PHOTO YODOBASHI
ヨドバシカメラ公式オンライン写真マガジン
SIGMA 30mm F2.8 DN
[ズーム] 広角 | 標準 | 望遠 | 高倍率
[単焦点] 広角 | 標準 | 望遠 | マクロ
F2.8という比較的「控えめ」な開放値で単焦点レンズを用意するには、それなりの理由があります。高い描写性能を実現しながらコンパクトに収め、それでいて手頃な価格で提供すること。コストパフォーマンスに優れた本レンズは19mmと共にArtラインとしてブラッシュアップされ、一層魅力的な選択肢になりました。画角としては準広角〜標準という使いやすいゾーンで、大きく写したければ被写体に寄り、広く写したければ離れる、という写真撮影の基本を教えてくれる1本。キットのズームレンズからレンズ交換式の世界をスタートした方なら、次に手にするべきはこんなレンズでしょう。写真のクオリティがレンズによって変わることは、よいレンズを手にして初めてわかる世界です。
( Photography : Z II / Text : M.Ishizuka )
ゾクッとするほどに艶めかしい写り。反射する写り込みがボディのラインを浮き上がらせ、ペイントの質感がよく伝わります。目で見た光景に合わせてアンダー目の露出ですが、シャドー部のトーンが良いですね。きちんとした階調の連なりが、被写体を存在感豊かに写しだしてくれます。
輝度差の大きいシーンですが、こちらも粘り強く撮れています。窓ガラスの向こうの帽子も、原寸では織目がわかる写り。決してカリカリという印象ではないのですが、十分なシャープネスと自然なボケが得られます。
逆光にも大変強いレンズで、このあたりは現代レンズの面目躍如というところでしょうか。オールドレンズを漁るような方々からは「面白みがないよ」なんておかしなコメントがついてしまいそうですが、圧倒的にこれが正しいのです。強い光源にも安心してレンズを向けることができますね。
敷き詰められた石畳を覆う苔の表情を、隅々までシャープに描いてくれました。画面の隅まで破綻のない優秀な描写ですから、画面の外までも想像させる写真になるのですよね。開放でこれだけの写りですから申し分ありません。
派手な開放値を持ったレンズではありませんが、ボケは素直で、ごく自然な違和感のない描写を見せてくれます。大口径レンズで得られる被写界深度の薄い写真が記憶のなかの光景だとすれば、本レンズで得られるのは目で見た風景に近い世界。視線をきちんと被写体に誘導し、背景から際立たせるには十分、かつ丁度よい塩梅なのです。
寄ってマクロ的に使うのはいかがでしょうか。焦点距離としては広角ですが、きちんと構えれば何も問題はありません。
さらに寄って一枚。これだけ寄ると被写界深度は薄く、ボケのスムースさがよくわかります。背景の溶けかたやグラスのグラデーション、美しいですよね。
Artラインとして生まれ変わった30mm F2.8 DN。NEXと合わせるにもぴったりのルックスですよね。同シリーズは19mm / 30mm / 60mmという3本でラインナップされましたが、オールラウンドに使える本レンズは単焦点レンズをはじめるには最適な選択と言えそうです。ズームできないことで却って撮影テンポが良くなったり、撮りたいように獲るために自分が動くことを覚えたり、被写体との距離が写りにどんな変化をもたらすかを感じたり。使い込むことで自然と色々なエッセンスを教えてくれるのが、単焦点レンズの良さでもあります。日常的な撮影に使いやすいスペックで、常用レンズとしてボディにつけっぱなしになるとしても、決して不思議はありません。
Artラインの新デザインでリニューアルされた30mm F2.8。スマートに決めるならブラックです。
シルバーもなかなかの風合いですよね。ボディを選ばないのはこちらでしょうか。悩ましい選択です。
フィルターを一枚つけておくと安心ですね。UVフィルターはこちらです。
少しステップアップした撮り方には、PLフィルターなんていかがでしょう。