PHOTO YODOBASHI
ヨドバシカメラ公式オンライン写真マガジン
SIGMA 14mm F1.8 DG HSM | Art
[ズーム] 広角 | 標準 | 望遠 | 高倍率
[単焦点] 広角 | 標準 | 望遠 | マクロ
またシグマがすごいものを作っちゃったようです。14mm F1.8 DG HSM。この焦点距離で開放F1.8。性能にふさわしく、見た目もかなりの迫力。最大径95.4㎜、全長126㎜。重さは1kgオーバーです。まったく大人げがありません(褒めてる)。大きくて、重い。その代わりF1.8。この弩級の超広角レンズで何を撮るのか。今回はEYTZ.T氏とTAK氏の二人に撮影をお願いしました。まずEYTZ.T氏は石川県・福井県での撮影。ちょうど撮影に入る日、北陸地方は一部で避難勧告が出るほどの大荒れの天気。「雨がひどすぎて外に出られません」と泣きのメールが入るも、「大変申し訳ないのですが、命に関わらない範囲でなんとかお願いします」とやんわり一蹴したところ、急に雨がやんで日が差してきたとのこと。なんじゃそりゃ。一方のTAK氏は大阪ロケ。こちらもぱっとしない天気予報だったようですが、いざ撮影に出たら青空が出ていたとの報告。ほらごらんなさい。天気なんてね、気合いでどうにかなるんですよ。EYTZ.T氏には「北陸の湿った空気と風物・街並み」を、TAK氏には「ベタな大阪の風景を、14mmで巧みに切り取る」をそれぞれお題としてお願いしました。さて、どんなのが撮れましたでしょうか。
石川県から福井県。雨のち晴れ。
東尋坊の断崖絶壁で、1mmの違いに目が眩む
単焦点レンズに限って言えば、今までに使ったことがある最短の焦点距離は15mm。そして今回、その記録を1mmだけ更新したことになります。わずか1mmでしょって? いやいや。広角になるほど1mmの差は大きくなるわけで、これはもう、明らかに違う。撮影をしていても、あとから撮ったものを見ても、一段とのびやかな画でその差を実感します。ワイドズームではこのあたりの焦点域を持つものがありますが、やはり単焦点はヌケも良く、透明感を感じます。空気をも写し込むというか。
今回掲載した中では開放F1.8は「山羊さん」の一点だけですが、ピント面はシャープで鋭く、それでいて柔らかくボケていく感じが気持ちいい。そしてなんと言っても絞った時!この解像感は見事と言うほかない。ホント、恐れ入りました。絞りをF8ぐらいに固定して、目の前に現れては消えていく光景をパンフォーカスでスパッ!スパッ!と切り取っていく。実に楽しかった。ただ残念だったのは、遠景にエエ感じで佇む人がいても殆ど見えなくなってしまうこと。もちろん、それはレンズのせいではありません。(EYTZ.T)
大阪どないやっちゅうねん
扇情的にして魅惑的にして情緒的。
型破りの超高速超広角。
卓越した表現力が撮り手を(以下略
一番広く。一番明るく。子供にモノを作らせると全ての要素を「最強」に設定したがるものです。グラフィックイコライザーの全てのフェーダーをマックスにするものです。これは子供時代の無限大の夢をそのまま大人が叶えたようなレンズです。
出来ることなら黙っておきたい1,120gという重量。フルサイズカメラにこれをマウントした時点では、正直「街歩き」なんて気分にはならなかった。だがしかし!ワンショット撮っただけで既にその魅力の虜となり、アドレナリンがドバドバと放出される。肩に食い込む重さもなんのその、時間を忘れて街に切り込んでいきたくなるのです。喉が乾いたら水を飲み、腹が減ったらメシを食う。それと同じように、良いレンズがそこにあれば写真を撮り続けるのです。危険なのはアドレナリンが切れた時。ダウンしないように、自分をコントロールしつつ適度に休憩を入れましょう。(TAK)
- ここに立ってファインダーを覗くと、本当に目眩がします。危険です。どうですか、この超絶にシャープでクリアな写り。そして、この立方体が組み合わさったような岩肌や葉っぱの一枚一枚を原寸で観察すると、あまりの生々しさに鳥肌が立ちます。それを体験するには、このレンズを手にするしか方法がありません。体験して欲しいなあ。体験してね。
- 「おっ、ZZ TOPだ」と呟きながら撮った山羊さんの横顔。これは開放です。そして14mmだってことを忘れちゃいけません。相当近寄って撮ってます。怖かったです。山羊の目って、怖いですよね。毛並み、まつげ、ヒゲ、ツノの質感(?)等、よーくご覧ください。これが開放の描写です。背景のボケは少々ワイルドなり。
- 出ました道頓堀グリコサイン。今やLEDですよ。個人的にはネオン時代の力強い表現が好きでしたが、それはともかくF1.8の威力は一粒300メートル以上かもしれません。イルミネーションの明るさがあるとはいえ、夜にISO 100で1/160秒が切れてしまうのです。これならプラス補正する余裕さえ出て来ますよね。あまりに有名で逆に構図に迷うスポットですが、今回は手前を入れて臨場感を出してみました。ちなみにピントは手前の観光客に合わせていまして、よく見ていただくとグリコサインがボケています。「ハイスピードで超広角」がなければ生まれ得ないショットです。
- 最短付近のボケとパースペクティブの競演。もはやクレイジーと言ってもよいでしょう。
もはやシグマのお家芸
シグマが誇る超高性能レンズ群が、ご存じArtライン。そのArtラインに135mm F1.8が加わったのが、まだ記憶に新しい2017年2月のこと。そして今回、このレンズです。これでArtラインの単焦点フルサイズ用(DG)レンズ群は両翼を14mmと135mmのF1.8が担い、その間を20mm、24mm、35mm、50mm、85mmという5本のF1.4が並んだ格好になります。こう書くと、Artライン=明るい大口径レンズ群、という解釈が成り立ちますが(もちろん事実としてその通りなのですが)、これらのレンズの真骨頂はずばり「解像力」です。この点に関してはもう、他の追随を許さないと言ってもいいでしょう。それぐらい、大変なことになっているのです。もちろん明るいことは大事です。14mm、あるいは135mmをF1.8で作るって、もうそれだけで大事件です。一段明るいだけで、我々にどれほどの恩恵があることか。でも、高い解像力があって初めて、レンズの明るさが意味を持つことをシグマは知っています。そして明確にそこを目指して作られていることが、Artラインのレンズを使ってみるとよく分かるのです。
( 2017.07.07 )
超広角ながら、開放値はF1.8というハイスピード超広角レンズ。スケール感あふれるランドスケープだけでなく、星景やホタルの光跡など暗所での撮影にも威力を発揮します。
撮影距離4領域のピント調整が可能なUSB DOCKです。レンズのファームウェアアップデートも行うことができますので、シグマユーザーはレンズとともにぜひ併せてお持ち下さい。