PHOTO YODOBASHI
ヨドバシカメラ公式オンライン写真マガジン
Carl Zeiss Milvus 1.4/35
[ズーム] 広角 | 標準 | 望遠 | 高倍率
[単焦点] 広角 | 標準 | 望遠 | マクロ
Milvusシリーズは基本的にClassicシリーズのレンズ各種のリプレイスとなっており、コーティングなどをデジタルカメラに最適化し、デザインに変更を加えたもので、レンズ構成などの変更が行われていないものがほとんどです。その中にあって、Milvus 1.4/35はディスタゴンタイプを継承しながらも、光学系を刷新。特に色収差に関しては、同社のOtusシリーズに匹敵するほどリファインされていると謳われています。レンズ構成は11群14枚で、非球面レンズを最後部に1枚採用。異常部分分散ガラスについては5枚を効果的に配置しています。また、フローティング機構を採用しており、この機構も収差の抑制に必要不可欠なものとなっています。今回のレビューはキヤノンEFマウント用です。それではさっそくその実力のほどを作例にてご確認ください。
( Photography : A.Inden / Text : A.Inden & Rica )
上2枚の作例は、美しいボケ味を生かすためピントを手前において開放F1.4で撮影。ピントピークはカリカリとしたシャープさではありませんが、被写体の感触がわかる湿度を感じさせる写りでZEISSらしさを感じます。ボケはじめから最後まで均一で、被写体の輪郭がわかる程度に上品にボケていくのもいいですね。焦点距離は35mmですが、パースを感じやすい状況を選べば広角らしい表現も可能です。
最短撮影距離30cm、開放値F1.4のスペックを活かすと、まるでマクロレンズのような使い方が可能になります。前ボケも後ろボケも同じ傾向で素直なボケ方をしています。美しいボケ味を生かしたクローズアップ撮影を、手軽に楽しんでみてはいかがでしょうか。
画のトーンがガラッと変わって、クリアーな描写になりましたね。少し絞ると描写が変わるとはよく言われますが、このレンズも少し絞ることでクリアーで発色もナチュラルに変化します。絞り値を意識して撮影することで描写を変える、これも大口径レンズを使う楽しみのひとつです。
少し絞ることで周辺の減光はほとんど見られなくなります。開放の浮き出してくるような表現とは違い、画面にしっとりと馴染んでいる人物から、また違った存在感が感じられます。
- 157のゼッケンプレート、ハンドル、エンジンとピント位置をズラして3カット撮影しましたが、エンジンが浮き立つような雰囲気がいいなと思いこのカットを採用。35mmと準広角の焦点距離ですが、開放値F1.4で撮影するとピントは十分に薄いです。金属のしっとりした表現はさすがZEISSですね。
- ガラスの質感が美しいです。最短撮影距離まで少し余裕を残して撮影。かなり寄れるレンズなので、自分が撮影したい距離を自由に選ぶことができました。
- かなり人物から離れていますが、開放でMFだとピント合わせに苦労しました。裏話をしますと、この子どもは何度もこの場所を往復していたので、砂浜に残された足跡にピントを合わせておいて、その場所に走ってきたところでシャッターを切りました。いわゆる置きピンです。MFの大口径レンズで動いている被写体にピントを合わせるひとつの方法ですね。
湿度さえも味方につける豊かな写り
開放F1.4でのボケは素直でボリュームもあり、35mmというやや広めの画角でも、十分にボケを生かした撮影を行うことができるレンズです。また、すみずみまで丁寧に画を描き出し、クリアでありながらも緻密な写りをするあたりデジタル時代の現代のレンズであることを実感しますね。それでも、水や金属の独特な表現には大いにツァイスらしさを感じることができ、非常にいいバランス感です。日本の湿度のある空気感、温度感もこのレンズで撮ればしっかりと再現され、ハイライトからシャドーへの豊かな階調を見ると、その空気の重さでさえ味方につけているのだと感じます。どんなシーンでも、このレンズなら想像以上の結果を出してくれる。写欲をそそるだけでなく、絶大な信頼感をも得られる稀有なレンズです。
( 2019.07.29 )
Classicシリーズからのリプレイスとなっていますが、本レンズは光学設計を見直し、新規に作られた一本。色収差も抑制され、シャープかつクリアな描写で心を掴まれるレンズです。
ツァイスのレンズにはツァイスのフィルターをぜひ装着したいですね。こちらはUVカットフィルターとなっていますが、レンズ保護フィルターとして常用できるものになっております。
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