Nikon D750, AF-S Micro NIKKOR 60mm f/2.8G ED, Photo by Serow

御朱印をめぐる旅 Vol.5
東京都港区高輪
萬松山泉岳寺

気楽に旅に出ることが難しい社会状態になって早二年。少しずつ以前の日々を取り戻しているとはいえ、私たちの暮らしはすっかり様変わりしてしまいました。環境に適応していくのが生物の生存戦略であるならば、私たちも社会も変化していくのは自然なこと。そんなわけで今しばらく旅は控えめに、健康維持のためのお散歩です。今回目指したのは泉岳寺。駅名としては何度も耳にしながら、個人的には一度も足を踏み入れたことのないお寺でありました。近場でも日常を抜け出せば、曇りがちな心とレンズをリフレッシュできると思います。(写真・文:Serow)

● 高輪ゲートウェイ駅
東京オリンピックに合わせて開業した高輪ゲートウェイ駅は田町駅と品川駅の間にあり、泉岳寺のすぐそばに位置します。ネーミングについても色々な議論がありましたが、もはや遠い日の出来事という感じがしますね。駅近辺は未だ工事中で、まだまだ開発段階という感じ。今回のお散歩コースは地下鉄を使ったアプローチとしてみました。

 

Nikon D750, AF-S Micro NIKKOR 60mm f/2.8G ED, Photo by Serow

都営三田線三田駅で下車し地上に上がります。暗い場所から出てきたせいか、地上出口にあふれる光が神々しく感じられてシャッターを切りました。自転車とか錆びた看板とか、どうということもないのについつい撮影してしまうものってありませんか? 撮影フォルダを見ていると似たような出口写真ばかりなのですが、これも100枚たまれば、10年撮り続ければ、意味ある写真になるでしょうか。

 

Nikon D750, AF-S Micro NIKKOR 60mm f/2.8G ED, Photo by Serow

朝の時間帯だったので、路地裏の飲食店街は閑散としていました。昔からあるお店は今や数少なくなって、すっかり様変わりしています。とはいえ比較している記憶は10年以上前の風景。単に時が流れたのか、ここ数年の社会の流れか。

 

Nikon D750, AF-S Micro NIKKOR 60mm f/2.8G ED, Photo by Serow

詰襟の学生服もあまり見なくなりましたね。それでも老舗のテーラーはご健在の様子。歴史ある学校があればその周辺は城下町のごとく、人も文化も息づいていくものです。

 

Nikon D750, AF-S Micro NIKKOR 60mm f/2.8G ED, Photo by Serow

 

Nikon D750, AF-S Micro NIKKOR 60mm f/2.8G ED, Photo by Serow

三田から高輪まで歩いてみるとわかりますが、実にお寺の多いエリアです。いかにも古い建物もあれば現代的なビルのようなものもあり、歴史的背景や変遷が気になります。大使館が点在するのも特徴のひとつ。よく見れば「三田」ではなく「御田」という地名もありますね。地名や地形、建物からその土地の歴史を推察するのは楽しいのですが、お散歩ミステリを楽しむコツは「いきなり検索しないこと」だと思います。

 

Nikon D750, AF-S Micro NIKKOR 60mm f/2.8G ED, Photo by Serow

立派な山門が現れました。住宅を間近に佇む泉岳寺、もともとは徳川家康が今川義元の菩提を弔うために創建したもので、家光の時代に現在の地に移されたのだとか。曹洞宗のお寺ですから、重要なのは坐禅です。キーワードは「只管打坐しかんたざ」。ブルース・リー的に言えば、"Don't think, Sit." となるでしょうか。

● 曹洞宗
日本における曹洞宗は鎌倉時代の道元禅師にはじまります。福井県にある大本山・永平寺は修行が厳しいことで有名で、日常生活のすべてが修行。朝起きてから夜眠るまで、あらゆる行為を作法に則って行うのだそうです。そうした修行によって自己を変容していく(あるいはそんなものがないことに気づく)とすれば、お寺はジムあるいはトレーニング施設のようなものと言えるかもしれません。

 

Nikon D750, AF-S Micro NIKKOR 60mm f/2.8G ED, Photo by Serow

境内にはいくつか土産物屋がありますが、メインコンテンツは忠臣蔵。泉岳寺は赤穂藩主浅野家の菩提寺であったことから、四十七士の墓所があることで知られています。かつて大晦日といえば忠臣蔵のテレビドラマという時代もありましたが、元を正せば歌舞伎の演目として人気を博して来たのだとか。主君の無念を晴らすべく、命を賭して討ち入りを果たす。この物語が人の心を掴んだのはなぜなのでしょう。

 

Nikon D750, AF-S Micro NIKKOR 60mm f/2.8G ED, Photo by Serow

 

Nikon D750, AF-S Micro NIKKOR 60mm f/2.8G ED, Photo by Serow

 

 

Nikon D750, AF-S Micro NIKKOR 60mm f/2.8G ED, Photo by Serow

 

 

Nikon D750, AF-S Micro NIKKOR 60mm f/2.8G ED, Photo by Serow

史実として赤穂事件を見ると、現代人の私たちにとっては俄に理解できるものではありません。尋常ならざる結末は当時も然り。300年に亘って人々はそれぞれに感情を抱き、語り継いできたのでしょう。ただ実際に泉岳寺を訪れて立ち並ぶ墓石を前にしてみると、歴史的解釈など消し飛んでしまうことに気づきます。四十七名の人間が命を賭したという事実に心が揺さぶられてしまうのです。令和の今も線香が絶えないということも、この場所に来たから知ることができました。

 

さて御朱印をいただく際に、とても素敵な体験が待っていました。簡単なものでいいから納経をしましょうというのです。御朱印帳を預けたあとで脇のテーブルに行くと、引き出しには下書きのある紙が入っていました。これをを筆ペンでなぞるように、はじめての写経に取り組みます。色即是空 空即是色。御朱印帳はスタンプラリーではないということを肝に銘じた、はじめての体験でした。

 

今回の機材

Nikon D750
AF-S Micro NIKKOR 60mm f/2.8G ED

ミラーレスの Nikon Z が最先端ではありますが、久しぶりに使うと一眼レフもいいものです。プリズムとミラーを通した光学ファインダーの見え方も、ニコンらしく小気味よいシャッターも、気持ちよく撮影に没頭できるものでした。まだまだ現役、なんの不安もなく使えるところも魅力なのです。

( 2022.03.04 )




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気になる方は今のうちに手にしておくとよいかもしれません。一眼レフの世界を席巻したニコンの史上最強モデル、泣く子も黙るD6です。

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物語としての忠臣蔵はあまりにコンテンツがありすぎて選択に迷います。全2巻のこのあたりからいかがでしょう。

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道元禅師に触れたい方はこのあたりから。仏の教えに真面目に取り組むと、固定観念はすっかり打ち壊されてしまいます。

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泉岳寺から浦賀を結ぶ京急本線をはじめ、大師線、逗子線、久里浜線など魅力的なエリアを走る不思議な会社です。

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