LEICA M3, ZEISS Biogon T* 2/35 ZM, FUJIFILM PRO 400H, Photo by Serow

御朱印をめぐる旅 Vol.1
埼玉県秩父市 三峯神社

秩父という地に足を踏み入れれば、この地に昔から山岳信仰が根付いてきたことを肌で感じることができます。豊かで美しい山々はただその姿によって敬虔な気持ちを抱かせてくれますし、その山に登れば清らかな空気が心と身体を洗い流してくれるようです。今回めざすのはそんな山岳信仰を象徴する秩父三社のひとつ、三峯みつみね神社。御由緒をたどれば神話に語られる日本武尊やまとたけるのみことに至るというのですから、この国の信仰の深さというのもなかなかのものだと思います。鞄には替えのカラーネガフィルムと御朱印帳。チリンチリンと鈴を鳴らしながら、巡礼の旅がはじまりました。(写真・文:Serow)

● はじめに
だいたい写真という趣味は、何かのついでに楽しむくらいが丁度いいと思うのです。写真を目的にしてしまうと、天気ひとつに一喜一憂したり、視界を邪魔するものを疎ましく思ったり、その瞬間を楽しむことからいつの間にか離れていきます。ファインダーを覗きながら「このカットに何の意味があるのか」なんて考えだしたら末期症状。驕り濁ってしまった精神を清めようと、この夏から「御朱印帳」を手に神社仏閣への参拝をはじめてみました。やってみるとこれがなかなか楽しい世界だったので、写真趣味の皆さまにご案内しようと、こういう次第なのです。

 

LEICA M3, ZEISS Biogon T* 2/35 ZM, FUJIFILM PRO 400H, Photo by Serow

三峯神社は秩父の山の奥深くに位置していて、高速道路を降りてから2時間はかかる場所にあります。東京方面からなら秩父市街を抜けて西に向かうルート、山梨方面からなら雁坂トンネルを抜けて東に向かうルート。今回は青梅から峠道を抜けて秩父へ向かいました。国道140号線の途上、秩父湖を渡れば三峯神社に向かう道は一本です。公共交通機関を使うなら西武秩父駅から三峯神社へ向かうバスが出ているのですが、折角なら秩父鉄道の終着駅「三峰口」まで行ってからバスに乗りたいですね。

 

LEICA M3, ZEISS Biogon T* 2/35 ZM, FUJIFILM PRO 400H, Photo by Serow

そんなわけで駅に立ち寄ってみました。景色を眺めながらお弁当を食べるも良し、読書をするも良し、電車の旅というのも魅力的です。木造駅舎の駅と自然豊かな周辺環境は、まるで時が止まったかのような雰囲気。時刻表を見て綿密な計画を立て、電車を乗り継いでここに辿り着いたのなら、きっと感動も深いことでしょう。ゆっくりバスの到着を待つというのも豊かな時間の過ごしかただと思います。

● 今日の光景を写すということ
ご覧のとおり駅前には「鉄道むすめ」なる二次元女子が立っていました。昔ながらの風景を撮影したいとすればこういったものを邪魔に感じてしまうものですが、これを面白いと感じれば写真撮影のスタンスも変わります。今の姿を撮影しておくことは私たちにしかできないのですから、素直に構えて色々なものが写り込んでしまうのも、意義あることだと思うのです。10年も20年も経てば、そんな写真こそが「面白い写真」になっているかもしれません。

 

LEICA M3, ZEISS Biogon T* 2/35 ZM, FUJIFILM PRO 400H, Photo by Serow

荒川の流れは秩父の山々より水を集め、長い道のりを経て東京湾に至ります。三峯神社への道も、かつてなら背後に重なる山々を幾つも越えてようやく辿り着ける場所であったはず。修験道の霊山であるこの地を眺めながら、行者の見ていた世界に想いを馳せてみるのも良いでしょう。山の頂に何かがあるわけではなく、真の価値はそこに至る道程を踏むこと。

・・・と、わかっていながらキーを回してエンジンをかけるのです。現代人は脆弱になってしまいました。

 

LEICA M3, ZEISS Biogon T* 2/35 ZM, FUJIFILM PRO 400H, Photo by Serow

三峰とは雲取山を頂点とした、白岩山、妙法が岳の総称です。三峯神社の境内に入ると、やがて右手に妙法が岳を望む遥拝殿への石段があらわれました。神社の位置する場所で標高は1100メートルあり、真夏でも空気は一変してしまいます。神聖な場所ゆえにこの空気が生まれるのか、あるいはこのような場所だからこそ神聖な場所となったのでしょうか。

● カラーネガフイルムという選択
今回の機材選びは単に「久しぶりにカラーネガを使いたくなった」というだけの理由で選びました。フイルムの選択肢もだんだんと少なくなり、この世界を楽しめるのもいよいよ残り僅かといった感があります。デジタルかフイルムかという論争は、今となっては不要でしょう。道楽を楽しめるうちに楽しんでおこう、巻き上げや機械の感触を味わおう。そのくらいの感覚で付き合うのがちょうどいいと思います。実際ダブルストロークのライカM3は、なんとも言えない巻き上げのフィーリングに惚れて手にしたものでした。

 

LEICA M3, ZEISS Biogon T* 2/35 ZM, FUJIFILM PRO 400H, Photo by Serow

遥拝殿は境内で唯一、下界を望める場所。片道1時間半の登山道を歩けば、妙法ヶ岳の山頂には奥宮があるといいます。時間があれば奥宮も参拝できたと思うと、早起きできなかったことが悔やまれました。登山にふさわしい装備を着て、またこの地を訪れなければなりません。

 

LEICA M3, ZEISS Biogon T* 2/35 ZM, FUJIFILM PRO 400H, Photo by Serow

明治時代の神仏分離までは仁王が護っていた随身門。金色の扁額が訪れるものを圧倒します。世界のどこであっても、神に捧げられた空間は人間の美意識の結晶。高い山の上に突如としてこんなものが現れれば、畏敬の念を覚えるのも自然なことだと思うのです。背後からは遥拝殿から流れ込む風がひっきりなしに随身門を通り抜けてゆく。参拝のオープニングには完璧な幕開けです。

 

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祀られているのは日本の国産みの神、伊弉諾尊いざなぎのみこと伊弉册尊いざなみのみこと。日本武尊が建て、役小角えんのおづぬが修行し、空海が十一面観音像を安置、神仏習合の社となっていきます。狼を御眷属とする「お犬様」の信仰もユニークで、この神社の狛犬は狼の姿をしています。この地で何度も修行をしたという大山倍達の碑があるなど、各時代の信仰の跡を重層的に感じることができました。その神社や仏閣にどのようなご由緒があるのか、きちんと調べてみると参拝ひとつも意義深いものになると思います。

● 旅のはじまりは機材選びから
「ライカM3に何で35mmレンズ?」と思った方はするどい。ライカM3のファインダーには50mm/90mm/135mmのフレームしか存在せず、35mmのフレームが出ないのです。その分ファインダー倍率が高いことが魅力で、M3を手にするならレンズは潔く50mm 1本で行くのが王道。今回敢えて35mmを使った訳は・・・単に間違えただけです。Zeiss Planar T* 2/50 ZM を装着していたつもりで、現像があがってきてからレンズを間違えていたことに気がつきました。それでも案外フレーミングに違和感がないのは、元々レンジファインダーのフレームが緩いせいでしょうか。少しトリミングをしているものもありますが、そのあたりはどうかご容赦を。

 

LEICA M3, ZEISS Biogon T* 2/35 ZM, FUJIFILM PRO 400H, Photo by Serow

拝殿前のご神木は「氣」をいただけるというスポット。表面は滑らかになり、永年多くの人びとの祈りを受け止めてきたことが伺えます。「永い時間に渡って人々が信じてきたものや感じてきたことには、何かの意味がある。」そんな風に考えるようになると、幼い頃のように「ただの迷信」だと切り捨てることはできなくなりました。だからこそ、神社や仏閣を巡りたいと思うようになったのかもしれません。

 

LEICA M3, ZEISS Biogon T* 2/35 ZM, FUJIFILM PRO 400H, Photo by Serow

無事、御朱印をいただくことができました。そもそもが「参拝」ですから、スタンプラリー感覚で行うのは不適切・・・とはいえ、御朱印が集まってくるのはやはり嬉しいものです。ひとつひとつが手書きですし、参拝の思い出でもあり、ひとつふたつ集めた段階で既に「自分だけの御朱印帳」という感覚が生まれます。次はどこを参拝しよう、なんていう考えは不敬でしょうか。これもまた、ひとつのきっかけだと思うのです。

● 御朱印集めのはじめかた
まず必要になるのは「御朱印帳」ですが、これは多くの神社仏閣で用意されています。はじめに訪れた場所で、御朱印をいただくのと一緒に御朱印帳を求めるのが簡単でしょう。御朱印は社務所が空いている時間帯にお願いするもので、初穂料は300〜500円程度。大きな神社仏閣では御朱印の受付窓口を用意しているところも多く、ひとつの文化として定着してきた感があります。

 

LEICA M3, ZEISS Biogon T* 2/35 ZM, FUJIFILM PRO 400H, Photo by Serow

参拝を終えて、参道の茶店でお蕎麦をいただきます。真夏にあっても涼しい風の流れる山頂は、わずかな時間を過ごしただけでも清々しい気分になれました。いつも旅の目的といえば温泉か食べ物だったのですが、神社仏閣を目指してみると土地の歴史や信仰に触れることもできて、より文化的な体験ができるという感覚があります。敬虔な気持ちで神仏に手を合わせれば、心もまたスッキリとしているから不思議なものですね。御朱印帳とカメラを持って、まずは地元の氏神さまを訪ねてみるなんていかがでしょうか。

 

三峯神社へのアクセス

※東京から、ざっくり3〜4時間かかります。

車を利用する場合

(1) 関越・花園ICより国道140号線、皆野寄居バイパス経由で約2時間。
(2) 中央・甲府昭和ICより国道140号線、雁坂トンネル経由で約2時間半。

電車・バスを利用する場合

池袋駅から西武鉄道・特急レッドアローで西武秩父駅まで1時間20分。三峯神社行き急行バスで 約1時間30分、または御花畑から秩父鉄道に乗り換え終点の三峰口駅へ行き、そこから西武バスで三峯神社へ。

今回の機材

Leica M3
Carl Zeiss Biogon T* 2/35 ZM
FUJIFILM PRO 400H

今あえてフイルムを使うと、センサーの解像度だとか性能だとかを考えなくてよい健やかさがあります。写りを決めるのはレンズとフイルム。ボディはお好みのものを使い続ければいい。60年経とうとも使い心地が完璧であるライカM3はやはりカメラのマスターピースですね。今なら手頃な値段で見つかりますから、その分オーバーホール代とフイルム代に回しましょう。

( 2016.08.23 )




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ライカM3はさすがに取り扱いがありませんが、レンズは現行品。ツァイスのレンズも、やっぱり良いのです。プラナー50mmを持ち出すのは、次回以降ということで。

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フイルムも高くなりましたね。縮小をつづけながらも、息長く作り続けてくれているフジフイルムはありがたい存在です。月に1本くらい、フイルムで撮ってみませんか?

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多くのフイルムフォーマットに対応するなら、フラットベッドスキャナーが便利。ハイエンドモデルなら一通りのことに対応できます。

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御朱印帳の取り扱いもありましたので、ご参考までに。お好みのカラーを選んでください。大きめサイズのほうが、見栄えが良いと思います。

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