるのはもちろんのこと、雨上がり特有の匂いまで思い起こさせてくれるような描写を見せてくれました。スペックシートには現れないレンズの力を感じます。
早朝、剣岳から陽が登るすばらしい光景に出会いました。車の助手席から運転の妨げにならないよう気にしつつ、慌ててシャッターを。急ぎすぎて絞りは開放のままでしたが結果オーライ。フロントガラス越しですが、いい塩梅に周辺光量が落ちて思いがけずドラマチックに仕上がりました。ベストとは言えない不利な条件が重なったものの、くっきりと山の稜線を描き出しており朝のすがすがしさまでもが伝わってきます。
手振れ補正機構のある本レンズなら、スローシャッターも積極的に使えます。このカットはシャッタースピード1/2秒、手持ちでの限界を越していますが、川の流れを描きつつ、岩や草はしっかりと捉えることができました。
遠景をF8で狙ってみたところ、これもまたすばらしい解像力。海のさざ波が見事に描かれています。このキメの細やかさ、ちょっとしびれる写りですね。
35mmという焦点距離はまさにスナップシューター。風景からポートレート、はたまたテーブルフォトまであらゆるシーンを作品にしてくれます。なんでも撮れるからこそ、それはそれで非常に奥が深く難しい焦点距離でもあるのも確か。だからこそ写りのよい気に入ったレンズを持っておきたいところ。本レンズは大口径F1.8をはじめとして大変優秀なスペックが揃っています。そしてそのスペックに止まらないような素晴らしい写りを見せてくれました。ご覧頂いた通り、キレのあるピント面と溶けるような柔らかいなだらかなボケ。開放でほどよく落ちる周辺光量など。品良くとてもしとやかな印象で、誤解を恐れずに言えば、質のいいオールドレンズを現代に蘇らせたように、やさしくも懐深い写りを見せてくれました。そしてまたルックスもグッド。写真の写り同様、しっとりとした質感にスマートなデザインです。マウント部分に施されたやさしいカーブのリングは、質のいい工芸品さながら。こういったレンズこそ持っておきたくなりますよね。ボディ一台に一本だけ選ぶとしたら、私は迷わずこのレンズです。今回の撮影で、確信しました。
( 2015.09.29 )
新しいタムロンを感じる新SPシリーズ、2本とも気合いが入ってますね。35mmの画角を楽しみたい方はこちら。
ハクバが送り出す、高品位プロテクトフィルター。薄枠で目立ちすぎません。