FUJIFILM instax mini 90, Photo by Serow

御朱印をめぐる旅 Vol.4
千葉県安房郡鋸南町
乾坤山日本寺

江戸時代の中頃、岩山を彫刻して生まれた巨大な大仏が房総半島にあります。乾坤山けんこんざんというと馴染みがないかもしれませんが、鋸山のこぎりやまといえばご存知の方もおられるでしょう。大仏といえば奈良・鎌倉が歴史的にも有名ですが、日本寺大仏はそれらを凌駕する31mの高さ。坐像、石仏としては日本一の大きさを誇るそのご尊顔を排しに、房総半島へ向かいます。(写真・文:Serow)

● 旅のお伴はインスタントフィルム
ご覧の通り今回の旅に持ち出したのはフジフイルムのチェキ。撮影すればその場で写真ができあがる、インスタントフィルムを使用するカメラです。現代のデジタルカメラに比べれば解像力が高いわけでもないし、ピントもどこに来ているのだかよくわからない。しかし撮るたびに写真ができあがるというシンプルなよろこびと、なんとも言えない温かい描写にニヤニヤしてしまうカメラなのです。レンズの描写? スキャンの精度? どうか野暮なことを言わずにお楽しみください。

 

FUJIFILM instax mini 90, Photo by Serow

東京湾アクアラインと館山自動車道によって、千葉県の房総半島は気軽に足を運べるエリアになりました。サーファーたちの集まる波の強い外房に比べると、東京湾側の内房には穏やかな海が広がっています。神奈川県などの華やかな海岸沿いとは違った「いわゆる漁村」の風景を求めるなら、首都圏では房総の海がいちばん近いかもしれません。

 

FUJIFILM instax mini 90, Photo by Serow

今日の仕事はもう終わったのか、漁港は静かでした。野良猫がウヨウヨしていたのですがチェキで大きく写せるほどは近寄らせてもらえず。まだまだ修行が足りないのでしょう。

 

この地域に根ざす「竹岡式」ラーメンで腹ごしらえ。
食欲をそそる画ではないでしょうが、気がつけばこの町をめざしてしまうという不思議な中毒性を持っています。

漁港で出会った地元の方は「東京じゃ、もっとうまいもんあるだろう」なんて仰るのですが。

FUJIFILM instax mini 90, Photo by Serow

 

駐車場から境内に入ると、あっけなく大仏に出会えました。広い空の下に座していることもあって数値ほどの大きさには感じないのですが、近づけばやはり圧倒される存在感ですね。この大仏が造られた江戸時代にはもっと大きかったようで、200年近い時を風雨にさらされ、昭和41年の修復工事によって一回り小さなサイズになっています。自然の岩を掘って造られた大仏ですから、修復も削るしかないというわけです。

FUJIFILM instax mini 90, Photo by Serow

● 悟りに至る道
日本寺の大仏は「薬師瑠璃光如来」といって、東方世界の教主。(それは一体何だ、という話は置いておいて)左手に薬壺を持っているのが一般的で、病を癒したり苦しみを取り除くといったご利益で信仰を集めています。如来とは「悟りをひらいた存在」、すなわちブッダのことですが、大乗仏教の世界観では悟りをひらいたのはお釈迦様(ゴータマ・シッダールタ)ひとりではなく、別の世界や過去、そして未来にもいらっしゃるわけです。もちろん私たちもその途上にいる、と。

 

FUJIFILM instax mini 90, Photo by Serow

山頂に向けて石段を登ります。日本寺境内には複数のルートがあり、これらの石段をくまなく歩けば2639段というのですから、なかなかのハイキングコースです。参道を歩けば所々に鎮座する、石を彫った菩薩ぼさつ像・羅漢らかん像に出会えます。羅漢(阿羅漢)とは仏教の修行者のなかでも最高位に到達した人びとのこと。薬師如来像と同様、境内にある1500体の羅漢像は18世紀末頃に20年かけて彫りつづけられたものだとか。

 

200年を超える風雪を経た石仏の数々、皆やわらかな雰囲気を備えていました。じっくりと一体一体のお顔を眺めながら、独り山のなかを歩く時間。長い階段をひとつずつあがっていくなかで、脚は疲労を訴えてきます。足にかかるのは、ただ自分自身の重みです。

FUJIFILM instax mini 90, Photo by Serow

● 「仏像」もきっかけのひとつ
仏像というのは明確なシンボルであって、神道が神さまのすがたを形にしないこととは対照的です。せっかくわかりやすいシンボルがあるのですから、美術的関心から仏像巡りをしてみるというのも面白いでしょう。大仏の存在感に圧倒され、アルカイック・スマイルに心動かされる。何を表現したものか興味が湧くと、必然的にその世界観を知るようになります。大乗仏教の発展やギリシア・ペルシア文化との融合、中国・朝鮮半島を経て日本列島に伝来するプロセスや仏師たちの逸話など、テーマには事欠きません。「七年に一度の秘仏御開帳」なんていうイベントが、気になりだしてくるのも遠いことではないかも。

じっとりと汗をかき、いよいよ山頂に辿り着きました。決して高い山ではないのですが、その頂に登れば房総半島と東京湾を見渡せる大パノラマが迎えてくれます。お天気の良い休日だけに、多くの人が汗をかいて登っていました。

小一時間のハイキングといったものではありますが、自らの脚で山を登るというのはいいものです。潮風をうけながら海岸線を走り、山に登って清らかな空気を楽しめる。房総半島は実に贅沢な場所ですね。

FUJIFILM instax mini 90, Photo by Serow

FUJIFILM instax mini 90, Photo by Serow

 

御朱印は大仏の傍でいただくことができました。ところでここまで、日本寺の建物が写っていないことにお気づきでしょうか。およそ1300年前、聖武天皇の時代に開山し七堂十二院百坊という規模を誇った乾坤山ですが、明治時代の神仏分離や1939年の火災などによって、多くのお堂が失われてしまったといいます。寄付や拝観料によって再建が目指されているそうですが、かつての姿を取り戻せるのはいつの日になるのでしょうか。観光がてら、スナップがてら、ぜひ一度この地を訪れていただければと思います。一人ひとりの参拝が、歴史の維持と復活に寄与するのですから。

 

今回の機材

FUJIFILM instax mini 90

インスタントフィルムとカメラを今も作り続けてくれる富士フイルムは頼もしい存在です。ピント位置や露出など、難しい調整はできないカメラですから、ある程度割り切って撮るしかありません。小細工や執着を捨てるにはぴったりのカメラといえるでしょう。

何よりシャッターを切るたびに姿を表わす1枚の写真が、数分をかけて色づいていく様は、デジタルカメラでは得難い世界です。たまには肩肘張らずに、こんなカメラをぶら下げてみても面白いですよ。

( 2016.10.10 )




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デザイン、使い勝手ともに魅力的なモデルです。ブラウンカラーもあります。

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操作性に若干の違いがありますが、ライカバージョンという選択肢もあります。同じフイルムを使えます。

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スタンダードな10枚撮れるフイルムの2個パック。コストパフォーマンスは一番です。

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モノクロームに仕上がるフイルムも。何気ないシーンを1枚撮ってプレゼントしたら、素敵ではないですか?

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時代に沿って日本各地の仏像が紹介されています。写真1ページに解説が1ページというシンプルな構成ながら、実に理解しやすく興味をそそる面白さ。仏像巡りのスタートにぴったりの1冊です。

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乾坤山の「乾坤」とは何でしょう。かつての一般教養も、今では学校で教えられることがありません。四書五経のひとつである「易経」を手に運勢を占ってみれば、そこに東洋哲学の叡智が秘められていることに気づくはずです。

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