PHOTO YODOBASHI
ヨドバシカメラ公式オンライン写真マガジン
SONY SEL28F20 FE 28mm F2
[ズーム] 広角 | 標準 | 望遠 | 高倍率
[単焦点] 広角 | 標準 | 望遠 | マクロ
35mm版フルサイズをカバーするミラーレスカメラ、ソニーα7シリーズ。そのボディに対応したEマウントレンズのラインナップが充実してきています。ズームレンズと単焦点レンズがバランス良く拡充されていく中で、今回リリースされたのは今まで単焦点では空席だった28mm。F2という明るい開放値ながら小型軽量、且つリーズナブル。それでいて描写力の面でも充分な実力を秘めています。さらに、別売となる2種類の本レンズ専用コンバーターレンズを装着することで、より広角な21mmと、さらにワイドな16mm対角魚眼の画角を得ることもできるという、1本で3倍楽しめるお得感満載なレンズとなっているのです。今回は同時にリリースされるウルトラワイドコンバーター「SEL075UWC」で21mmの画角を併用しつつレポートをお届けいたします。
( Photography : Z II / Text : 4beats )
静謐という言葉がよく似合う和室。硝子障子が部屋からすっと浮き立つように繊細に描写されています。28mmというワイドなレンズでも開放値がF2ともなると被写界深度は思いのほか浅くなり、ボケを活かすような撮り方がで楽しめそうですね。
ファインダーやJPEG画像で見ると歪曲をキャンセルする演算がかかっておりますが、RAWデータを見る限りでは歪まないレンズという訳ではないようです。このカットのような被写体の場合は、直線は直線のままに真っ直ぐ補正してくれることが功を奏しており、部屋の引き締まった雰囲気を忠実に再現するための大事な要素となっていることがわかります。
やさしく降る雨が、笹の葉に情緒を沿えてくれました。絞り開放時には周辺光量落ちが若干感じられますが、気にするほどではないでしょう。むしろ主要被写体にさりげなくスポットライトを当ててくれるような、程よい落ち具合と言えます。
鉄柵の向こうからジッとこちらを睨みつけられ、その威圧感に思わず居竦んでしまいそうですね。こちらも開放で。暗い中にもしっかりと立体感を感じられる、描写力の高さが窺えるカットです。前ボケとなった柵のナチュラルな溶け込み具合も大変好ましく感じます。
最短撮影距離はAF時には29cm、MF時には25cmと、かなり寄れるのでいろいろなアングルにトライできそうです。ハイライトやシャドウの粘り具合も実に見事で、カメラとの相性もバッチリと言えます。
対角で75度という画角は、目の前の光景を漫然と捉えたときの視野に近いようですが、目で見るのと同じような感覚で安易にレンズを向けると、意外と多くのものがフレーム内に入ってきてしまいます。画面内を整理しながら、パースに気を配りつつ丁度良いアングルを捜す。その工程も、広角レンズを使う醍醐味の一つですよね。
これ以上狭くても広くてもしっくりこない。28mmだからこそ捉えられる空間や時間の流れ、意外と多いと思いませんか。
28mmF2と同時に発売になったウルトラワイドコンバーター SEL075UWCを装着すると、21mm F2.8相当のレンズとなります。コンバーターを介しての描写とは思えないほど、画質の低下が最小限にとどまっている印象です。外観上は電気接点やスイッチ類は見当たらないのですが、センサーの働きでコンバーターを装着したことがカメラ側に自動認識され、EXIF情報も連動。データ整理をするときなどでも困ることはありません。
コンバーターを装着してもなお、ハイライトからシャドウに至るまで良好なトーンを得られます。α7シリーズの描写力の高さをしっかりと使い切れるレンズ性能と言えるでしょう。
同時発売のウルトラワイドコンバーター「SEL075UWC」を装着すると21mm F2.8相当のレンズに、2015年5月下旬に発売となるフィッシュアイコンバーター「SEL057FEC」を装着すれば16mm F3.5相当の対角180度の魚眼レンズとなります。まず21mmの画角を得られるだけでも一本で二通りの使い方ができてありがたいですよね。あと一歩下がりたいけど動けないとか、風景をもっとノビノビと写したい、というときにウルトラワイドコンバーターをレンズ前に装着する。それだけで単焦点レンズの画質をほとんど損なうことなく、捉えられる景色が大きく変わるのですから。
幾通りにも楽しめる単焦点レンズ。
小型・軽量で、金属鏡胴の質感やほど良いトルクのフォーカスリングとともに、ボディと一体となってしっくりと手に馴染む。解像度やボケ具合も程よく、トーンや発色に至るまで描写力も申し分無し。ピントの山も掴みやすく、快適にテンポのよい撮影が行える。単焦点の28mm F2として捉えるだけでも充分に満足のいく本レンズはコストパフォーマンスにも優れ、本当に文句の付けようがありません。また歪曲はカメラで補正してくれることを考えれば、α7シリーズのみならず、APS-Cフォーマット・EマウントのαシリーズやNEXシリーズなどに用いてもよいかも知れません。換算42mm相当の画角となり、使い勝手の良いちょっと広めの標準レンズとして重宝しそうです。そしてそこにコンバーターレンズを含めた拡張性を考えると、さらに利便性の高いレンズとなります。こんなに欲張りで良いのでしょうか?(笑)
単焦点の画質を維持しながら画角を行き来できる本レンズとコンバーターレンズとの組み合わせは、いわば3ステップのズームレンズのよう。画質に多少の妥協を強いられる代わりに画角を自在に変更できるズームレンズとは違った、新たな体験をもたらしてくれるでしょう。テレ側で開放値が明るいというところも面白いですよね。単焦点レンズですから瞬時に画角を変更できません。一見不便そうに思いますが、そのことが逆にアングルをじっくりと考えることに繋がってくるのです。ズームレンズを使っていると、便利さに頼ってついつい自分で動かなくなってしまいますから。カメラを構え、前後左右上下に自ら動いて、あらゆる方向からアングルを検討し、それでも画角を替えたいときに初めてコンバーターを付け外ししましょう。そして気持ちにゆとりを持ってアングルを決め、シャッターを切る。ズームレンズを装着しているときにはないゆとりを持って、です。そのゆとりはきっと写真にも現れるはず。28mm単体としても、3ステップのズームレンズとしても、じっくりと愉しめそうです。
( 2015.04.19 )
まずはこれを。コンバーター抜きで考えてもオススメですよ、とっても。
前玉保護の会、推奨。なんたってZEISSのT*コーティングですから。コンバーターを装着する際はフィルターは外して下さい。
僅かな追加投資で、別の世界が開けます。という言い方は胡散臭いですが、21mmの画角が手に入るのですから深く考えるのはよしましょう(笑)
更なる追加投資で、フィッシュアイを楽しみたい方はこちらをどうぞ。28mmとフィッシュアイの2ステップという選択もアリです!