日常の風景を探す旅

Vol.2 - 色で捉える

連載開始から少し時間が経ってしまいましたが、「日常の風景を探す旅」第2弾をお届けします。前回は、いつも見ている風景に絶景を探す、という趣旨で筆者なりの風景写真との向き合い方をお伝えしました。誤解の無いように書いておきますと、旅を否定しているわけではありませんので、その辺りはお間違えなく。
さて、第2弾となる今回からは、少し実践的な内容をお話ししていきたいと考えています。まずは「色で捉える」と題して、色彩で風景を見ることに着目していきましょう。私たち人間の目は、とても幸せなことに「色」を見分けることができます。その色を見て、温もりや寒さ、時には寂しさ・楽しさといったことを感じ、そして心を揺れ動かすのです。写真がモノクロからカラーの時代になり、その感情を作品として残すことができるようになったことは、とても幸せなことですよね。そこで、風景を色彩として捉える意識を持つと、あらゆる光景が見えてくるようになります。もちろん、自然が生み出す色はカラーチャートからは拾えない、絶妙の色合いを見せてくれるものです。赤、青、黄といった単純な分類が不可能なことも、また魅力的なのですね。では、早速見ていきましょう。

( 写真 / 文 : T.Nakanishi )

「緑」

自然風景の中で基準となる色は緑です。スタジオ撮影などではグレーチャートを用いますが、筆者は緑を露出の基準にしています。日中の緑を適正として、そこからどれだけの振り幅のある被写体が混在しているかで露出補正を考えます。緑にも様々な色があり、深い緑から新緑の黄緑まで様々。その変化を探すのもまた楽しいものです。ちなみにこの写真で意識したのは東山魁夷の描く緑。お分りいただけるでしょうか。

「黄」

花畑などで目につくのが黄色でしょう。派手やかでとても印象的です。黄色は見た目には美しいのですが露出は少し厄介。カメラ任せではアンダーになってしまうので、プラス側に補正して撮影すると、その鮮やかさがいきてくるでしょう。

「赤」

風景写真家が最も思い描くのが、朝焼け夕焼けの赤でしょうか。鮮烈に燃え上がるその色合いは、理屈抜きに美しいものです。ところで、夕焼けは天気が回復する兆し、朝焼けは天気が悪くなる前触れなので覚えておくといいでしょう。

「青」

自然の中で青といえば、青空を思い浮かべる方も多いでしょう。もちろん、空の青は基本中の基本ともいえます。今日お勧めしたいのは、日の出前の「青」。デイライトのフイルムで日の出前に撮影すると真っ青になったものですが、現代のデジタルカメラの場合はホワイトバランスを太陽光などに設定して撮影します。人間の目は極めて優秀なオートホワイトバランス機能を持っていますので、このようなシーンでもあまり「青」を意識しません。目から入った情報が脳に伝わった時に、ホワイトバランスを合わせてしまうんですね。でもカメラは正直。日の出前の真っ青な空気感は、とても神秘的で素敵です。

「金」

黄色とも似ていますが、ここではゴールドに輝くシーンをご紹介します。先ほどの青の風景が終わり、太陽が顔を覗かせると、辺り一面がゴールドに輝くことがあります。条件としては、雪が降っていたり、霧が出ていたりと、空気を輝かせる要素がある朝が最適です。太陽に正対し、少し見下ろすように角度を取ると、より鮮烈なシーンに出会えるはずです。

「白」

色の風景に慣れてきたら、白の風景にも出会いたくなります。時期としては、やはり真っ白な雪が降る冬が最適でしょう。ここで注意したいのは、白を引き立てる脇役の存在です。この作品では、空と雪原を隔てる林を脇役にしています。白を意識させるもう一つの要素を加えたいものです。

「黒」

最後は黒で締めくくりましょう。写真は光と影の芸術だ、とも言われますが、風景写真においても影の存在は非常に重要です。自然が作り出した起伏を利用して、黒の中に主役を浮かび上がらせる。スタジオライティングにも負けない、ドキッとするライティングで表現するには、黒をどのように表現するかがポイントになってくると考えています。今のデジタルカメラはシャドウ域の表現力が豊かなので、現像で黒く潰すなどの作業が効果的なこともあります。

繊細な色の変化に敏感になる

あまりに当たり前すぎて無意識に見てしまっていることが多い「色」。しかし、冒頭でも言いましたが、色を認識できる能力は一部の生物に与えられた特権とも言えます。特に、我々日本人は古来より、非常に繊細は色認識をしていたようで、色を表す言葉が非常に多いと言われています。そんな繊細な色彩感覚を持つ日本人として生まれたのですから、やはり繊細な色の風景を探し求めたいものですね。自然は多彩です。ひとときも同じ色合いはなく、次に同じ色に出会えることなんてありえません。だからこそ、これまで以上に敏感に風景を見つめて、カメラに収めていきたいものです。

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( 2017.04.04 )

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