ROLLEIFLEXOLOGY
ROLL 3 : 宮崎青島散歩
普段は関西の内陸部に住んでいるせいか海と空が見たくなり、宮崎県の青島へ足を伸ばしてみました。ビールや模型のではなく、宮崎の青島です。海幸彦、豊玉姫が出会い恋に落ちたロマンチックな所でもあり(古事記)、昭和40年代を中心に新婚旅行のメッカでした。飛行機に乗って旅行すること自体が夢だった頃は日本全国の新婚さんのおよそ3割が宮崎へ来たこともあるそうで、青島や宮崎市内は街中がカップルで賑わっていたのです。私も子供の頃に行った時は、観光バスの窓越しに甘~いパイナップル(スライス)を売ってくれるおばちゃんもいたのが思い出されます。現在はかつてのような賑わいはありませんが、縁起の良さは不変。写真の神様だってきっと降りてきてくれる!ということで青島駅前に車を停めいざスタートです。
( 写真 / 文 : TAK )
青島に上陸!
この悩みのない空の青さと海。これを見ただけでも心が晴れるというものです。古くから島全体が霊域とされてきた青島は、江戸期まで一般の入島が禁じられていました。現在は橋で結ばれているので歩いて渡れますが、この日は歩けなくなるほどの強風。それに合わせて砂も派手に舞っているので、間隙を縫って橋を渡ります。
上陸しました。潮風と砂がたっぷりカメラに当たったと思われますが、撮影後にドライボックスに入れるつもりなので気にしすぎないことにします 笑。鳥居をくぐると左手に社殿が。さすが南国、神社もトロピカルです!
境内、といっても青島全体が境内なのですが、亜熱帯植物の密林が広がり国の特別天然記念物に指定されています。奥の方に見えるのは元宮で、弥生式土器などが見つかっているそうです。古来より大切にされてきた空間、ありがたく参拝しました。
青島といえば「鬼の洗濯岩」。自然の造形美にただただ圧倒されます。海水溜まりにはたくさんの貝やカニたちが。探しているだけでも時間を忘れてしまいますし、貝殻拾いなんて始めちゃったり。笑
貝殻といえば青島の砂のほとんどが細かく砕けた貝殻だと言われていますが、これを「真砂」というそうです。そして青島全体が真砂が堆積してできたものと聞いて、改めて自然のスケールの大きさを思い知りました。スケールの小さい話になりますが、これ以上寄って撮るには「ローライナー」というクローズアップレンズがあります。手を出すべきか逡巡しております。
青島は周囲1.5kmの小島。気軽に歩いて一周できます。最東端あたりには灯台が。ここの風はもはや暴風です。最速の1/500秒でも心許なかったのですが、何とかブレずに撮れました。御利益でしょうか。
ビロウ樹の葉の向きで風の強さがお分かりいただけると思いますが、目にも口にも砂が入ってきて「水持って来ればよかった」と後悔しました。
島を一周した後、本土へ帰ってきました。宮交ボタニックガーデン青島(青島亜熱帯植物園)のハッピーな風景に、風で強張った顔も緩みます。
本土再上陸、鵜戸街道を行く。
植物園の温室へ入ってみると、カメラのレンズもファインダーも真っ白に曇ってしまいました。が、「これは天然ソフトレンズだ!」と目測ピントで撮影。限りあるフィルムなので1カットだけでしたがピントはバッチリ。その場で結果がわからない分、一枚に魂がこもりますね。まあ外していることが分かっても時すでに遅しですから、諦めがつきます。そして時には撮ったことすらも忘れたり。銀塩って高性能ですね。笑
途中、地元の方に青島駅から鵜戸街道があると聞きました。旧街道好きとしては見逃すわけにはいきませんので少し歩いてみましょう。鵜戸街道は日南市の鵜戸神宮まで伸びる街道で、鵜戸神宮の参拝者が歩いて行った道です。この建物は現在は商店となっていますが、前身は「角屋」という宿屋で、そこに滞在した種田山頭火が一句残しています。
“波の音たえずして郷遠し”
道端のあちこちに石仏が見られ、心を和ませてくれます。新婚旅行ブームの頃にこのあたりまで足を運んだ観光客は少なかったかもしれませんが、現在では観光資源として積極的にPRする動きもあるようで、個人的には大歓迎です。
日南線折生迫(おりゅうざこ)駅。青島駅から南へ一駅分歩いたようです。鵜戸街道はまだまだこれからなのですが、青島駅の駐車場が夕方5時で閉まるとのことなので引き返すことにします。実はここで「サル」を見ました。普段あまり見ないタイプの四つ足動物がごくごく自然に歩いているのを見た瞬間は、一体何が起こったのか分かりませんでした。
海側の377号線に渡り北上、青島付近に戻ってきました。かつての繁栄が偲ばれます。
空が赤らみ、風もいくぶん和らいで来ました。駐車場が五時で閉まるとのことで、急ぎ足で再び青島へ渡りラストショットを試みます。そして車に戻りカメラを丹念に拭き、用意しておいたドライボックスへ入れました。数日後に出してカメラをチェックしましたが、幸いダメージは無し。これもご利益かもしれませんが、やはりカメラは風の強い海辺では使わないことをおススメします。ご利益といえば神社によって様々ですが、意外とお参りする瞬間は無心で、その後にスッとした気分になれるという「御利益」もあるのではとも思います。しかしあのサルの姿、いまだに脳裏に焼き付いています。こちらがカメラを構える暇もないまま林の方へと去っていきましたが、その光景は忘れられません。撮れなった瞬間こそ、「脳内センサー」に定着するものなのでしょうか。
アクセス
青島/青島神社:JR日南線 青島駅から徒歩10分。
( 2017.08.08 )