LEICA SL (Typ 601), VARIO-ELMARIT-SL 24–90 mm f/2.8–4 ASPH., 1/60, F8, ISO50, Photo by K

LEICA SL (Typ601) | SHOOTING REPORT

35mmフルサイズよりも大きなセンサーを搭載する「ライカS」と、M型デジタルの「ライカM/M-P (Typ240)」の中間に位置するモデルとして「ライカSL (Typ601)」がこのたびリリースされました。確かにボディ軍艦部・背面などの意匠はユーザインターフェイスも含めて「ライカS」とよく似ており、兄弟機といったところなのでしょう。しかし今回のテストで使い込んでみた印象は、ライカM型と一眼レフの好いとこ取りといった印象でした。ライカM型は、まあ言ってみればライカM3の時代からいわゆるミラーレス機です。感材がフィルムからセンサーに置き換わり、最新のライカM (Typ240)であっても、カメラとしての基本構造は変わりません。CMOSセンサーを搭載し、スルー画(ライブビュー)も可能、外付けでEVFも搭載・利用可能です。レンジファインダーを搭載しマニュアルフォーカス専用機という点を除けば、ライカM/M-P (Typ240)はいわゆるミラーレスカメラに分類できるのです。「ライカSL (Typ601)」は純然たるミラーレスカメラであり、ライカSに通じる操作系が印象的なのですが、実際に使い込んでみるとガッチリとした剛性感、光学ファインダーにまたひとつ近づいたのではないかと感じられる見えの素晴らしいEVFと、頼もしい印象です。小さく軽くといったことだけに執着するのではなく、ミラーを取り除くことでライカSのシステム全体をコンパクト化し、さらにライカM型には叶えられない機能と使い勝手を載せた、全く新しいシステムという解釈が妥当でしょう。有効画素数2400万画素・ローパスレスと、ライカM/M-P (Typ240)に似たスペックですが、画作りも同じ線上にあります。ただし、ライカM型よりもさらに洗練された印象を受けました。今回は標準ズームのみのテストとなりましたが、このVARIO-ELMARIT 1:2.8-4.0/24-90mm ASPH.の描写力も素晴らしいものがありました。このシステムにライカカメラ社がかける意気込みが伝わってきます。テレ端の開放値がF4となりますが、画質を追い求めてのことでしょう。個人的な話で脱線しますが、常々F2.8通しの標準ズームのテレ端がもう少し伸びないのだろうかと思っていましたが、開放F値が落ちても90mmまで伸びるのは大変ありがたいですね。まあなんと申しましょうか、市場で一般的とされるミラーレスカメラというもののコンセンサスを横にさておき、あくまで自社の撮るためのラインアップを多角化するために生まれたカメラなのでしょう。このあたり、あっぱれと言うべきでしょう。写真を生業とする皆さんが、ワークフローの中に取り込めないかなと考えそうな1台です。そしてその実力の程は上のカットをご覧いただければおわかりいただけると思います。

( 写真・文 / K )

LEICA SL (Typ 601), VARIO-ELMARIT-SL 24–90 mm f/2.8–4 ASPH., 1/50, F4, ISO50, Photo by K

今回ライカSL (Typ601)を連れて、東北に出かけてきました。テストするレンズが、大口径単焦点などであればまた違ったかもしれないのですが、いかにも性能の高そうな標準ズームです。落葉した景色がこれでもかと拡がり高周波な画が撮れると考えたためですね。・・・調子に乗って竜飛まで車を走らせました。立ってるのもやっとの強風、打ち付ける雨。感度自動制御でISO50、シャッター速度は1/50。約3.5段分の手ブレ補正機構の助けも借りて画は止まり、波の紋様をシャープに写し込み、同時に厚く垂れ込める雲を量感豊かに写し止めてくれました。両側下は雨が降っています。決してレンズの片ボケではありませんのであしからず。ライカのデジタルカメラは中間の階調の出し方に特長を感じます。中間が厚いのですね。ライカM/M-P (Typ240)に比べると、シャドーおよびハイライト側の階調がさらになだらかになった印象です。このあたりは進化を感じさせますね。

LEICA SL (Typ 601), VARIO-ELMARIT-SL 24–90 mm f/2.8–4 ASPH., 1/80, F4, ISO64, Photo by K

前段のフリから・・・もう一枚細かい木々が入り込んだカットを。十和田湖を見下ろせる場所から撮影したカットですが、もうアッパレといった解像力です。単にシャープなだけでなく、1本1本のラインが太らず実に緻密に描かれるあたり画作りの上手さを感じます。そしてレンズの光学性能そのものの力をまざまざと感じさせられますね。遠景部分は、強烈に光が差しコントラストがついているわけでもなく、フラットな光に包まれています。ややもするとだらしなくハイライト部分の色が抜け、浮いて見えそうなものですが、きちんとシャドーと描き分けられているあたり秀逸だと感じます。

LEICA SL (Typ 601), VARIO-ELMARIT-SL 24–90 mm f/2.8–4 ASPH., 1/80, F8, ISO64, Photo by K

茅葺きの屋根にピントを置いて解像力を見てみたのですが、、まあコメントするまでもありません。見たままを写し込む力、それがこのカメラとレンズであり、曖昧さなどが介在する余地がありません。言ってみれば、技量がストレートに写り込むので、機材の"味"とやらに頼ろうとすると自分が凹んでしまう写真が量産されてしまいます。

LEICA SL (Typ 601), VARIO-ELMARIT-SL 24–90 mm f/2.8–4 ASPH., 1/60, F3.7, ISO64, Photo by K

ライカM/M-P (Typ240)と比較して、ハイライトのいなし方に進化を感じたカットです。光の捉え方も感じ入りますが、なにより立体感がよいですよね。2400万画素ローパスレス、レンズの基本性能の高さが、現実の光景のサンプリング力を押し上げて、この立体感に繋がるのでしょう。

LEICA SL (Typ 601), VARIO-ELMARIT-SL 24–90 mm f/2.8–4 ASPH., 1/30, F11 ISO80, Photo by K

開放から大変に優秀な描写力を誇りますが、絞っても線が太ったり画の雰囲気が変わることはありません。実に線の細い描写です。

LEICA SL (Typ 601), VARIO-ELMARIT-SL 24–90 mm f/2.8–4 ASPH., 1/50, F3.7, ISO250, Photo by K

感度自動制御(ISO AUTO)で殆どを撮影しましたが、手ブレ補正機構との統合制御なのでしょうか、シャッター速度を見るともう少し感度が上がってもよいのではないかと感じるほど、低感度側を用いるようです。しかしよく止まるレンズです。テレ端までは伸びていませんが、それでも1/50といえば少々不安なシャッター速度です。ボディのホールドのしやすさも影響していると思いますが、手ブレ耐性が大変高いという印象です。

LEICA SL (Typ 601), VARIO-ELMARIT-SL 24–90 mm f/2.8–4 ASPH., 1/40, F6.4, ISO640, Photo by K

かなり暗かったため、ISO640まで自動的にゲインアップしています。ノイズは全く気にならないレベルであり、ライカM/M-P (Typ240)などと比べてさらによくなった印象です。しかし肉眼で見てるかのような、霞みのまったく感じられない描写です。長年使い込まれた手すりの艶感などが見事に再現されています。

LEICA SL (Typ 601), VARIO-ELMARIT-SL 24–90 mm f/2.8–4 ASPH., 1/125, F4, ISO50, Photo by K

ベンチにピントを置き、女性の足下はアウトフォーカス。これがきっちりEVFで視認できました。光学ファインダーの気持ちよさはともかく、これだけ"見える"のならEVFに置き換わっても問題ありませんね。

LEICA SL (Typ 601), VARIO-ELMARIT-SL 24–90 mm f/2.8–4 ASPH., 1/80, F4, ISO160, Photo by K

ボケ味は、前がスムースで後ろが少しクセを感じます。往年のM型ライカ用、初代の固定鏡銅ズミクロン50mmのような雰囲気かもしれませんね。

LEICA SL (Typ 601), VARIO-ELMARIT-SL 24–90 mm f/2.8–4 ASPH., 1/500, F8, ISO50, Photo by K

青森で日本海側に移動しての1枚。波が立ち上がる部分に注目してみると、ここまでその形がきっちりと写し込まれるカメラはなかなかないかもしれません。筆者がテストした中ではシグマのSD/dpシリーズあたりでしょうか(シグマSD1作例)。ベイヤー配列のセンサーでここまで写り込むようになったかと感じ入ってしまいました。

LEICA SL (Typ 601), VARIO-ELMARIT-SL 24–90 mm f/2.8–4 ASPH., 1/160, F4, ISO50, Photo by K

なんとも、、生々しい。

LEICA SL (Typ 601), VARIO-ELMARIT-SL 24–90 mm f/2.8–4 ASPH., 1/400, F4, ISO50, Photo by K

誌面の都合もあり、そして一応セレクトの際にはストーリーとして連なるようにと考えるのですが、大根も載せさせてください(笑)。言葉は要りません、しかしこの質感いかがでしょうか。

LEICA SL (Typ 601), VARIO-ELMARIT-SL 24–90 mm f/2.8–4 ASPH., 1/250, F4, ISO50, Photo by K

往年のズミクロンのようだ、と評したのは、この後ボケの雰囲気にあります。後ろとの距離にもよりますが、少しクセを感じます。個人的にはするっと抜けるよりは好みの描写なのですが。作例はテレ端・最短付近です。ここまで寄ってはじめてほんの少しだけ球面収差を感じます。

LEICA SL (Typ 601), VARIO-ELMARIT-SL 24–90 mm f/2.8–4 ASPH., 1/400, F4.5, ISO50, Photo by K

背景までの距離が十分にある場合、後ボケのクセはまったく感じられません。

LEICA SL (Typ 601), VARIO-ELMARIT-SL 24–90 mm f/2.8–4 ASPH., 1/400, F4.5, ISO50, Photo by K

PHOTHO.YODOBASHI

一眼レフを置き換えられる、そんな期待を抱くカメラ

まずテストで使い込んでみて感じたのは、ボディの手応えです。堅牢かつハンドリングし易いボディ。シャッターのフィール、ファインダーの見えと、「撮れた」という手応えを感じるボディです。まったく妥協が感じられない性能を有したレンズと、これなら一眼レフシステムのサイズダウンのために手にしてみたい、そう感じたテストでした。ボディの発売時点では標準ズームのみのリリースであり、M型レンズやR型レンズを所有しているユーザが第一ターゲットとなるのかもしれません。しかしそこはライカ社自身がアナウンスするとおり、フランジバックの短いカメラです。M型のマウントアダプタさえ入手してしまえば、その上にさらにアダプタを取り付けることで、事実上(?)交換レンズは山のように存在することになります。ライカM8では、ローパスフィルターを取り払うのみならず、画作りを追求する上でIRカットフィルターすら省略したのではないかと言われるライカ社。やはり画には説得力を感じます。ボディだけでも手に入れるというのは楽しいかもしれませんね。しかし、とにかく撮り切るための相棒としてチョイスして欲しい、そんなことを感じるカメラ・レンズ、システムでした。

( 2015.11.20 )




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これからのカメラのあるべき姿を具現化したもの、それがLeica SL (Typ601)。一眼レフやミラーレスの概念を一蹴する新しいシステムです。それだけの価値あるものですから、お値段に躊躇してはいけません。

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SL用にリリースされる最初のレンズ。ライカならではの妥協を許さない、ズームレンズとは思えない描写性能がここにあります。

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