PHOTO YODOBASHI
ヨドバシカメラ公式オンライン写真マガジン
キヤノンEOS Rシステム特集
Chapter 2:とことんEOS RPで撮ってみる
Vol.2 EOS RP + RF35mm F1.8 MACRO IS STM
「とことんRPで撮ってみる」の第二回は、コンパクトなEOS RPに単焦点レンズをつけて小さな旅に出てみました。新宿から電車に揺られること2時間弱、神奈川県の西の端にある真鶴を訪ねてみました。遠い昔、箱根火山の活動によって生まれたという真鶴半島。PYのロケにも何度となく登場していますが、普段は車で訪れるこの地を今回は真鶴駅から、先端の真鶴岬までを徒歩で往復してみました。7時間で歩いた距離は11.3km、18,912歩の旅です。ロケは4月半ばの週末でしたが、桜の季節の直後であり、連休前というタイミングだったせいか、素晴らしい好天に恵まれたものの観光に訪れている人もさほど多くなく、静かな1日ではありました。コンパクトなEOS RPに組み合わせたのは、現時点においてRFマウントで最もコンパクトなRF35mm F1.8 MACRO IS STM。広角レンズとして扱いやすい35mmとしては、F1.8と大口径ながらも、軽量に仕上がっておりEOS RPとのバランスがとてもよいレンズです。しかもマクロと光学手ブレ補正(IS)がついていますから、カメラにレンズ1本だけをマウントして旅に出る…というような使い方にはベストなチョイスだと思います。
( Photography & Text : Naz )
まずは第一印象を。今回のロケで初めてEOS RPを手にしましたが、頭では相当軽いとわかっていても、実際に手にするとその軽さに驚かずにはいられません。兄弟機であるEOS Rにも似たスタイリッシュなスタイリング。しかもEOS RPではファインダー部の突起が抑えられているため、フットプリントこそ大きな差はありませんが、見た目でも手にしてもとてもコンパクトに感じさせます。手にしてみても軽いカメラにありがちなスカスカで安っぽい感じはまったくありません。ボディサイズからすれば大きめでがっしりとしたグリップ、吸いつくような肌触りのラバー、剛性感のあるボディワーク、質感のよいマットな塗装と高級感の演出の上手さはさすがキヤノンといったところでしょうか。
EOS RPに組み合わせたRF35mm F1.8 MACRO IS STMもその明るさからすれば軽量コンパクトな仕上がり。EOS RPと組み合わせても790gとたいへん軽量。ボディがコンパクトすぎるのか、レンズが少々太く感じてしまう程です(笑)。
半島のつけ根にある真鶴駅は高台にあり、静かな住宅街を抜けると家々の間から眼下に魚港が顔を出します。
広角レンズらしい伸び伸びとした画を撮るならば、24mmくらいの画角がちょうどよいと思いますが、1本だけ持ち歩くなら35mmレンズの画角も悪くありません。広角レンズのようにも標準レンズのようにも使える万能さがいいですよね。立体感ある写りは期待以上でした。
食パンの耳を餌に撒いているおじさんがいました。それを狙って水面まで急降下してくるトビ。こちらは何コマかシャッターを切った1コマですが、視界の後方から飛んでくるトビに狙い通りにピントを合わせるのは難しいため、あらかじめ餌の落ちたところにピントを置いて撮影しました。とはいえ、EOS RPは最高5コマ/秒の連写ができますから、こういったシャッターチャンスにも十分な強さを発揮してくれます。
今回のロケではレンズ光学補正のうち、歪曲収差補正、デジタルレンズオプティマイザ、色収差補正、回折補正それぞれをONに、周辺光量補正のみOFFにして撮影を行いました。汎用的には周辺光量補正はONが望ましいと思いますが、こういったスナップ撮影ではレンズの雰囲気も出て、むしろいいのではないかと思います。一度設定するとなかなかいじらない設定項目ではありますが、表現のひとつとして活用してみるのも悪くはありません。
磯遊びをする親子を堤防の上からパチリ。春の穏やかな海を眺めながら、海岸線沿いに歩いていきます。
ちょうどお昼によい頃合いになりました。この先、コース上にお店がなくなることもあり、海辺の食堂で昼食を。あまり食べ過ぎてしまうと歩きずらくなってしまいますから、あくまでも軽めにです。地の魚を使った丼、おいしくいただきました。
フルサイズセンサーでは2400万画素がスタンダードな画素数でしょうか。EOS RPではそれを約1割上回る、2620万画素のセンサーを採用しています。肉眼で見るよりもかなり明るく補正して撮影しましたが、逆光の厳しい条件のなかでも実に緻密に描いてくれます(画像のクリックで原寸画像を表示します)。ローパスフィルターの効きも強すぎず、センサーのキレを感じます。風景撮影でも不足はありませんよね。
EOS RPには、上級機EOS Rのマルチファンクションバーや一眼レフのEOSシリーズではお馴染みのマルチコントローラー(ジョイスティック)は備えていませんが、EVFを覗きながら背面液晶の右側を親指でスライドさせることで、任意の位置へフォーカスポイントを自在に移動できます。EOS Mシリーズで採用された機能ですが、コンパクトなカメラでも操作性を損なわず、しかもフレーミングを固定したまま直感的に操作できたいへん重宝します。
RF35mm F1.8 MACRO IS STMの写りは開放から安定した描写です。絞りは被写界深度のコントロールのためにあると言ってしまっていいでしょう。こちらのカットではF8まで絞り込んでみましたが、緻密さの中に力強さが少し加わった印象です。しかも線が太くならないのが嬉しいですね。また、F1.8の明るさながら、後玉を大きくとるレンズ構成により、前玉は小さくなっています。前玉の大きなレンズは扱いにも神経を使いますから、このレンズではより軽快に撮影できるように感じました。さて、南端の岬まできました。バッグに忍ばせてきたおにぎりを頬張ってから駅へと折り返します。
半島には多くの自然が残っていますが、一方で人の営みも様々なところから感じられます。春、いっせいに開いた花たちが、住宅の軒先や生け垣を華やかに彩ります。このレンズは前ボケがとても美しいレンズですね。こうした被写体で、1/2倍まで迫れるマクロや手ブレ補正が役立ちます。
開放から1.5段絞りましたが、9枚羽根の円形絞りにより、角のない玉ボケが得られるのは嬉しいですね。スペックこそEOS Rより抑えられていますが、236万ドットの有機ELのビューファインダーは見栄えもよく、MF時の拡大機能などマクロ域でピントを追い込むのも楽しい作業でした。
半島の尾根づたいの道を北上します。行きに見えた魚港をより高いところから見下ろします。
しっかり撮れる、しかも軽快。
フルサイズセンサーを載せたカメラといえば、どのメーカーでもハイアマチュアやプロカメラマンに向けた上級機といったものが、これまでの主流でしたが、EOS RPでは一眼レフカメラのEOS KISSシリーズのような軽快感のあるミラーレスカメラに仕上がりました。撮影に出るときでも、気を張らず、肩の力を抜いてカメラを持ち出せます。しかも、いざとなれば期待通り、いや期待以上のリッチな画が手に入ります。スタンダードモデルともいえるEOS Rの後に出たEOS RP。最初は入門機かと思って手にしてみましたが、そんなことはありませんね。上がりを見ていると中級機、いや軽快な上級機ともいえそうな気がします。世の中多くのことでは「大は小を兼ねる」と思いますが、カメラに関しては「小にしか撮れない世界もある」というのも真理。このカメラはそれを最も感じさせてくれる1台に仕上がっています。ぜひ手にしてそれを感じてみてください。
( 2019.05.08 )
一眼レフでいうとEOS 6のポジションでしょうか。しかも軽快さはEOS Kissシリーズ並。なかなかよいところを狙ってきました。
標準ズームレンズでカバーできる画角ですが、単焦点レンズの明快さは使うことで理解が深まります。マクロもISもついた1本をどうぞ。
パンケーキレンズ用と同じ意匠のコンパクトでスタイリッシュなフードが用意されました。厚めのフィルターを使う場合はけられにご注意ください。