PHOTO YODOBASHI
ヨドバシカメラ公式オンライン写真マガジン
Carl Zeiss Batis 2/25
[ズーム] 広角 | 標準 | 望遠 | 高倍率
[単焦点] 広角 | 標準 | 望遠 | マクロ
ソニーのα7シリーズ(フルサイズEマウント)向けに、カールツァイスからなんと広角のAFレンズがリリースされました。新シリーズ「Batis」の25mm F2レンズです。光学系は、特殊低分散ガラスレンズや非球面レンズを効果的に配したディスタゴン 8群10枚構成。ここ最近、フルサイズEマウント対応の高性能レンズが次々と投入されており、高画素化を推し進めるソニーにおいては、描写性能への要求がかなり高まっていることが伺えます。焦点距離25mmの広角レンズですが歪曲は極めて少なく、画面の隅々まで乱れることなくキリッと結像。解像感あふれる描写は痛快です。開放値はF2スタートの明るいレンズですから、被写体に寄れば背景をぼかすこともでき、表現の幅が広いのも特徴。また、カメラボディに対応すべく防塵防滴仕様を取り入れているあたりも嬉しいですね。さあ、前置きはこれぐらいにしておいて、気になる作例カットの方をじっくりとご覧頂きましょう。
( Photography : 4beats / Text : KIMURAX )
いきなりですが、最短、開放での撮影からです。こういったシチュエーションですとレンズの粗が出やすいものなのですが、とんと見当たりませんね(笑)。むしろ薄いピント面の中で繰り広げられている質感溢れる描写に圧倒されるばかりです。プルンとした水滴の立体感を見事に再現。そして前後に乱れることなくなだらかにぼけていく様は、上質な絵画を見ているようです。ふと見つけた小さな感動をそのまま持ち帰ってくることができる広角レンズ。これはかなり使えます。
続いて背景の距離を変えて開放で。フォーカスしたのは一番左の葉先。葉脈までしっかりと丁寧に解像しています。開放からなかなかの切れ味を見せてくれますが、硬くなりすぎないところがいいですね。ボケは量感をともなっており、ボケ自体にも立体感を感じることができます。特に光の差し込んだ地面のあたりは、もう少しうるさくなってもおかしくはないのですが、実にいい塩梅に馴染んでいます。
広角ですから逆光耐性も気になるところ。さすがに真っ昼間の太陽を入れるとフレアが出ましたね。とはいえ画全体の雰囲気を壊すようなものではなく、むしろ日差しの強さまでもがきちんと伝わってくるような仕上がり。フレアが出ないよりは、ほんの少しだけ出てくれたほうが好都合、ということも多々あるわけです。そしてコントラストが大幅に低下するようなこともなく、これだけ高周波な被写体を緻密に描ききってくれるのですから御の字です。
お子さんが動き回っているところも何枚か撮らせていただきましたが、AFは機敏にかつ静かに反応していました。屋外ということもありますが、動作音は静かというよりも、無音と言ってもいいようなレベルでした。おそらくスナップ撮影がメインとなるであろう広角レンズですから、その一瞬を狙うための確かなAFはとても重要です。
少々切り詰め気味の露出ですが、木々や床面のトーンをしっかり残しながら量感を感じることができます。この量感は、ローパスフィルターレス仕様のカメラボディによるシャープさも多分に影響していると思われます。しかし、これだけコントラストが高いのに階調も豊かという、相反するファクターを見事なまでに両立させているところはさすがツァイスと感じ入ってしまいます。
F2という開放絞り値は、被写界深度による表現の幅の広さだけでなく、昼夜、屋内外といった条件をもものともしない、なんとも嬉しいスペックです。高感度特性に優れたカメラ側に頼ればいとも簡単ではありますが、感度を上げずに済むのであればそれに越したことはありませんよね。点光源もしっかり描写しています。
25mmの画角は、振り回すと楽しいですよ。
微妙な光量差を逃さず、豊かな階調で表現しています。カメラ側のダイナミックレンジを活かしきる光の情報を、余すことなくレンズが伝えているからでしょう。
広角ながら隅々まできっちり解像してくれるので少し絞って撮影すれば、あとは構図と訪れる瞬間に気を配るのみ。スナップの醍醐味が味わえます。これだけリッチなトーンと、ヌケのいい描写なのですから文句なしです。
本レンズには刻印された距離指標がなく、ご覧のように有機ELディスプレイに距離と被写界深度の数値が表示されます。暗い場所でも見易いのはいいですね。ただし、眩い太陽光の下ではよく見えません(笑)。ま、そんな時には手で日差しを避けるなり対処方法はあるでしょう。むしろ、明るいレンズが故に光量が不足しがちなシーンでの利便性がしっかりと考えられていると思うのです。なかなか斬新なアイデアですし、レンズデザインにもマッチしています。
撮り手を虜にする「品」と「質」。
隅々まで実によく写るレンズです。開放からあまりにもきりっと結像するものですから、大抵のシーンであればF4辺りまで絞り込めばもう十分という印象でした。気持ちいいほどに解像感たっぷりの撮像なのですが、決して硬くなることが無いのです。そんな微妙なニュアンスを見事にやってのける描写に、ふと「品」みたいなものを感じてしまいました。また、近くの被写体にピントを合わせれば豊かなボケを添えることができ、そのボケ味に関しても同様のことを感じたのも確かです。撮影時のAFは大変小気味よく、もちろんMFにも対応。ほどほどの重量感がありホールドもしやすい鏡胴は、ハイエンドレンズのOtusレンズさながらの仕上げが施されており、使っているそばからしっかりとしたその「質」までもが伝わってくる造り込みがなされています。そのすべてがカールツァイス・クオリティなのでしょう。プロユースの方のお眼鏡にかなう1本であることはもちろんのこと、ソニーのフルサイズ一眼が気になっているという方にもぜひこのレンズの存在を広く知って欲しいとつくづく感じました。大自然から都会まで、身を置いた場所で見たものや気になったものを、みずみずしく持って帰ってくることができるレンズですから。さあ、まずは手にしてみてください。あなたの創作意欲をぐいぐいと刺激してくれるはずです。
( 2015.07.18 )
このレンズを使うために、ボディをもう一台。そんな気にさえなってしまう圧倒的な描写力です。
大切な前玉を保護する、ZEISSのフィルターです。