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解像力と階調特性が問われる撮影でポテンシャルを問う。(2017.07.20)
ヨドバシカメラ公式オンライン写真マガジン
誇らしい思いではないだろうか。そして「ようやく・・」といった心持ちではないだろうか。OM-D E-M1 Mark IIのプレスリリースを読み、開発に携わった皆さんを思い浮かべた印象でした。「フォーサーズ」の第一弾であるOLYMPUS E-1から数えて約13年、OM-D E-M1 Mark IIはオリンパスのカメラ作りにおいて、1つの到達点を迎えたのではないかと感じます。画質・スピード・バランスと、オリンパスが思い描くデジタルカメラシステムに辿り着いたのではないかと。プロフェッショナルユースに応えるシステムとして従来当たり前とされてきたものを「格段にコンパクト化」しました。そして見事にまとめ上げたのです。「ミラーを取り払う」ことは、コンパクト化に欠かせない大きな要素だと思います。しかし、誤解を恐れずに言うならば、“得られたもの”を支える要素に過ぎません。思えばフィルム一眼レフOMシリーズを見ても同様に、小型化はオリンパスのトレードマークでしたね。
今回の特集は、ミラーレスであるOM-D E-M1 MarkIIを各ジャンルの撮影で、それぞれ2名が一斉にテストを行い、インプレッションを連載でお届けします。また本ページでは、E-M1 Mark IIに辿り着くまでの変遷・歴史をざっと振り返り、現在のオリンパス・マイクロフォーサーズシステムを俯瞰したいと思います。「ミラーレスは自分の撮影を支えてくれるのだろうか」そんな風に興味を持つ皆さんの参考となれば幸いです。(K)
いつもの編集メンバーがそれぞれのレポートを担当しますが、今回は「スタジオワーク」でのレポートにゲストを迎えました。以前フォトヨドバシのムック本でモデルになっていただいたバイク・カスタムショップ社長、クワイケイイチ氏です。生粋のカメラファンかつ写真ファンの方で、ありがたいことにフォトヨドバシの読者でもあります。日頃から完成したバイクを自社所有のスタジオで撮影されていますので、日々お使いのカメラと比較した生の声をお届けいたします。
解像力と階調特性が問われる撮影でポテンシャルを問う。(2017.07.20)
被写体が纏う空気を表現できるか、真価が問われる。(2017.07.27)
雑誌見開きに対するキャパシティ、テザー撮影、WB、プロユースに耐えるか。(2017.07.27)
ミラーレスが苦手としてきたレスポンス&スピード。動きものに対するポテンシャルを探る。(2017.08.02)
刻々と遷ろうシーンを捉えるレスポンス&スピードを測る。(2017.08.02)
マイクロフォーサーズ用「M.ZUIKOレンズ」だけでも、ほぼ必要とされるレンズ群を整備。フォーサーズ用「ZUIKOレンズ」も加えれば、かなりの本数となります。エントリー向けのレンズでも「妙に写る」。それが編集部レビューワー全員の共通認識。オリンパスのカメラシステムを支える大きな要素として、レンズの能力の高さが挙げられると思います。
M.ZUIKO最高峰レンズ群。防塵防滴、妥協なき設計、マウントしておけば間違いのないレンズ達。魚眼から超望遠単焦点までハードな現場でのプロユースに耐えるラインアップ。
「大口径超広角ズーム」
M.ZUIKO DIGITAL
ED 7-14mm F2.8 PRO
コンパクト!
「大口径標準ズーム」
M.ZUIKO DIGITAL
ED 12-40mm F2.8 PRO
テレ端80mm相当が嬉しい
「防振・高倍率ズーム」
M.ZUIKO DIGITAL
ED 12-100mm F4.0 IS PRO
プロ仕様の高倍率!
「大口径望遠ズーム」
M.ZUIKO DIGITAL
ED 40-150mm F2.8 PRO
テレ端300mm相当で、ポートレートのみならず風景などにも
「大口径単焦点標準」
M.ZUIKO DIGITAL
ED 25mm F1.2 PRO
浅い深度で深い表現を
「防振・中口径単焦点望遠」
M.ZUIKO DIGITAL
ED 300mm F4.0 IS PRO
コンパクトな600mm相当を強力な防振で手持ち撮影
「F1.8大口径魚眼」
M.ZUIKO DIGITAL
ED 8mm F1.8 Fisheye PRO
星空撮影にマスト
ボディ側手ブレ補正機構を搭載しているため、どんなレンズもその恩恵が。レンズ側にも搭載されている場合、ボディ側と協調してさらに強力に。
PROシリーズは、それぞれの分野で一般的なレンズから、少しヒネリが利いてるのがポイント。焦点域など痒いところに手が届く、気の利き具合。
プロフェッショナルユースで頼りになるのはもとより、趣味性の高い単焦点レンズ群。ズームだけじゃ味気ないですから。
M.ZUIKO DIGITAL
ED 12mm F2.0
24mm相当F2!
M.ZUIKO DIGITAL
17mm F1.8
34mm相当F1.8!
M.ZUIKO DIGITAL
25mm F1.8
標準あたりも揃えるニクさ。
M.ZUIKO DIGITAL
ED 30mm F3.5 Macro
60mm相当近辺は使いであり。
M.ZUIKO DIGITAL
45mm F1.8
ポートレート/スナップに。
M.ZUIKO DIGITAL
ED 60mm F2.8 Macro
キレ味抜群、テレマクロ。
M.ZUIKO DIGITAL
ED 75mm F1.8
どう使うかは貴方次第の150mm相当F1.8!
マイクロフォーサーズのセンサーサイズだからこそ、コンパクトにまとめられて、他にはちょっとないラインアップ。
ベーシックなレンズ群。とはいえ、どのレンズもびっくりするほどよく写るのがオリンパス。そのほとんどに「ED」とありますよね。迷ったらまずここから。
M.ZUIKO DIGITAL
ED 9-18mm F4.0-5.6
18mm相当からのワイドズーム。
M.ZUIKO DIGITAL
ED 12-50mm F3.5-6.3 EZ
18mm相当からのワイドズーム。
M.ZUIKO DIGITAL
ED 14-42mm F3.5-5.6 EZ
パンケーキで、標準ズーム!
M.ZUIKO DIGITAL
14-42mm F3.5-5.6 II R
収納時は沈胴するコンパクトな標準ズーム。
M.ZUIKO DIGITAL
ED 14-150mm F4.0-5.6 II
高倍率ズームもラインアップ。
M.ZUIKO DIGITAL
ED 40-150mm F4.0-5.6 R
望遠ズームもしっかりラインアップ。
M.ZUIKO DIGITAL
ED 75-300mm F4.8-6.7 II
150-600mm相当ですよ!それでこのサイズ。
ボディ側に手ブレ補正機構があるので、写りとコンパクトさにフォーカス。システムを活かしたラインアップです。どれを選んでも間違いなし。
OM-D E-M1 MarkIIを手にして感じるのは、「フォーサーズ」規格の立ち上げ時に見据えたコンセプトを、まさに体現するモデルだなということです。誤解を恐れず言うならば、そこにミラーの有る無しは関係がないのかなと個人的には感じます。オリンパスというメーカーのこれまでをざっと振り返り、作り上げたカメラシステムについての理解が深まるお手伝いになれば幸いです。
フィルムと違い入射光の角度にシビアなイメージセンサーは、既存のフィルム一眼レフのシステム(つまり、レンズ)を流用するだけでは、画質を担保するのが難しいと言えます。この時代より随分あとの話になりますが、既存のシステムをデジタル化したメーカーは、矢継ぎ早に「デジタル対応」としてレンズの刷新を迫られました。特に周辺部の画質が問題となったわけです。既存のシステムで手っ取り早く解決しようとすれば、基本的にレンズエレメントが肥大化します。乱暴にまとめるとフォーサーズ規格は、「だったらイメージセンサーのサイズを下げて、入射光をできる限り真っ直ぐ導けるマウントシステムとしよう」となったのでしょう。もちろん、センサーサイズは大きいに超したことはないでしょう。厳密には1画素あたりの開口部をどれだけ大きく取れるか、つまり受け取った光を効率よく、しかもできる限り符号化することが大事と言えます。135判フルサイズに比べて約1/4のサイズというのは、まだ関節痛を伴うほどの成長期にあるデバイスの選択において、ずいぶんな英断だったと推察されます。・・・かくして、OLYMPUS E-1が生まれました。
フォーサーズの初代E-1からE-5に至るまで一貫していたのは、デジタル化の過渡期においてジャストなシステムを提供することでした。テレセン性を重んじたマウント規格によるレンズの描写は、たしかに画面周囲まで文句の付けようのない描写。センサーサイズを満たすイメージサークルを考えれば、必要以上に大きなレンズもありました。そもそもマウント規格によるセンサー対レンズのアライメントを考えれば、それ相応に画質は担保されるはずですが、まあなんというかオーバースペックなレンズのような。結果としてオリンパスのフォーサーズ機はインパクトがあるほど小型化しているとは言えませんでした。
時代はCCDからCMOSへと流れていき、各社センサーサイズと画素数で競い合う真っ只中。その中で、オリンパスは孤高に「デジタルで画を作ると言うことはこういうことだ」と言わんばかりにフォーサーズシステムの拡充を図っていきます。同時に、デジタルカメラの設計において各社にノウハウが積み上がっていきます。たとえば電力のマネジメント、たとえばセンサーのようなキーデバイスの御し方。そして市場の大半がCMOSで埋め尽くされる頃、液晶モニタにスルー画(ライブビュー)を“本質的に”実現できる環境が整ってきました。
E-3(2009)が登場した2年後、遂にマイクロフォーサーズ規格が拡張規格として立ち上がります。基本的にはフォーサーズとの違いは、フランジバック長を縮めたものです。つまり、レンズ交換式であり、レンズを通した光でリアルタイムの映像を何らかのデバイスで表示させて、それをファインダーとし、従来の一眼レフからミラーを取り払う、そんな規格です。かくして生まれたのが、マイクロフォーサーズ機「E-P1 (2009)」です。せっかく整備してきたフォーサーズシステムがありながら、また1からレンズラインアップを作り上げていかなければなりません。いやはや、大変です。
その後E-P(X)シリーズは、現在のM.ZUIKO PREMIUMシリーズの趣味性の高い単焦点レンズなどをはじめとして、マイクロフォーサーズシステム全体の整備が行われる中、数代のモデルを重ねて変遷していきます。
そんな中、2012年にOM-D E-M5がリリースされます。センサーは有効で約1600万画素あたり。それまでのセンサーと違い、画素数積み増しだけでなく全てを一新したセンサーでした。「PENの次はOMか・・・」と、半ば外装を換えただけと心配するファンもいたことでしょう。また、素直にそのルックスが琴線に触れたファンもいるでしょう。
2012年あたりでは、未だマイクロフォーサーズも胎動期。様々な可能性を模索しつつといった状況だったのではないかと推察されます。ミラーレスカメラを支える、キーとなるデバイスの制御・スピード・生命線のEVF、システム全体の整備進捗、時代の流れ、マーケットの流れ、これら全てが大きな一本の河の流れに収斂するには、もう少し時を待つ必要がありました。
そして、遂にオリンパスからフォーサーズシステムへの新規製品の投入を終了するというアナウンスが流れます。そしてE-5の後継機としての役割を担う、OM-D E-M1が2013年に登場しました。さらに「PROシリーズ」レンズの整備がアナウンスされます。明らかにオリンパスの中でギヤが変わった、そんな雰囲気でした。時を同じくして、映像(ムービー)の世界でマイクロフォーサーズ規格のセンサーが脚光を浴びたりと、潮目が変わってきた時期でもありました。あくまで私見ですが、フォーサーズ規格が立ち上がった2003年当時のコンセプトに対して、あらゆることがこの頃見事に純度高く収斂した。そう感じるのです。
フィルム時代からミラーの無いカメラは、様々な様式の元に存在します。しかしプロユースの現場は圧倒的に一眼レフで埋め尽くされてきました。それはデジタル時代になっても同じでした。
OM-D E-M1 MarkIIは、画素数の積み増し、ファインダーの見え、スピード、AFと、全面的に手が入りました。結果として、ミラーのないカメラとして弱かった面をクリア。キーデバイスであるイメージセンサーも2000万画素を超えて、解像度という意味でプロフェッショナルの皆さんを安心させる材料に(実際はそれより少ない画素数でも限定的なシチュエーションでなければ問題無かったりするのですが)。
また、PROシリーズレンズなども、マイクロフォーサーズというシステム設計のメリットを活かしたラインアップとなっています。いわゆるポートレートズームと呼ばれる、70-200mmあたりをカバーするレンズも、135換算で80-300mm F2.8と、コンパクトながらテレ端が伸びています。300mmあたりの画角となることで、ポートレートズームもその他の使い道が見えてきます。魚眼でF1.8の大口径や、600mm相当の画角が得られる300mm単焦点も、135フルサイズ用と比較すればびっくりするほどのコンパクトさ。つまり、本当にシステム全体で2003年当時のコンセプトを純度の高い形で体現することになったのです。
OM-D E-M1 Mark IIがあるからこそ、PENシリーズのようにコンパクトであること、手の中で遊ばせる、そう割り切ったカメラも生まれる。
初代OM-D E-M1の頃から、プロのみなさんに何を機材としてチョイスしてるか尋ねると、稼ぎに稼いでるカメラマンがサラッと「OM-Dですよ〜」と答えることが多くなったように思います。2016年のフォトキナの際にお話を伺いましたが、それでも初代のE-M1でかなりの要望事項が出ていたようです。それを事細かに拾い上げ、逐一潰し、OM-D E-M1 Mark IIが生まれたのです。
いまや、いわゆるコンパクトデジタルカメラのセンサーサイズでも驚くような画を結び、1インチに至っては半ば「これで十分でしょう」と感じることもしばしば。そして、マイクロフォーサーズ。すべてがカメラの小型化に最適化されて、キーデバイスのポテンシャルを最大限に引き出す、デジタル時代到来以降に図面が引かれたシステム。ここに、新たなシステムの選択肢として燦然と輝いています。もし、このシステムの魅力に触れたことがないのであれば、もったいない。確実に、撮り手の手助けをしてくれて、あと押しをしてくれる魅力溢れるシステムになっています。