SIGMA 30mm F1.4 DC DN | Contemporary

[ズーム] 広角 | 標準 | 望遠 | 高倍率  
[単焦点] 広角 | 標準 | 望遠 | マクロ

シグマのAPS-Cフォーマット向けの大口径標準レンズ「SIGMA 30mm F1.4 DC DN | Contemporary」の実写レビューをお届けします。本製品は2016年の発売以来、光学性能の高さと手頃な価格により長きにわたり人気を博してきたロングセラーの1本です。マイクロフォーサーズとソニーEマウント向けに始まり、キヤノンEF-Mマウント、ライカLマウント、富士フイルムXマウント、ニコンZマウントと数多くのマウントに対応し、待望のキヤノンRFマウントにもいよいよ対応です。30mmの焦点距離はフルサイズ換算で48mm相当となり、標準レンズと同等の画角を有しています。全長：71.3mm × 最大径：69.0mmとスリムでコンパクトな鏡胴に7群9枚のレンズを搭載し、後端の2枚には非球面レンズを採用。質量：285gと小型のカメラボディともバランスがよい軽量なレンズに仕上がっています。9枚羽根を採用した絞りは円形絞りにも対応し、最短撮影距離は0.3m。多くの大口径標準レンズが0.45m程度となる中、本レンズは約2/3に短縮されています。

( Photography : Z II / Text : Naz )

絞りはF2、最短撮影距離（0.3m）での撮影です。1枚の皿に美しく盛りつけられたそれぞれの食材が持つ質感、瑞々しさを上手に描き分けてくれました。寄れる標準レンズは、料理だけでなく花の撮影でも重宝するでしょう。

ガラス越しに写したトルソーの立体感と生地の質感の描写が見事です。前ボケとなったウィンドウの文字も違和感がなく、赤い背景のボケや発色もナチュラルです。

金属の艶やかな質感描写は、いかにシャドウとハイライトをコントラスト豊かに描けるかが大切ですが、ご覧のとおり申し分ない写りとなりました。マフラーやエアクリーナーカバーの鉄板の厚みや、重量感のあるエンジンブロック、厚い塗装が施されたガソリンタンク等、それぞれの手触りや温度まで伝わってきます。

絞り開放で遠景を撮影してみました。被写体はすべて画面の端に配置されていますが、周辺部かつ無限遠に近い距離でもこれほどまでにシャープな描写が得られました。周辺減光はご覧の通り気になる程ではなく、少し絞るだけでほぼ解消します。冬枯れですべての葉が落ちた桜並木も、春に満開となる姿を思い浮かべながら写してみるのも悪くないですね。

中間距離でも開放からキリリとシャープな描写です。被写体の前後がわかりやすく、前ボケとなった木材や石材もきっちり描いてくれています。

ピントのキレの見事なこと！背景との分離も素晴らしいです。なんてことない被写体ですが、シグマらしいキレと美しいボケにより、おお！っと被写体を注視させる画力のある写りです。EVFからもキレのよさがよくわかり、鑑賞時だけでなく撮影時も楽しい気持ちにさせてくれました。

引いて撮ればワイドレンズのような画になるのが標準レンズの便利なところ。

人物ポートレート的な距離感で撮影しました。開放ではこの通り。大口径望遠レンズのように背景を完全に溶かしてしまうことはできませんが、人物と分離しつつその場の雰囲気として残してくれるボケ感も自然でいいですね。

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Artラインに肉薄する描写力
F1.4シリーズ4本すべてを揃えたくなりました

冒頭にも書きました通り、本レンズは多くのミラーレスマウントに対応し、それぞれのレビューをご覧いただくと判るとおり実力の高さは折り紙つき。もちろんRFマウントでも期待を裏切らない写りは健在でした。Contemporaryラインに属し、その手頃な価格から「入門向けレンズ」とイメージしている方もいるかと思いますが、シグマが誇るハイスペックレンズであるArtラインにも肉薄する描写力は、むしろハイアマチュア・プロの方におすすめしたいほど。もちろん、最初に手にする大口径単焦点レンズとしても間違いのない1本です。シグマのAPS-C向けF1.4の大口径単焦点レンズのシリーズ（16mm、23mm、30mm、56mm…下部のカートをご覧ください）で揃えられた鏡胴デザインも相まって、4本すべてを揃えたくなる気にさせてくれます。幅広で繊細なマニュアルフォーカスを行いやすいフォーカスリングは繊細なピント操作を行いやすく、高級感あるビルドクオリティにより所有欲も高めてくれます。本レンズのF1.4の薄いピントはズームレンズにはないもの。それを活かした写真表現を存分にお楽しみください。

( 2025.01.17 )