実写インプレッション[DP1 Merrill]

 

DP1M IMPRESSION | LONG-TERM REPORT 01

"Merrill"の名を冠したFoveonセンサーの凄まじい描写については、今更説明するまでもないでしょう。DPシリーズの魅力はもちろん、この高画質をびっくりするほどコンパクトなボディに収めていることに尽きます。DP1Mは28mm相当の画角を抑えるカメラですから雄大な景色から街角のスナップまでこなし、旅のお供にぴったりの存在。少し時間をかけて様々な場面に持ち出し、その描写と使い勝手について確かめてきました。今回あらためて感じたのは、これだけ「どんな具合に写っているかな」ということが楽しみになるカメラもないな、ということです。一眼レフのようなファインダーやシャッターの感触がないこともあり、使い心地はコンパクトカメラと変わらないのですが、その写りには驚きの連続。羊の皮を被った狼とは、まさにこのカメラのことです。

( 写真/文:M.Ishizuka )

解像力に優れたボディやレンズを手にしたら、試してみたくなるのはこんな風景。DP2Mでも同様のテストを行なっていますが、画角の違いでこれだけ雰囲気が変わってきます。開けた景色をもれなく収めるなら、やはりDP1Mの出番でしょう。ちなみに画面中央に写るビルの左手、川にかかる橋のあたりを100%のままクロップしたものが左の写真です。川沿いを走る高速道路やその街灯まで描写しており、その凄まじい解像力には舌を巻くばかり。よい景色に出会えたら、DP1Mで撮っておく。拡大して、想像以上の写りに驚く。DP1Mの純粋な面白さは、この繰り返しにあるのではないかと思います。

従来機は現場ではなかなか手応えを感じられない(が、後からPCで見てビックリする)のが正直なところでしたが、背面の液晶モニタも精細になってきちんと写りを確認できるようになりました。100%に拡大して写真の隅々まで眺めていると、まるで観光地のコイン式望遠鏡で街並みを観察しているような気分に。家で何度も景色を反芻できるわけですから、これこそ写真の楽しみの原点と言ってもいいかもしれませんね。

 

目で見た色で撮りたくて、少しオーバー目に振りました。そもそも「白飛びしちゃっていい」と思って撮っているわけですが、RAWで撮っておけばハイキーでもずいぶん粘りますし、後で救済できます。MerrillセンサーのRAWデータは1ファイル50MB近くあり、SIGMA Photo Proでの現像も含め取り扱いにはひと手間かかってしまうのですが、DP1MではぜひRAWまたはRAW+JPEGで撮影しておいてください。あまり枚数が撮れなかったり、現像に手間がかかるとしても、中判フイルムカメラを使っていると思えば手軽なものです。

 

何気ない雨の日の風景も、それぞれ素材の質感がしっかり描かれています。絞りも開き気味になってパープルフリンジが少し発生してしまいましたが、シャープネスは十分。AFの速度も精度も従来機に比べて格段に良くなっていますが、DP1Mの場合は広角レンズならではの被写界深度の深さを利用して、絞りとピントを固定にしたスナップなんていうのもおすすめ。「じっくり撮る」という作法に囚われずに、アクティブで軽快に使ってみましょう。

 

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被写体をあるがままに写す。写真の根源的な目的はそこにあるはずで、DP1Mの描写にはストイックなまでにリアリティを追究するシグマ社の姿勢が伺えます。なんてことのない日常的な被写体に、それこそ今まで撮ろうと思わなかったものに向けてシャッターを切ってみると、このカメラのポテンシャルに気付かされるはず。時に背筋が寒くなる程のリアルな描写は、世界をキャプチャーする純粋な喜びに目覚めさせてくれます。DPシリーズが出た頃にはその描写の良さと、お世辞にもスピーディには撮影できないボディを評して「中判カメラのように」なんていう言い方をされたものですが、Merrillに至っては「大判カメラのつもりで」と評したくなりました。それは決して使い勝手の話ではなく、「残しておきたい景色を記録したくなるカメラ」という意味において、なのです。

 

寄って開放で撮れば、被写界深度も薄くなりこのような具合に。花びら一枚一枚が、質感も立体感もたっぷりに描写され、淡い色合いも目で見た通りに再現できました。ボケもなかなかの具合なのですが、これだけ写るレンズとボディですから、やはりきっちり絞って撮りたくなります。そういう意味では、写真撮影の基本に立ち返らせてくれるカメラかもしれません。

 

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さてFoveonセンサー機で問題になるのは高感度。当然低感度であるほうが良く、できればISO200あたりで撮っているのがおすすめなのですが、実は暗いところが撮れないカメラということはありません。上の写真はISO800で手持ちで撮影したもの。ノイズは少し乗ってきますが、実用的なレベルではないでしょうか。実際ISO800なら開放F2.8、1/30のシャッター速度で、夜が夜らしく写る露出になります。手ブレにはシビアなセンサーですがミラーを搭載しているボディではありませんからシャッターのショックも小さく、手持ちで夜景撮影が狙えるFoveon機ということになるのです。ひとつ頭を切り替えてみれば、これまた素晴らしく面白い世界が待っています。

 

小さくて軽いボディですから、コンパクトカメラ向けの小さな三脚を鞄に忍ばせておくだけでも、世界がぐっと広がります。こちらはシャッタースピード10秒という長時間露光を行った1枚。こういう写真は、DP1Mと三脚さえあれば誰にでも撮れてしまうから面白いものです。よいロケーションを見つけることさえできれば、あとはカメラ任せでOK。今回はじめてトライしてみましたが、長時間露光もかなり良い仕上がりになります。透き通った夜なら、星だって撮れるかもしれません。

 

こちらは手持ちでの撮影。もう少しスローシャッターでメリーゴーランドの動きを出したいところですが、自分の腕前ではこのぐらいが限度でした。1/8や1/4までなら気合いでいけるという方、ぜひお試しを。

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使い勝手も著しく良くなって・・・と言ったら言い過ぎなのでしょうか。シグマのカメラを愛してきた方なら大いに頷かれることと思いますが、DP1 Merrillになってインターフェイスも良くなり、普通に使って普通に写るカメラになったと感じます。これなら初心者にもオススメできるぞ!なんて言っていいかはともかく、Foveonセンサーの魅力をより多くの方が楽しめる存在が生まれたことは間違いないでしょう。決して「玄人向けカメラ」と考える必要はなく、「自分じゃ使いこなせないだろう」なんて思い込む必要もありません。もちろんより良く撮るコツというものはありますが、結局のところ、ブレずに・きちんとした露出で・丁寧に撮影する、という基本に立ち返ることが結果に繋がります。

このコンパクトさでこの写り。とにかく痛快なDP1Mの世界を、ぜひお確かめください。

 

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山登りに大きなカメラを背負う必要はなくなりました。眼前に広がる世界を、このカメラで写してください。

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バッテリーだけは、本当に持ちません。ボディにあらかじめ2つ付いていますが、スペアを用意しておくことを強力におすすめいたします。バッテリーの数だけ、気持ちが豊かになりますので。

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スナップ好きにおすすめしたいのは外付けファインダー。背面液晶をオフにした撮影スタイルで軽快&バッテリーも長持ち。一石二鳥とはこのことです。

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