PHOTO YODOBASHI
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PENTAX K-S2 / SHOOTING REPORT
ペンタックスから「ペンタックスらしさ」てんこ盛りの一眼レフ「K-S2」がリリースされました。 「K AF2マウント」を採用しAPS-Cサイズのセンサーを搭載した同社のカメラともなれば、もはや防塵・防滴構造に小型軽量なのは当たり前の感がありますが、なんと「防塵・防滴対応で世界最小」だそうで、これまで以上に撮影環境を選ばないボディだと言えます。背面液晶はバリアングルとなり多様な構え方ができるようになったばかりか、なんと「自分撮り」にまで対応。その背面液晶はRGB+Whiteの明るく見やすいものを採用し、しかも液晶本体とカバーパネルの間にある隙間を樹脂を充填させて内部反射を抑えた「エアギャップレス液晶モニター」を採用し屋外でも優れた視認性を確保しています。意外にも同社の一眼レフでは初となるのがWi-FiとNFCへの対応。スマホからのコントロールや撮影後の転送など、これまで以上に便利に使い込めそうですね。そして、もはやペンタックスの伝統ともいえる豊富なカラーバリエーションや、K-S1譲りの光るボディパーツの採用など親しみやすさも忘れていません。スペックだけでもまだまだたくさん書き連ねられるのですが、この辺で作例に進みましょう。
( Photography : Z II / Text : 4beats )
早速、くるくるとバリアングル液晶を動かしてみました。寝転んだりしてかなり無理な姿勢をとらないと猫と目が合うようなフレーミングはできないわけでして、今更ながらバリアングル液晶の有り難みを再認識した次第です。キットレンズの「smc PENTAX-DA L 18-50mmF4-5.6 DC WR RE」の描写も素晴らしく、猫の毛一本一本をしっかりと浮き立たせています。このレンズ、沈胴させると標準ズームとしては世界最薄の41mmという驚きのサイズに。K-S2との組み合わせは当にミニマム、こんなにもコンパクトなシステムが初めから組まれているなんて、なんだか嬉しくなってしまいます。
しっとりと降る雨の中、水滴を纏う一輪の花。ファインダーを覗きつつ、傘を首と肩で押さえてカメラを濡らさないように、なんて気を遣う必要はありません。ボタンやダイヤルなど、シーリング処理が施された箇所はなんと100にも及ぶそうで、雨や砂塵程度であれば気にすることなく撮影に集中できるのです。
建物の中を光が柔らかく包み込む中、何やら話している二人。ISO感度を1600まで上げつつ、アンダー目に振って床面の反射を利用し、シルエットとして表現してみました。あとからトーンを持ち上げてみると、生地が波打つ様子がしっかりと描写されていることが判ります。こういった悪条件にも拘わらずトーンが残っているのですから、本当に感心するばかり。搭載されたセンサーや画像処理エンジンの優秀さが窺えます。
一転して屋外での眩しいカット。ハイライトの耐性を確認してみましょう。真っ白に振り切ったところから、なだらかなグラデーションで太陽の反射を見事に表現しています。色浮きなどの気になる描写も見受けらない再現力は、ボディばかりでなくレンズ性能をも含めて隙を感じさせません。ハイライトからシャドウに至るまで、これだけ豊かなダイナミックレンジがあれば、露出を大きくコントロールするような表現にも安心してチャレンジできそうです。
有効画素数2012万画素・ローパスフィルターレスの解像力の実力や如何に、ということで奥行きのある景色を絞り込んで撮ってみました。海水が染み込んだ砂と反射する空。浜に打ち付けられて最後の抵抗を見せるかのように泡立つ波。砂浜表面の凹凸も波の粒も、手前から奥に至るまで実に細かくディテールを捉えており、描写力の高さがよく判ります。
さて、先ほどISO感度を1600まで上げたカットがありましたが、今度は夜のスカイツリーをISO 3200で捉えてみました。さすがにアップで見ればザラつきはあるものの、実用範囲と言っていいでしょう。ライトアップされた鉄骨はもちろん、僅かな明暗差を感じる空の部分やうっすらと浮かび上がるツリー足下のビルなど、ノイズの影響を受けやすいところもしっかりと描かれています。実はさらに高感度のISO 6400とISO 12800のカットもあるのですが、ノイズの許容範囲は人それぞれ。確実にオススメできる画を採用したまでで、個人的にはISO 6400でもOKだと思っております。さすがにISO 12800までとなるとノイジーなのですが、とは言え「よくもまぁ、こんなに写るものだ」と感心してしまったことはお伝えしておきます、念のため。
敢えて感度をあまり上げず、3.5段分の効果があるという手ブレ補正を試してみました。このカット、なんと手持ちで1/2秒ですが実によくビシッと止まっています。ワイヤーの一本一本まで確実に捉えることが。。。ですが、正直に申しますと百発百中とはいきませんでした。1/8秒でもブレているものもあれば、このカットのように1/2秒でもバッチリのものもあるといった具合に。もちろんカメラの構え方、シャッターボタンの押し方などの影響もあっての話。でも、これだけしっかり撮れるのであれば十分ですよね。いざというときになんとかなる、シャッターを切る気になれる、それだけでも大きなアドバンテージなのですから。高感度耐性と合わせれば相当厳しい条件でもいけそうです。
このスペック、もはやハイエンド機。
ルックスは兄弟機のK-S1の角張った雰囲気をベースに、上位機種となるK-3のグリップ形状を譲り受けたという印象。軍艦部天面は平らにデザインされており、一見シンプルな趣きの中に、シャッターボタンのあるグリップ部に向かってなだらかな曲線が設けられていたり、ダブル電子ダイヤルやボタン類が不用意に動作しないよう凹凸が付けられていたりと、使い勝手への配慮も抜かりないようです。そして視野率100%の光学ファインダーはもはやペンタックスのAPS-C機では当たり前。さらにモアレ対策に有効なローパスセレクタも、当然と言わんばかりに採用されています。AFの合焦速度や連写性能、77分割測光の露出計、インターバル撮影/合成にも対応等々どこを切り取ってもウィークポイントが見当たりないハイスペックなカメラです。
K-S2の大きな特徴としてはやはりバリアングル液晶が挙げられます。これまでリリースされた機種では背面に固定されたまま上下にすら動かなかった液晶が、いきなりバリアングル機構を採用したのですから、ペンタックスユーザーとしては悦びも一入ではないでしょうか。これでローアングルもハイアングルも自由自在。手持ちでも三脚に据えたときでもフレーミングのし易さがグッと向上しました。そしてもう一つ。ライブビューをONにして液晶画面をレンズ側にクルリと向ければ「自分撮り」ができるのですが、なんとシャッターボタンの移動までしてくれるという配慮がなされているのです。左手でカメラを持って自分に向けると、そのままではシャッターボタンはとても押しにくい状態に。そこで、通常「Wi-Fi」が割り当てられているボタンが液晶の向きに反応してシャッターボタンの機能を持つようになるのです。その際はボタンの縁取りがグリーンに発光してくれるので、状態の把握も実にイージー。こういった細かい気配り、有り難いですよね。
冒頭で「ペンタックスらしさ」てんこ盛りと申しあげた通り、防塵防滴の外装で守られた小さな筐体にこれでもかと言わんばかりに高機能が詰め込まれ、それでいて親しみやすいルックスと細やかに配慮された使い勝手の良さも兼ね備えている、それがPENTAX K-S2なのです。最上位機種に追いつかんばかりの性能を手に入れて、どこに出かけようか考えるだけで眠れなくなりそうにワクワクしてきます。あとはスケジュール調整と家族への配慮を忘れないようにするだけですね。
( 2015.03.07 )
ハイエンド機並みのスペック、コンパクトなボディ。基本のブラックボディ、なかなか精悍です。
ホワイトボディ、なかなかキレイでいいですね。
ワンポイントが効いてますね。
ボディーカラーは全10色。そのうち、ブラック・ホワイト・ブラック×オレンジの基本3色を除くモデルはお取り寄せとなります。またレンズキットやダブルレンズキットも同じカラー展開となります。