「LEICA S-SYSTEM」の解説をするのは実は簡単なのです。35mmデジタル一眼、それもフラッグシップのカメラ並か、それより少し小さく軽いボディ。なのに、35mmフルサイズより大きなセンサーを搭載。一般的な中判デジタルでシステムを構築する際、フイルム時代にリリースされたレンズが中心となりますが、LEICA S-SYSTEMは、LEICA Sというデジタル・ボディに専用設計の全レンズ群。描写が悪かろうはずがありません。もし、中判デジタルのシステムを1から構築するとなると、全てがデジタルに最適化され、全てがほぼ同時期に開発されたこのトータルでの完成度は大変アドバンテージが高く、その完成度・画質を考えれば、ひょっとすると他に選択できるシステムの中では最もコストパフォーマンスが高いのかもしれません。もしあなたが何らかの中判デジタルシステムのユーザーだったとして、レンズの完成度、システム全体の完成度・ユーザビリティに何らか不満があるとしましょう。LEICA S-SYSTEMなら、全てを解決してくれる上に、一級の写りを手にすることができるのではないでしょうか。これから1からシステムを構築するのであれば、言うに及ばず、ダントツにおすすめできるシステムだと言えます。「こんなスゲーの、何撮ればいいの?」ロケに出る前に色々と考えました。LEICA S-SYSTEMの最大の特徴は、画質とサイズを究極にバランスさせた点にあります。「35mmライクなアピアランスなら、それと同じ扱いをすればよい」と決め、中判ならではの表現力を活かしつつ、35mmライクな奔放な撮影と、色々と試してみました。特に流し撮りなんかは、4×5フィールドカメラを手持ちで流し撮りするような妙なヤバさがあって、なかなか楽しかったです(笑)ページ下で、簡単に作例解説を掲載しています。合わせてご覧頂ければ幸いです。

( 写真/文:K )


 

LEICA APO ELMAR-S 1:3.5/180 MM
ポートレートなどで活躍しそうなレンズですが、この焦点距離だと風景撮影でも活躍間違いなし。APOが入っているだけあって、原寸で見ても色収差などは見受けられない素晴らしい描写のレンズ。厳冬の雪原に立ち尽くすその力強さを、絞り込むことで細かな枝までシャープに写し込んでトライしてみました。※手持ち撮影

 

 

LEICA ELMARIT-S 1:2.8/30 MM ASPH.
35mm換算で21mm相当くらいでしょうか。その枝振りを眺めていると、街を俯瞰した際に見える道路のよう。なんとなく生命の集合体に見えてきます。画面の隅々まで全く破綻の感じられない描写。それでいて適度な柔らかさもあります。 ※手持ち撮影

 

 

LEICA SUPER-ELMAR-S 1:3.5/24 MM ASPH.
全ての音を飲み込んでしまう、そんな無の世界。被写体までは10mから15mほどでしょうか。この空気感を縦位置でフレームするには、この17mm相当あたりの画角が必要に。※手持ち撮影

 

 

LEICA SUMMARIT-S 1:2.5/35 MM ASPH.
霧ではなく、立っているのもつらい程の吹雪で、わずか7-8m先の木立が霞んでいます。結構な広角ですが、周辺光量もかなり豊富な方でしょう。※手持ち撮影

 

 

LEICA APO ELMAR-S 1:3.5/180 MM
大きなセンサーならではの、被写界深度の浅さ。スローモーションのVTRを見ているように、舞い降りてくる雪を捉える。とりあえずやってみたくなりますよね(笑)開放から文句の無いシャープさ。※手持ち撮影

 

 

LEICA VARIO-ELMAR-S 1:3.5-5.6/30-90 MM ASPH.
バンコクの寺院内にて。こちらは、無造作に金箔を張り付けた仏像がそこかしこにあって面白かったです。このズームレンズは、単焦点に何らひけをとらない素晴らしい描写に、これまた驚きのコンパクトさ。この1本とボディだけでそこそこのものは撮れてしまいます。外ロケには強力な1本。※手持ち撮影

 

 

LEICA SUPER-ELMAR-S 1:3.5/24 MM ASPH.
有名な涅槃像。しかしこれだけの超広角で、この写り! いやはやとてつもないレンズです。素晴らしいの一言。シャープさといい、トーンといい、ぐうの音も出ない写りです。※手持ち撮影

 

 

LEICA VARIO-ELMAR-S 1:3.5-5.6/30-90 MM ASPH.
ワイド端が結構広く、これが本当に重宝するズームです。手持ちでは厳しいシャッター速度かもしれませんが、レンズもボディも大変にコンパクトでホールドも考え抜かれていて素晴らしい。だから撮れてしまうのですね。流石に絞り込む余裕は無く、下の方はフォーカスから外れますが、ボケ味も好ましいのです。※手持ち撮影

 


 

LEICA SUPER-ELMAR-S 1:3.5/24 MM ASPH.
そのスケールも大したものですが、装飾のきめ細やかさたるや感嘆ものです。強逆光にも関わらずこの描写。シャドーのディティールもきっちり出てるあたり、このレンズの素性の良さが伺いしれますよね。※手持ち撮影

 

LEICA SUPER-ELMAR-S 1:3.5/24 MM ASPH.
申し訳ございません、画像に載せてるレンズ名は間違っていますね。24mmが正しいレンズ名です。※撮影データはこの通りです。自分がスケールダウンして仏壇の中に迷い込んでしまったかのような巨大さ。最前列で拝観させていただき、当然三脚は使えませんから手持ち撮影です。

 

 

LEICA VARIO-ELMAR-S 1:3.5-5.6/30-90 MM ASPH.
バンコク郊外のアムパワーという、水上マーケットが有名な場所。ロケは平日に行ったため、水上マーケットはお休み。バスのターミナルで受付の女性に散々「休みだよ!」と行くことを止められましたが、人が居ないところを撮りたいわけです。構わず行って撮影(笑)ここからはM型ライカのように振り回して撮影がコンセプト。本当にM型のように気軽に使えてしまうから恐ろしい。※手持ち撮影

 

 

LEICA VARIO-ELMAR-S 1:3.5-5.6/30-90 MM ASPH.
現地にお住まいの方でしょうか、ベンチで煙草を。タイの国旗とセットに。ワイド端が結構広角なので、スナップ撮影にはもってこい。しかしこちらの人達は、すれ違う人すれ違う人、本当ににこやかに挨拶してくれるし、親切に「今日は休みなんだよ」と教えてくれたり。ちょっとあったかい気持ちになるロケでした。※手持ち撮影

 

 

LEICA VARIO-ELMAR-S 1:3.5-5.6/30-90 MM ASPH.
再びバンコクで。陸橋から数百人の諭吉さんが飛んで行くセットにも関わらず覗き込んで撮影。高所恐怖症なのですが、写真を撮る人達は何故ファインダーを覗くと無敵になるのでしょうか(笑)ぐぐっとテレ端で引き寄せて撮影。※手持ち撮影

 

 

LEICA VARIO-ELMAR-S 1:3.5-5.6/30-90 MM ASPH.
夕方でかなり光量も乏しい状況。1/60なんて一般的な中判デジタルにおいて止めるのは不可能に近いシャッター速度です。しかし撮れちゃうんですよね。※手持ち撮影

 

 

LEICA VARIO-ELMAR-S 1:3.5-5.6/30-90 MM ASPH.
歩道橋の階段、最下段で赤ちゃんをあやすお母さん。あえて広角側で撮影。こんな光景を見ると、文化の違い、言葉の違い、色々違いはあっても、目・鼻・口、人の姿が変わらないなら、世界の何処でもそんなに変わらないなあと感じます。ISO1600で撮影。ノイズはそれなりにのりますが、なにせこのサイズのセンサー。ルポタージュなら十分でしょう。※手持ち撮影

 

 

LEICA VARIO-ELMAR-S 1:3.5-5.6/30-90 MM ASPH.
さて被写体を止めないという暴挙に出ます(笑)LEICA Sの第一のターゲットユーザはコマーシャルの分野の方々だったりすると思いますが、そんな皆さんは何もいわゆる「お仕事カット」なんて見ずとも、そのカメラの実力なんてわかってしまうでしょう。むしろテキトーに撮れるのか!というほうが面白いかなと思いまして。単にネタにつきてきたわけでございますが。。。※もちろん手持ち撮影

 

 

LEICA ELMARIT-S 1:2.8/30 MM ASPH.
ND 8 フィルターを2枚重ねという、さらなる暴挙に出ます。マスターレンズを陵辱するかのようなこの行為。画質はガタ落ちになりそうなものですが、確かに素通し状態で撮影するより、若干シャープさは落ちますが、元々目が痛いほどにシャープ。全く問題ありません。しかしよく写るレンズです。※三脚使用

 

 

LEICA VARIO-ELMAR-S 1:3.5-5.6/30-90 MM ASPH.
タイ名物、3輪タクシー「トゥクトゥク」。もう新規には認可が下りないらしく、今後減少していくそうです。掲載した10倍は流し撮りを行いましたが、価格はともかく本当にぶんぶん振り回せてしまうのですね。中判用のズームレンズを皆さんご存じですか?それはもう、前玉からミサイルが飛んで行きそうなサイズなのが当たり前なのです。大まじめに35mmフルサイズのデジタル一眼に、いわゆる大三元と呼ばれる中の標準ズームを付けたほどのサイズなのです。※手持ち撮影

 

LEICA SUPER-ELMAR-S 1:3.5/24 MM ASPH.
浜松のとあるホテルの一室から。朝方、日が上がる寸前に長時間露光で街の光を写し込みつつ、オーバー気味に撮ることで近未来的な画になるかなと撮影したカット。長時間露光をやると、露光時間と同じ長さでノイズリダクションがかかりますが、この処理具合が抜群で、ノイズの潰し方が素晴らしい。※三脚使用

 

 

LEICA ELMARIT-S 1:2.8/30 MM ASPH.
愛知県の三河湾に浮かぶ、佐久島にて。島内各所に町おこしの一環でアートが置かれているという面白いロケーション。記念撮影をしていた女性二人に声をかけ、シャッターを押してあげるのとバーターにモデルになっていただきます。しかもポーズしていただいたカットでは無く、その合間のカットを採用するという。くれぐれもカメラマンを信用してはなりません(笑)こちらも禁断のNDフィルター2枚がけ。LEICA Sの出で立ちがもっと仰々しければ、こんな撮影思いつきもしません。※三脚使用

 

 

LEICA VARIO-ELMAR-S 1:3.5-5.6/30-90 MM ASPH.
バンコクの夜明け。終始ヘイズの多い場所で、夜明けも独特の雰囲気です。しかしこのトーンは素晴らしいの一言。ヌルくてもダメ、コントラストで画をごまかしていてもダメ。根源的な画質の高さがなければ、こんな風には写らないのですね。※三脚使用